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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】 □

俺は世界を……【カイルと三つ子の勇者・その36】

 俺が崖から滑り降りると、すでにベガがキャンプの入り口に集結したゾンビの掃討に当たっていた。
 ベガの空中からの爆撃にゾンビ達は近づく事すら許されず灰燼と帰していく。
 雷の国で彼女の強さは重々知っていたが、改めてその異常なまでの強さを見せ付けられた。
 これが勇者に頼らず、己の力のみで国を守り続けてきた者達の実力だというのか。
 そう考えると、勇者に頼りきっている自分達が恥ずかしくさえ思えてくる。
「皆さん、今のうちです」
彼女が地上に舞い降り、指差した先には黒こげた死体の山が連なっていた。
 偶然とはいえ彼女と再会できたのはいい意味で大きな誤算だった。少し前まで劣勢だったのが嘘のようだ。
「皆、いくぞ!!」
俺はそう号令をかけると、盾を構えて村の門に向かって突進した。
 門というよりは、城壁代わりの木製のフェンスの切れ目といった方が正しいような質素なものなのだが。
 今となっては下手に強固な城門がなかったのは幸いだった。
 もしそんな城門があって、それを閉じられるような事態になったらその城門の突破のために足止めを食らっていたであろう。
 そういう意味では俺達はついていた。
 死体の身体が何度か俺の足に引っかかったが、俺は構わず突っ込んだ。死体がぶつかるたびに、砂が崩れるように炭化した死体が崩されるのが具足を通じて伝わってくる。
 キャンプの門が目前に迫った時、ベガの爆撃を逃れたゾンビが数体現れた。
「邪魔だっ!!」
俺はそう叫びながら剣を抜くと、それを天高く振り上げた。
 幸いにもイレーヌ女史の魔法がまだ生きていたらしく、剣は邪な物を打ち払う白い光を放ち始めた。
 俺はすれ違いざまにゾンビの身体にその剣を叩き付けた!!
 ジュッという音と共にゾンビの身体が、まるでバターを斬るかのようにアッサリと切り裂かれる。
 それと同時にその切り口から侵食されるかのように灰になっていく。俺は最後まで浄化されるのを待たずして、一気に蹴り倒した。
 地面に倒れたゾンビが煙を上げながら灰になっていく。
 次の敵を……そう思って振り向いた時には既に隣のゾンビの頭に三日月状のブーメランが突き刺さっていた。
「ええーい!!」
幼い掛け声と共にクウがゾンビの肩に跳び乗りブーメランを引き抜く。
 クウの存在に気づき、彼の足を掴もうとゾンビが両腕を上げる。
 だが、それよりも早くクウはゾンビの肩からジャンプするとブーメランを振り上げ、その身体を脳天から真っ二つに切り裂いた。
「でやあああああ!!」
クウの体重に、落下の加速度も加わった一撃はズンという重い音と共にゾンビの頭蓋骨を叩きわった。
 フラフラとバランスを崩し、地面に尻餅をつくゾンビ。
「だああああああああ!!」
続いてカイが別のゾンビに突進を仕掛ける。
 カイはランサーでゾンビの腹部を貫くと、見かけによらない力でゾンビを持ち上げた。
「今だ、兄ちゃん!!」
「任せろ!!」
宙に持ち上げられ身動きの取れないゾンビの前にリクが双剣を手に立つ。
「うらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうらうら!!」
リクは二本のブレードで目にも留まらぬ強烈な乱舞攻撃をゾンビに叩き込んだ。
 カイに持ち上げられたゾンビは抵抗する術もなくリクの連続攻撃を受けるしかなかった。
 まるで鎌鼬の魔法で切り裂かれたようにゾンビの身体には無数の傷跡がついていた。
「これで、終わりだぁ!!」
トドメの一撃と言わんばかりにリクが双剣で×の字の斬撃を繰り出す。
 その衝撃でゾンビの体はランサーから抜け、ズタズタ引き裂かれた身体は地面に放り出された。
「今だ!!」
「早く」
「とどめをー!!」
三兄弟が後列のメンバーに攻撃を促す。
「我が前に立ちふさがりし愚者に光華の裁きを!!フォトンスフィア!!」
三人の要請に応え、イレーヌ女史が呪文を詠唱する。
 すぐに魔法が発動し、光の球体がクウが切り裂いたゾンビを飲み込む。
 光の球体は数秒で光の粉となって空中に散り、残されたゾンビは白い灰へと姿を変貌させていた。
「これで、どうだぁ!!」
続いてトウマが札が大量にまきついた苦無をリクとカイがズタズタにしたゾンビに投げつけた。
 体の損傷が酷く立ち上がることすらできないゾンビに苦無を避ける術はなく、次の瞬間ゾンビ己のみに突き刺さった苦無と共に爆炎に包まれる。
 数秒後、煙が引くと、そこには焼け焦げた死体が転がっていた。
 敵が全て倒され、キャンプの中への道が開ける。突っ込むのなら今しかない!!
「らああああああああああ!!」
声を張り上げながら門を潜る。
 少し遅れてトウマとリク、カイ、クウがキャンプの中に飛び込む。
 俺は盾を地面につきたてて180度後方に方向転換をすると、遅れてやってくるイレーヌ女史とチーコを迎えた。
 チーコとイレーヌ女史も無事に村の門を潜る。俺達の頭上ではベガが残ったゾンビの掃討に当たっていた。
「周囲100mにゾンビらしき動体なし。目標を全て駆逐しました」
ベガはそう報告すると地上に降り立った。
 だが、無表情ながらその顔には心なしか険しく感じられた。
「ですが、周囲に増援らしき動体多数。このまま我々がキャンプに突入した場合、増援がキャンプ内になだれ込み挟撃される恐れがあります」
「それは本当なのか!?」
「はい、何らかの対処を行わない場合92.82%の確率で予測が的中すると思われます」
俺は彼女が言わんとしている事が何となく理解できた。
 つまりはここで誰かがゾンビの足止めをしなければならないという事なのだ。
「ゾンビゾンビゾンビゾンビ……馬鹿の一つ覚えで何かムカついてきたニャ。さらわれた勇者の追跡を優先して派手な魔法は我慢しててやったニャが、ここらでユダとかいうクソガキに格の違いを思い知らせてやるニャ」
物騒な事を言いながらチーコがヨチヨチと前に出る。
 アクビをしながら前に出る様子からは緊迫感も何も感じないが、何かをやってくれそうな予感は感じられた。
 言葉では上手く言い表せないが、チリチリしたようなオーラがチーコから出てきているような気がするのだ。
「ここでゾンビ用の魔法を派手にブチかますニャ。イレーヌ、手伝うニャ」
「え、私?」
「オイラが魔法の準備をする間、結界でゾンビどもを足止めするニャ」
「それだったら私でなくても……」
「半径30km以上に作用するダイニャミックな魔法をかけるニャ。準備のダンスもそれなりにかかるニャ。その間確実に敵を防げるのはイレーヌかベガしかいニャいニャ」
今猫が遠まわしに俺達のことを馬鹿にした気もするが、あえて黙っている事にした。
 イレーヌ女史の魔法ならゾンビを足止めするのは容易い事だろう。だが、そうなると一つ問題があった。
「しかし、二人がいなければ死霊の対処が……」
「問題ないニャ。オイラが魔法を発動させるまではベガと一緒にいれば問題ないニャ」
「それはどういう……」
「知りたいのニャら、ベガとユダをぶつけてみるニャ。そうすれば嫌でもわかるニャ」
俺の不安を他所に、チーコはベガを見ながら不適に微笑んで見せた。
 ベガとユダをぶつければ嫌でもわかる……それは一体どういう意味なのだろうか?今の俺にはそれを理解する術はなかった。
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