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□ 小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】 □

俺は世界を……【カイルと三つ子の勇者・その34】

 上空を旋回していた鳥達が一斉に俺達を標的に定め、急降下してくる。
 最初に鳥に立ち向かったのはトウマだった。盾を構える俺の前に立ち、袈裟懸けに賭けた苦無の束から3本ほどを取り出した。
「んなくそぉ!!」
トウマが苦無を3本同時に投げつける。
 3本のうち二本は鳥の脇をすり抜け、残り一本が辛うじて先頭にいた鳥の翼に突き刺さる。
 次の瞬間、苦無に巻きつけられていた札が爆発し鳥のゾンビが粉々に砕け散る。
 だが、その爆発をすり抜けて新たな鳥のゾンビがこちらに向かって突っ込んでくる。
 その先にいるのは、さっき攻撃を仕掛けたトウマだった。最初に攻撃を仕掛けたために、鳥達の目に付いたらしい。
「や、やばっ!!」
「トウマ、下がれ!!」
俺はトウマの首根っこを掴んで後ろに放り投げると、盾を構えて身を屈めた。
 一瞬遅れて次々と鳥が俺の盾に突っ込んでくる。鳥とは思えない重い一撃で、時折骨が砕けるような音も聞こえてくる。
 既に死んでいる以上、頭蓋骨が砕けてもお構いなしなのだろう。
 俺の盾に阻まれた鳥達は再び舞い上がると、俺の盾めがけて襲い掛かってきた。
「クソッ!!」
飛んでいる鳥が相手では、剣が主体の俺では分が悪い。
 いくらトウマでも飛行している敵に苦無を当てるのは容易ではないだろう。
 同じ飛び道具でも魔法に近い形状のリク達ならどうにかなるのかもしれないが……俺は鳥の攻撃に耐えながらリク達のほうを横目で見た。
「リクにーちゃ、上から鳥がくるよ!!」
「クウ、ここは俺達で何とかするから、鳥の相手を頼む!!」
「クウ、頼んだぞ!!」
三人は自分の判断で鳥への対処に入っていた。
 洞窟で自分達で考えさせる練習をしたのがここにきて実になってきているのだろう。
 チーコとイレーヌ女史の護衛を兄二人に任せ、末っ子のクウが空を舞う鳥に照準をあわせ弓を番える。
 隙の大きいブーメランではなく、あくまでも牽制のために弓を選べたクウを褒めてやりたかった。初めて会った頃だったら、いの一番にブーメランを投げて鳥に反撃を食らっていただろう。
 この状況では下手に殲滅を狙うより、牽制をかけて他の仲間が目の前の敵に専念する時間を稼ぐのが最善の策なのだ。
 やはり、この子達はちゃんと育ててやればできる子なのだ……俺は親にでもなったような気分で目を細めていた。
 だが、鳥の体当たりの衝撃ですぐに現実に引き戻されてしまった。
「なあ、なんかさっきより敵の数が増えてないか?」
俺の盾の後ろに潜り込んだトウマがおっかなびっくりな様子でそう尋ねる。
 トウマの言うとおり、確実に最初より鳥の数が増えている。クウも頑張って撃ち落しているが、それ以上に鳥のゾンビが現れているのだ。
「くぅぅ、くっそぉ!!」 
クウも敵の数に振り回され始めていた。
 すでに牽制だけで何とかなる数を超え始めているのだ。
 鳥達もクウを標的に定め、彼の頭上に集結しつつある。クウもそれがわかっていて、逆にそれが焦りになっているようだった。
 沢山の敵に注意を払わなければならず、敵に狙いを定めている余裕がなくなっているのだ。
 リクもカイもそれがわかっているが、目の前の敵を追い払うのに手一杯といった様子だ。
 俺達も鳥の群れに取り囲まれ、身動きが取れないでいる。
 このままではクウが鳥の餌食にされてしまう!!
「くっそぉ、生きてる鳥に効く煙玉ならあるんだけど……死んだ鳥って何が効くんだよ……!!」
トウマが余裕を失った様子で自分の鞄に手を突っ込んで中身を探っている。
 俺も鳥の執拗な攻撃を防ぐので手一杯だった。
 ついに一匹の鳥がクウの死角から、首を狙って一直線に急降下を始めた!!
「うわぁあああ!?」
叫び声を上げながら間一髪、クウは身体を捩じらさせてその攻撃を避けた。
 だが、その反動で足がもつれ、クウは尻餅をつくように地面に倒れこんでしまった。
 その瞬間をうかがっていたのだろう、頭上にいた鳥の群れが一斉にクウの周囲を取り囲んだ!!
「クウ!!」
「クウ!!」
「リクにいちゃー、カイにいちゃー、カイルにいちゃん、助けてぇえええええ!!」
クウはパニックに陥ってしまったようで、その場に蹲ってしまった。
 そんなクウを鳥葬でもするかのように、無数の鳥が群がる。俺はクウを助けようと身体を起こした瞬間、盾に強い衝撃が走った。
 見上げると、そこから動くなと言わんばかりに両翼の大きさが人間の背丈の倍ほどもある鳥形の魔物がそこにいた。
 バジリスク……そんなような名前の魔物だったと記憶している。法術兵や弓兵がいれば比較的楽に倒せるが、そうでなければ非常に危険な鳥形の魔物だ。
「くそ、こんな時にこんな厄介な奴と!!」
バジリスクが繰り出した蹴りを俺は再び受け止めた。その衝撃で俺は僅かに後ろに吹っ飛ばされる。
 盾があれば辛うじて防げるが、まともに受ければ鎧を着ている俺だって致命傷になりかねない威力だった。
 とても無視していける相手ではなかった。
 リクとカイも魔物に足止めを食らって助けに行く事ができない。
 既に鳥達はクウの髪の毛や服をついばみ始めていた。
 不意に一匹の鳥が天高く舞い上がったと思うと、クウの頭めがけて一直線に突撃をしかけた。
 鈍く輝く嘴がクウの頭を捉える。地面に蹲ってしまったクウに避ける術は無かった。
「クウ、逃げろ!!」
「うわああああああ!!」
 ダメだ、そう思った瞬間緑色の閃光がその鳥の身体を貫いた。
 一瞬の出来事だった。
 緑の光の矢が鳥のゾンビを貫いたかと思うと、その身を一瞬で焼き尽くしてしまったのだ。
 光の魔法か何かかと思ったが、すぐにそれが熱量を持った光による攻撃だとわかった。
 この攻撃方法は雷の国の射撃兵器によく見られるものなのだが……。
 一体誰が攻撃したのだろうと、俺は空を見上げた。
「ベ、ベガさん!?」
「ご無沙汰しております」
そう、俺の目の前にいたのは雷の国で世話になったベガだったのだ。
 右手には金属製の銃、左手には薄手の盾、そして背中の金属でできた翼のような物からは青い粒子を吐き出していた。
 彼女の存在に気づいた鳥達が一斉に彼女に襲い掛かる。
「カイル様、お取り込み中申し訳ありません。つかぬことをお伺いいたしますが……」
彼女はそう言いながら、自分に襲い掛かってきた鳥に銃口を向ける。
 そして寸分違わぬ狙いで鳥を次々を撃ち貫いていった。彼女の攻撃を受けた鳥達は炎に包まれて地面に墜落していく。
 数秒間の空中戦の後、彼女は大半の鳥のゾンビを殲滅していた。
 同じ空を飛べる相手に鳥達はなす術も無かった。
「レツ・ランページ様はいらっしゃいますでしょうか?」
何事も無かったかのように、彼女はと地上に降り立つ銃を腰のベルトに装着し、そう俺に尋ねた。
「クエエエエエエエエエエエエエエ!!」
地上に降り立ったベガにバジリスクが爪をむき出しにして蹴りを仕掛ける。
「攻撃予測完了。反撃に移ります」
ベガはいとも簡単にその攻撃を盾で受け流すと、盾の裏から剣の柄を取り出し、すれ違いざまに光の刃を発生させ、バジリスクの胴体を切り裂いた。
 生き物が焼けた時特有の嫌な臭いが鼻をつく。一瞬遅れて、バジリスクの体が腰を境にして真っ二つに裂けた。
 バジリスクが身動きが取れないのを確認すると、彼女は柄から出る光を止め、それを盾の裏側にしまった。
 周囲をゾンビに包囲されているというのに、彼女は始めてあったときと変わらず表情を変えず俺の前に立っていた。
 まるで今の状況をなんとも思っていないかのようだ。
「レツの奴は森の中ではぐれた。俺達も探しているところだ」
「そうですか……実は皆様方が出国されたすぐ後に、光の国からレツ様宛の書簡が届きまして……」
そう言って彼女は俺に一通の封筒を手渡した。
 俺は手紙が血で汚れないようにマントで手をぬぐうと、その便箋を受け取った。
 宛名はレツ・ランページ、赤い蝋の教団のエンブレムによって封がされている。正真正銘、教団が自分たちに送った手紙である。
 彼女の言うとおり、我々と入れ違いになって雷の国に届けられてしまったいたのだろう。
「とにかく、ここにレツはいない。代わりに俺が預かっておいてもいいが……」
「いいえ、この手紙をレツ様ご本人にお渡しせよとステラ様より申し付かっております。申し訳ございませんが、レツ様以外の方にお渡しする事はできません」
彼女は少し気落ちした様子で俺から手紙を受け取ると、大切そうに手紙をポケットに仕舞いこんだ。
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