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□ 小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】 □

俺は世界を……【カイルと三つ子の勇者・その38】

「お前達、ここのキャンプの生存者なのか?」
俺がそう尋ねると、二人の少年は互いに顔を見合わせて、俺のほうを向くとゆっくりと一回頷いた。
「俺達はここのキャンプに住んでたんだけど……いきなり変な銀髪の奴がやってきて、次々とキャンプの皆を殺していって……殺されたはずの人たちが突然起き上がって……」
黒髪の少年がおぼつかない様子で事情を説明する。
 本人もわけがわかっていない状況なのだろう、混乱していても無理はない。
「銀髪の奴が現れたとき、俺達は奴に気づかれる前に地下の貯蔵庫に逃げ込めて無事だったんだけど……。その後キャンプから逃げ出す途中にみつかっちまって……」
少年は震えながら事の一部始終を伝えてくれた。
「キャンプ中の人たちが俺達に襲い掛かってくるし、ゴウタは途中で怪我するし……マジ、ダメかと思った……」
少年の声はいつの間にか涙声になっていた。
「俺達は教団から派遣されてきた者だ。君達の身柄は我々が保証する」
「ほ、本当に!?」
「ああ、とりあえず君の友達の傷の応急処置を済ませたら……」
俺の言葉を遮るようにまた何かが少年達が突き破ったのとは別の家の壁を突き破って飛び込んできた。
 黒髪の少年の顔が一気に強張る。その反応だけで、その正体は大体察しが着いた。
「どうやら、君たちを追ってきたらしいな」
俺は少年達を後ろに下がらせると、剣を構えた。
 数は20……いや、30はいる。これだけの数に追い回されれば、戦う術をもたない少年達では逃げる他ないだろう。
 全身が傷だらけだったのはこいつらに追われていたからなのだろう。
「ここは俺達がやっつかるから」
「きみたちは」
「安心していーよ!!」
勇者らしいセリフをいいながら、リク達も武器を構える。
「トウマ、お前は後列に下がって要保護者の護衛を」
「了解、最後尾で二人を守りながら戦いの行く末を見守るであります!!」
何故か軍隊顔負けの敬礼をすると、トウマは二人の少年の前に立った。
 このメンツならトウマのところまで敵が行くことはないだろう。我々はともかく、『彼女』がいれば。
「攻撃目標確認。数33、全てゾンビタイプ。交渉による戦闘回避は困難と判断、殲滅行動に入ります」
その『彼女』は翼を開いて宙に舞うと、先陣を切って敵の頭上を取る。
 そこから銃による容赦のない攻撃を開始する。
 仲間が次々と打ち抜かれ炎上していく中、それでもゾンビ達は俺達に向かって襲い掛かってくる。
 炎上したゾンビから火が燃え移り、火達磨になりながら突っ込んでくるものもいる。
 少し前まではちゃんとした人格も、生きてきた人生もあった人を切るのは忍びないが、こちらも守らねばならない命と人生がある。
 容赦をかけるわけにはいかなかった。
「カイル様、そちらに損傷度2のゾンビが3体行きます。迎撃を要請します」
「任せろ!!らあああああああ!!」
ベガに追い立てられて突っ込んでくるゾンビを俺は手当たり次第に切り倒した。
 イレーヌ女史の魔法の聖水のおかげで、俺の剣にかかったゾンビ達は次から次と灰になっていく。
「うおおおおおお!!」
「いっけええええ!!」
「当たれええええ!!」
リク達も互いに死角を補いながらゾンビ達をなぎ倒していた。
 この様子なら俺のサポートは不要だろう。俺は目の前の敵に集中した。
 数分も経たずして、ゾンビの一団は一体残らず灰と肉塊の山へと姿を変えていた。
「すげえ……」
戦いの様子を見ていた黒髪の少年がポカンと口を開けてそう呟いた。
 敵が周囲にいないことを確認すると、俺は剣を鞘に収めた。負傷した少年の手当てをするためだ。
 戦場に赴く者である以上、この手の応急処置には手馴れている。だから、この手の処置にはちょっとした自信があった。
「トウマ、ガーゼと包帯はあるか?」
「あんま量はないけど……ここに……あった!!」
トウマはズボンのポケットに手を突っ込むと、ガーゼ数枚と包帯の入った紙袋を取り出した。
 俺はそれを受け取ると、負傷したゴウタという少年の元に向かった。
 ゴウタという少年は黒髪の少年に支えられて経っているのがやっとという状態で、その傍らで肩を貸している黒髪の少年が不安げな表情で彼の顔を覗き込んでいた。
「お、俺は大丈夫だから……コイツの手当てをしてやってくれ」
そういって自分を支えてくれている少年を指差してはいるが、今まで相当無理をしてきたのだろう。
 ゴウタの額には脂汗が滲み、負傷からくる熱もあるようだった。
 俺はゴウタという少年の治療を優先させ、手近にあった切り株に彼を腰掛けさせた。
「ちょっと傷を見せてもらうからな」
俺は一言断りを入れると、ゴウタの赤く染まったシャツを捲り上げた。
 鍛えこまれ、がっしりと引き締まった身体。そのわき腹に5cmほどの切り傷があった。
 どうやら出血の原因はこの怪我らしい。
 傷口を塞ぎたいところだが、傷口に傷をつけた原因の物が残っている場合が少なくない。
 異物を残したまま傷を塞げば化膿の原因にもなる。本来なら麻酔をかけるか、なければ患者を押さえつけて傷口を抉らなければいけないのだが。
 だが、幸いにも今回はその必要はなさそうだった。
「ベガ、何か……傷に異物が残っているか見る機能とかはあるか?」
「スキャニングを行えば、裂傷部に異物が残っているか確認する事が可能です。スキャニングを行いますか?」
「ああ、頼む」
俺が頼むと、彼女の瞳孔が開き、じっとゴウタの傷を見つめた。
 予想通り、ベガには『そういう機能』が搭載されていた。
 ゆっくりと傷口を見回すベガ。そんな動作を十数秒間続けた後、彼女の瞳孔がゆっくりと収束した。
 どうやらスキャニングが終了したらしい。
「スキャンを完了しました。異物は感知されませんでした」
ベガは傷口に付近に手を当てながらさらに説明を続ける。
「この裂傷は刃物のような物で斬られたためにできたと思われます。深い傷ですが動脈に達してはいません。出血と発熱は止血を行わないまま激しい運動を行ったためと思われます」
「それじゃあ、傷を水で洗い流して、治癒の魔法をかけた後にガーゼと包帯で傷口を保護すれば大丈夫だな」
「私もその意見に賛成します」
ベガのお墨付きも貰ったところで、俺はとりあえず確認のためにトウマの方を見た。
 もし、水筒を持っていてくれたら……という都合のいい期待を抱いたためだったが、トウマは自分は持っていないよと両手を見せて首を振った。
 流石のトウマもそうそう都合よく持っていないようで、俺は水筒の水を取り出した。
 周囲に井戸らしき穴もないし、死体だらけで衛生状況が劣悪な状況下で汲み置きの水を使うなんて持っての他だ。
 イレーヌ女史に浄化してもらった貴重な水だが、傷を洗えるような清潔な水がこれしかない以上仕方がなかった。
 それに聖水を傷口にかければ、後々に治癒の魔法を使用した時に効果が増大できる。
 俺は水筒の蓋を開けると、ゴウタのわき腹の傷の汚れを流すように水をかけた。
「……くっ!!」
傷口がしみるのだろう、ゴウタは苦痛に顔をゆがめ、身体を捩らせる。
「ちょっと沁みるけど、我慢しろよ!!」
俺はゴウタの身体を押さえながらもう一度水をかけた。
 固まった血と埃でできた赤黒い層が洗い流され、サーモンピンクのような傷口が露になる。
 俺は傷口を確認すると、大きく息を吸い込んで傷口に手を翳した。
 治癒の呪文は何も見なくても詠唱できるほどに何度も練習した。
 しかし、実戦で使うのは初めてなのだ。イレーヌ女史のように平時から頻繁に使っているわけではない。
 もし失敗したら……その不安が、喉から俺の言葉が出るのを遮った。
 俺が不安に押しつぶされそうになっていると、リク達の頭がひょっこりと俺の隣に現れた。
 俺が何をするのか気になって見に来たようだ。
 これは情けないところを見せられないな……俺は腹を括って自分の掌に意識を集中させた。
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