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□ 小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】 □

俺は世界を……【カイルと三つ子の勇者・その37】

「漆黒の夜天を隔てし光のカーテンよ、今こそ我と邪なる者の間に降り立ち、その悪しき手から我らを守る加護の光となれ、オーロラ・カーテン!!」
イレーヌ女史が杖を構えて呪文を唱える。
 すると杖の先端から文字通りオーロラのような光の布が現れ、イレーヌ女史とチーコ、そしてキャンプの入り口を包み込んだ。
 傍らではリクが恐る恐る光のカーテンをつついていたが、まるで何もないかのように突き抜けてしまっていた。
 どうやら俺が想像していた結界とは異なるらしい。
「これは闇の術で動く存在にのみ発動する結界の術よ。アンデッドがこのカーテンに触れればたちまち灰になるわ」
「す、凄い術ですね……」
「確かに強力な術なのだけど、術者を中心にしか結界を展開できないのと、結界を発動させている間術者は移動できないっていう弱点つきなのよ……」
「それじゃあ……」
「チーちゃんを守らなきゃいけないから、残念だけど私はここから動けないの。カイル君はベガと一緒にキャンプの中にいる生存者の確認をお願い」
確かにイレーヌ女史に任せておけばチーコの防衛は一点の隙もないのは明らかだろう。
 下手に我々が残っていても逆に彼女の手を煩わせる事になりかねない。
 ここは素直にベガやリク達を連れてキャンプの内部に移動するのが得策なのだろう。
「ニャーニャニャーニャ、ミャーミャーナーオ♪フーフーミャーミャーゴロゴロナー♪」
チーコは結界が展開されたのを確認すると、光のカーテンの内側で魔法のためのダンスを始めた。
 一体どんな魔法が発動されるのか興味がないわけではないが、俺達がここにいても何もすることはない。
 一刻も早くレツ達と合流し、カッツを救出するのが我々の使命なのだ。
「キャンプに入ってからカッツが動いた形跡は今のところないな。どうやら、本当にここが奴らの根城みたいだな」
そう言ってトウマはカッツの位置を示すレンズを差し出した。
 彼の言うとおりレンズの光の点は一点を指し示したまま微動だにしなかった。
 我々を待ち受けるつもりなのだろうか。下手に逃亡を企てられるよりその方がマシなのだが。
「キャンプ内にも相当数のアンデッド達がいるはずよ。ユダが襲撃してくる恐れもあるし、ベガの傍を離れないようにね」
「わかった。イレーヌさんもお気をつけて」
イレーヌさんに見送られ、ベガの先導の下、俺はトウマとリク、カイ、クウの三人を引き連れて廃墟と化したキャンプの奥地へ足を踏み入れた。
 ゾンビの処理に関してはチーコとイレーヌ女史に委ねるしかない。
 我々は術が発動する前にレツ達と合流し、カッツを救出せねばならない。
 チーコがゾンビを無力化できた場合、ユダが逃亡の際にカッツを人質兼護衛役として連れ去る恐れが多分に考えられるのだ。
 つまりユダが自分の術に過信して移動しない間に、カッツを救出、最悪でもカッツと遭遇しなければならないのだ。
「難民キャンプの航空写真の受信を完了しました。難民キャンプには出入り口が三つ存在します。北に一つ、それと南西と南南東に一つずつあります。我々は南西のゲートより侵入しました」
「例の二人組はどこにいる!?」
「キャンプの中央部より南南東のゲートに向かって移動をしているのを確認しています」
ベガはそう答えると、廃墟とかしたキャンプの一方向を指し示した。
 キャンプの中は薄いガスのようなもので覆われていて、少し先の建物でさえ目視で確認するのが困難だった。
 彼女がいなければ、我々は自分が今どこにいるかすら把握できなかったに違いないだろう。
「ベガ、二人に先回りできるか?」
「目標は敵を避けるために最短ルートを大きく迂回しながら移動しています。我々が最短ルートを通った場合、キャンプ離脱前に目標に接触することが可能です」
「すまない、案内を頼む」
「了解しました。最短コースを移動した場合、相当数の敵との交戦が予想されますが、よろしいですか?」
「かまわないさ、蹴散らすだけだ!!」
「了解しました。これより戦闘モードへと移行します」
彼女はそう答えると、銃を構えて背中の鋼の翼を広げる。
 青い粒子が周囲に舞い、彼女は重さを忘れたかのようにふんわりと羽毛のように天に舞い上がった。
「皆、準備はいいか?」
「おう!!」
「うん!!」
「ごうりゅうするぞー!!」
リク、カイ、クウが勇ましく武器を構えた。
「またゾンビ軍団の相手かよ……。まぁ、ベガがいるからいっか……」
半ば諦めた様子でトウマは札を巻きつけた苦無を握り締めた。
 俺も一回大きく深呼吸して覚悟を決めると、水筒の聖水を己の剣に振りかけた。
「皆、行くぞ!!」
俺の掛け声にリク達がおお!!と答える。
 その掛け声と共に、俺達はキャンプを被う霧の中に突撃を仕掛けた。
 霧の中には相当数のゾンビがいた。俺達に気づいたゾンビ達は一斉に俺達に群がってくる。
「くそ、予想はしていたがかなりの数だ!!」
「私が航空支援を行います。皆さんはその間にこの場所の突破を行ってください」
ベガの声と共に上空から光の熱線がゾンビを次々と打ち貫いていく。
 俺は目前に迫っていたゾンビを切り倒すと、我武者羅に前に突っ込んでいった。
 背後からは3兄弟のと思われる光の矢やトウマの苦無が俺の突撃を援護してくれている。
「リク、カイ、クウ、トウマ!!俺からはぐれるなよ!!」
「おう!!」
「ぜったいに」
「離れるもんかー!!」
「俺の場合はぐれたら死ねるから、絶対に離れねーぞぉ!!」
後ろからは4人の無事な声が聞こえてくる。
 ベガの強烈な援護の空爆が続く中、俺は目の前に突っ立っていたゾンビを切り倒した。
 それから20分近くキャンプの中を突っ走りながら剣を振り回していたと思う。
 蝶のように舞い蜂のように敵を駆逐していたベガが急に動きを止め、空中で静止したまま一点を見つめ始めた。
 残った敵を始末した俺達はベガの不思議な挙動に、疑問を抱きならも彼女と同じ方向を見上げるしかなかった。
「ベガ、どうしたんだ?」
「目標の予想進路に先回りすることに成功しました」
「それじゃあ、二人と合流できるんだな?」
「はい。ですが……」
「どうしたんだ?」
「近距離から生体データを照合した結果、レツ様とは異なる生体パターンのようです」
「え?」
次の瞬間、バキィという木の砕ける音と共に俺達の真横にあった掘っ立て小屋の壁が勢い良く吹っ飛ぶ。
 土煙と木片と共に転がってきたのは、俺が良く知っているあの二人組ではなかった。
 一人は俺以上の背丈、恐らくは180cm近くあるだろう。褐色の肌で、髪の毛は逆立ち、かなりガッシリした体格の少年だった。
 もう一人は彼と比べると二回り近く小さく、トウマとそう大差ない程度の背丈だが、まるで器械体操の選手のようなしっかりした体つきの黒髪の少年だった。
 どちらも全身に引っかき傷や打撲の後があり、ボロのような服がさらにズタズタに引き裂かれていた。
 唯一無事なのは二人の少年が腰にぶら下げた道具袋らしき皮製の袋ぐらいであった。
「ゴウタ、大丈夫か?」
「だ、大丈夫だ……」
小柄な少年に支えられて、ゴウタと呼ばれた大柄な少年が立ち上がる。
 そのわき腹は何かが刺さったのか、その部分だけ、彼の衣服が真っ赤に染まっているのが見えた。
「怪我してるじゃないか。彼、大丈夫なのか?」
「え……ゾンビじゃない……?アンタ、生きてるのか?」
信じられないといった表情で、小柄な少年は俺達の顔を見た。
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