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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】 □

俺は世界を……【カイルと三つ子の勇者・その35】

「一緒に探してやりたいところだが、見ての通り、俺達も手が放せない状況なんだ」
俺がそう答えると、ベガは改めて周囲を二、三度と見回した。
「……生体反応なし、闇の術法による強制使役状態の可能性78.95%。カイル様のおっしゃるとおり、ゾンビと呼ばれる固体で周囲が埋め尽くされています」 
ベガは俺達の置かれている絶望的な状況を的確に説明してくれた。
 彼女が鳥のゾンビを蹴散らしてくれたおかげで多少の余裕が生まれたが、まだ目の前には無数の死者の群れがいるのだ。
「天に光あり、地に正義あり、いでよディヴァインセイバー!!」
「ニャー!!」
普段よりもはるかに短い詠唱。
 だが詠唱が終わった次の瞬間、雨後の筍のごとく地面から突き出した光り輝く剣や槍がゾンビの大群を突き刺していた。
 光の武器に串刺しにされ、ゾンビ達はもがいても身動きが取れない。
「バニッシュ!!」
イレーヌ女史の決めの言葉と共に、光の武器が砕け、アンデッドの大群は一瞬で灰と化していた。
「カイル君、彼女って……」 
「まさか、こうなる事を見越して雇ったのかニャ?」
イレーヌ女史とチーコがそれぞれ違う反応を見せる。 
 ベガは二人に気がつくと、ご無沙汰しておりますといって頭をペコリと下げた。
 リクやカイも蹲ったままのクウを助け起こすと、三人でベガの前に立った。
「さっきは弟を助けてくれてありがと……」
「助けてくれなかったらクウの奴危なかったから……」
「助けてくれて、ありがと」
三人はそう礼を述べると同時に頭を下げた。
「緊急時に人命を保護するのは国際条約第5条3項に規定された努力義務ですのでお構いなく」
「こくさい?」
「じょうやく?」
「だいごじょうさんこー?」
「はい。紛争、天災事変等により危機的状況に陥った生命を目撃した場合、本人の能力の範囲内でそれを救出又は保護するよう努めるものとする。その際の行動は紛争等の介入行動とは看做さないという条文です」
「ききてき?」
「はんいない?」
「かいにゅーこうどう?」
三人の頭に?マークが浮かんだのが即座にわかった。
「要するに、当然のことをしただけなのでお気になさらず、ということだよ」
トウマがわかりやすく噛み砕いて説明すると、彼女もそれに合わせて微笑んで見せた。
 それでやっと言葉の意味を理解した三人の顔に笑顔が戻った。
「やむを得ませんね。できればご助力を得たかったのですが、私はレツ様を探す事にします。それでは」
ベガは一礼して翼を広げると、青い粒子を放ちながら空中に上がった。
 本音を言えば協力を仰ぎたいところだが、彼女には彼女の用事があるし、無関係の彼女を巻き込むわけにも行かない。
 この問題は本来我々だけの力で解決せねばならないことなのだ。
「それではご武う……」
「タイガとレツの居場所の心当たりならあるニャ」
突然口を挟んだのはチーコだった。
 身体に付いた土埃を手で払うと、チーコはヒゲを指で梳きながらベガを見上げた。
 ゴロゴロと喉を鳴らすチーコにベガが訝しげに目を細めた。
「それは本当ですか?」
「月猫はハッタリはかますニャが、ウソはつかないニャ。さっき難民キャンプの中に二人らしき人影を見つけたニャ」
チーコがそう答えると、ベガは難民キャンプの方を向いた。
 彼女の目の瞳孔が開き、その中に光のリングのような物が何重も現れた。それらはそれぞれが不規則な動きで回転をしていた。
 恐らくキャンプの中を調べているのだろうと思う。
「生存者確認……二名。生体データ照合……二名とも勇者かそれに準ずる身体能力を有すると確認。23.21%の確率でレツ・ランページ様とタイガ様であると思われます」
「オイラ達も確認のために二人に接触したいニャが、ゾンビが邪魔で前に進めないニャ」
チーコはそう言って肩を落として両手で頭を抱え、あからさまに困惑した素振りを見せた。
 まさかこの猫、ベガの任務にかこつけて戦いに巻き込む魂胆なのか!?
 チーコを止めようと前にした俺をイレーヌ女史が手で遮る。駄目押しにトウマが後ろから手で口を塞いでくる。
 二人ともチーコの思惑を知って、それでも止めるなと言う事なのだろうか。
「カッツ助けるんじゃねぇのかよ!!カッコつけてられる場合か!!」
トウマが耳元で小さく、そして厳しい口調で俺に囁いた。
「可能性は低いですが、確かめる価値はありそうです」
「とりあえずこれで目的は同じにニャったニャ。ここは手を組んだほうが楽に対処できるニャ」
「共同で作戦を遂行した場合、任務成功確率が79%まで上がると予想されます。合理的な選択と判断し、共闘の提案をお受けいたします」
「ニャら話は早いニャ。まずは目の前の敵を突破するニャ」
「了解しました。私が援護する間に強行突破を敢行してください」
ベガはそう答えると、銃を手に取った。
 彼女は崖下から現れたゾンビに標的を定めると、矢のような速さでゾンビ達の頭上を取った。
 そこからはベガの独壇場だった。銃から放たれる熱線の前にゾンビ達はなす術も泣く射ち抜かれ、燃え上がっていく。
 空中を縦横無尽に舞い、ゾンビ達に光の矢を浴びせ続けるベガ。後から現れた鳥のゾンビが彼女に襲い掛かるが、全てが接近する前に彼女の正確な射撃によって撃墜されていた。
『てめぇっ!!雷の機械を味方につけるなんざひきょ……』
ユダの声を再生していたゾンビが光の粒子に打ち抜かれ、燃え上がる。
 ゾンビが次々現れるものの、現れた端から次々とベガが撃ち殺していくおかげで崖下まで滑り降りても問題なさそうであった。
「勝ち方に拘る奴から負けるのはセオリー中のセオリーニャ。少し位卑怯な方がちょうどいいニャ」
そう言ってニヤリと笑うチーコの後姿を見ながら、ユダよりもチーコの方が悪に見えてしまうのは何故だろうと自問自答していた。
 チーコはピコピコハンマーを大事そうに抱えると、どこからか取り出したソリに乗って崖下に向かって滑り降りていった。
「さあ、今のうちに崖を降りましょう。チーちゃんが作ったチャンスを無駄にしては駄目よ」
イレーヌ女史はそう答えると、チーコに続いて崖を滑り降りていく。
「プライドだけでカッツが助けられたら苦労しないんだ。先に向かってるぜ、カイルのダンナ!!」
トウマはそう言って波乗りをするかのような体勢で体の重心を低くして崖を滑り降りていく。
「やっとししょーを助けられるんだ!!」
「急ごう!!」
「ししょーが待ってる!!」
リク達も崖を駆け下りるように下っていく。
 残されたのは俺一人だった。そうだ、手段なんか構っていられない。
 そのせいでカッツが助けられなかったら……それこそ本末転倒ではないか。
「待ってろよ、絶対助けてやるからな!!」
俺はそう叫んで自分を鼓舞すると、盾をソリ代わりにして崖を滑り降りた。
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