FC2ブログ

鎌使いの文章倉庫

□ スポンサー広告 □

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


* 「スポンサー広告」目次へ戻る
*    *    *

Information

□ 小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】 □

俺は世界を……【カイルと三つ子の勇者・その40】

「……イスケ、泣真似なんかできたのか」
「うっせ。恥ずかしいんだからそこには触れるな」
笑顔で手を振りながら、イスケはゴウタに悪態を垂れた。
 騎士達の姿は小さくなり、さっきの会話は聞こえていないだろう。
 あちらからはいつまでも手を振っている少年達としか見えていないに違いない。
「いや、俺、そういう演技とかできないから……ごめん」
「勇者連れの騎士なんかと遭遇しちまったんだ、ああゆう時は生き残った住民のフリしてやりすごすのが一番なんだよ」
「そっか……いつもすごいな、イスケは」
「そういうお前だって、黙っててくれればOKだと思ってたけど、随分と痛がって見せてたじゃんか。お前のだってなかなかの名演技だったぜ?」
「……」
「まさか、実は何気にヤバかったとか?」
イスケの問いかけに、逆立った髪の毛が縦に揺れた。
 ゴウタの答えにイスケは深い溜息をつき、ガックリと肩を落とした。
「……ごめん……なさい」
「お前が謝ってどうする。お前の状態を見抜けなかった俺が悪いんだから」
「……ごめん」
ゴウタはそう言って再び謝罪の言葉を述べて頭を垂れた。
 黙って相手を睨みつければ大抵の奴がビビって逃げ出すか、理由もなく土下座して許しを請うような風貌をしているというのに……。
 実際には口を開けば謝罪の言葉のオンパレードな奴なのである。
 いうなれば外見は大きくてごついが、内心は気弱なドーベルマンかシェパード犬のようなものだ。
 まあ、それだけでというわけではないのだが。
「俺達、組んで長いんだからさ、そういうことは気軽に言ってくれていいんだぜ?」
「……わかった、今度からそうする」
「……闘ってる時のテンションの1000分の1でいいから、積極的にいこうな?」
「……ごめん、闘ってる時のこと、あまり覚えてない」
ゴウタの4回目の『ごめん』を聞いて、イスケは再び溜息をついた。
 今更ゴウタのこの性格が劇的に変わるとも思えないのはわかっているが、それでも何とかしたいという思うのが人情だろう。
 そんなイスケの心の内に気が付くはずもなく、ゴウタは完全にしょげ返っていた。
 とはいえ、これ以上気にかけてもゴウタの謝る回数を増やすだけなので、イスケは頭の中を切り替えた。
「……さてと、これからどうするか」
顎に手を当てて考え始めたイスケに。
 彼の周囲の空気が変わった事を感じ取ったゴウタが彼を見上げる。
「どうするって……ユダを連れ帰るんじゃないのか?」
「そうもいかなくなってきたってことだ。さっきの連中を思い出してみろ」
「勇者に……騎士に……それに……」
「騎士と勇者がいたってことは教団も本気になったってことだろ?正規の部隊がやってくんのも時間の問題だろう。そうなったら、俺達までヤバくなる」
「ユダは見捨てるのか?」
ゴウタの問いかけに、イスケの顔が険しくなる。
「悔しいが、近づくだけで攻撃してくる位にイカれちまってる上に、力づくで連れ出そうにも俺達じゃ手に負えないんだから諦めるしかねーだろ。直接攻撃が通用しないんじゃ、相性が悪すぎる」
「……ごめん」
「いや、お前が役に立たないって意味じゃなくて……。お前はよくやってくれたって。難民キャンプに潜入するために装備品全部おいてきた俺の判断ミスだ」
落ち込むゴウタをイスケが慌ててフォローする。
「ま、転んでもタダじゃ起きないのが俺達だけどな」
「え?」
「勇者はユダだけじゃないだろ?」
「あ……うん」
イスケの言葉にゴウタは小さく頷いて見せた。
「ユダはダメでも、立ち回り方によっちゃ……それ以上の収穫があるかもな」
「それじゃあ……」
「さっきの騎士の連中を追うぞ。見失ったら、それこそ何のためにここに来たのかわかんねーからな」
「それに、傷の手当てのお礼もしないと……」
「……教団のクソ連中に義理なんか感じる必要ねーよ」
「でも、傷の手当てを……」
「お前……妙なところで律儀だよな……」
表向きは平静を装っていたが、珍しく自分の意見に異を唱えるゴウタにイスケは少なからず驚きを覚えていた。
 ゴウタは基本的に自分の意見には無条件で従うし、自分が下した指示に疑問すら感じることすらなかった。
 それに……教団への敵対心は自分以上に強いはずなのに。
 あの騎士にそんなゴウタを揺り動かすほどの何かがあるとは到底思えないが、それを確かめる意味でも追う価値があるのかもしれない。
「連中の後を追うぞ。雷の機動兵器もいる、見つかっちまわない様に慎重にな」
「……追いついたら?」
「しばらくは様子見だ。連中がやばくなってたら、手を貸す。あくまでも『キャンプの生き残りとして』だけどな」
「つまり……コレは使うなって……事?」
そう尋ねると、イスケの様子を伺うかのように、ゴウタは恐る恐る腰にぶら下げた皮の袋に手を触れた。
「よくわかったな、いい子だ。あくまでも、慎ましやかに行動だ」
ゴウタの頭を鷲づかみにし、ワシャワシャと撫ぜながら、意味ありげにニヤリと笑った。
スポンサーサイト


* 「小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】」目次へ戻る
*    *    *

Information


+
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。