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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】 □

俺は世界を……【カイルと三つ子の勇者・その42】

「やめろ!!カッツは本気なんだぞ!!今様子を見つつ……」
「ししょーはオレ達を狙ってくる。オレ達以外に誰が戦えるの?」
リクの問いかけに、俺は十分の答えを持ち合わせていなかった。
 俺は勇者じゃない。魔法のエキスパートの月猫でもないし、知識が豊富なエルフでもない。雷の国の機動兵器でもない。
 何かあったら盾を構える事しかできない、無力な人間だ。
 イレーヌ女史なら機転の利いた作戦を立てられたかもしれない、猫なら反則気味の魔法で何とかできたのかもしれない。ベガなら雷の国の兵器で戦えたかもしれない。
 だけど、俺は……。
「わかってる、カイルにーちゃんの勇者はカッツなんだ。僕達じゃない」
「だから、ボク達がししょーを助けるために戦う」
「死んでも絶対助けるからね!!」
そう言うと、リク達はニッコリと笑った。
 わかっているのか?お前達が戦うのは自分達の師匠だぞ?あのとんでもなく強いカッツが本気で来るんだぞ?
 お前達が本気になったって勝てるかどうか……それどころか殺される可能性だって……。
「うわあああああああ!!」
「うおおおおおおおお!!」
「はああああああああ!!」
3人が鬼気迫る掛け声と共に、己の身体の周辺に白い光を巻き起こす。
 この現象は何度か見たことがある。カッツやタイガが武器の力を引き出した時に起きる発光現象だ。
 3人の武器からあふれ出す光は見る見る間に輝きを増し、対峙するカッツに匹敵するほどの出力に達していた。
「「「おああああああああああああ!!」」」
リク達が獣のような叫び声を上げると、カッツのときと同じように3人の上着とシャツが武器の出力に耐え切れなくなって上着とシャツが吹き飛んだ。
 三人の光がカッツの放つ冷気を押し戻し、俺の身体を容赦なく貫いていた寒風が止む。
 リク達は武器の光を維持しながら、カッツと対峙したまま一歩も動こうとはしなかった。
 カッツも武器を構え、肩で息をしながら動こうとしなかった。
 このまましばらく睨み合いが続くのか……そう思ったその時、カッツとリク達の姿が同時に消えた。
 ガツン!!
 金属同士がぶつかったにしては恐ろしく重たい音が空気を震わせる。
 一瞬間を置いて、二発、三発と重たい衝撃が太鼓を打ち鳴らすように荒々しく響いた。
 恐らくリク達が戦っている。それはわかっているのだが、目が全く付いていかなかった。
 音がしてその方を向いても何もいない、それの繰り返しだった。
 初めて目が追いついたのは、俺の目の前の地面が突然激しくえぐれた瞬間だった。
「がああああああ!!」
「ぐがあああ!!」
カッツの斧の一撃がクウを地面に叩きつけた瞬間だった。
 幸いにも一撃を受けたのが刃の部分ではなく、ぶつかったのが柄の部分であり、しかもクウ自身もブーメランで攻撃を受け止めていたので致命傷には至っていないのが唯一の救いだった。
 だが、地面に叩きつけられたクウの口からは鮮血が吹き出し、苦痛に顔が歪んでいるのがはっきりと見えた。
「らああああああああああ!!」
弟を助けるためにカイがカッツの背中からランスで襲い掛かる。
 カッツは間一髪でそれを回避するが、その時に刃先が肩に触れ、浅いながらも彼の肩の肉を切り裂いた。
 攻撃の衝撃でカッツやリク達の血が飛び散り、まるで赤い雨が降っているかのごとく俺の盾に赤い斑点がついていく。
 カッツの身体はそんな細かい傷からの出血で赤く染まっていた。
「ぐっ!!」
カッツはカイの腹に蹴りを入れて強引に蹴り飛ばすと、距離を取るために大きく跳躍をした。
 一瞬後にリクがカッツのいた位置に降り立ち、そのままカッツの後を追う。
 地面に倒れていたカイとクウもすぐに飛び起きると、兄に続いた。
 その身体は打撲と擦り傷で痛々しいまでに赤黒くなっていた。
 カッツとリク・カイ・クウ、どちらかが致命傷を負ってもおかしくない、そんなひっ迫した状況だった。
 この戦いを止めなければ……そう思ってはいてもどうにもできないのが実情だった。
 一瞬だけ目が追いついたものの、それから後は再び音がした場所を目で後追いするのが精一杯な状況だった。
 下手に彼らの戦いに割り込めば、誰かの攻撃に巻き込まれる恐れがある。そうなった時に一番危険に晒されるのはリク、カイ、クウの3人だ。
 彼らの身の安全を考えると、迂闊に飛び込むことができなかった。
「おい、ユダ!!戦いをやめさせろ!!」
「アンタ、バカ?そう言われてはいそうですかって従うと思うわけ?」
「お前、自分の仲間があんな姿になって戦っているのをなんとも思わないのか!?」
「勇者が仲間?冗談も休み休み言え。俺は勇者じゃねぇ。奴らみたいに、ただ言われて、何も考えずに動いて、使い捨てにされる人形じゃねぇんだよ」
ドラゴンの上に寝そべっていたユダは茶化すこともなく、そう答えた。
 彼自身、この戦いを目にして何か思うところがあるのだろうか。そう思えた瞬間だった。
「があああああああ!!」
目の前で魔物のような声が上がる。
 目を降ろすと、カッツの拳がリクの鳩尾にめり込んでいる場面が目に飛び込んできた。
 食らってはいけない一撃を受け、リクの目の焦点が一瞬広がる。だが、すぐに意識を取り戻すとカッツの顎に強烈なアッパーを打ち込んだ。
 ズンという思い音がして、カッツの体勢が崩れる。二人はよろめきながら二、三歩後ろに下がった。
 背後からクウが斬りかかるが、カッツは振り向いてそれを回避すると肉薄しているクウの髪の毛を掴む。
 カッツはそのままクウの身体を持ち上げると、ブォンという轟音を立ててリクに投げつけた。
 クウは頭突きをするような形になってリクの腹部に飛び込んだ。
「ごがぁ!!」
カッツの腕力によって加重されたクウの全体重を腹で受け止める形になって、リクは潰れるような悲鳴を上げた。
 そのまま地面に倒れこむ二人。そのまま地面に倒れこんでいる二人にカッツがトドメの一撃といわんばかりに斧を振り上げる。
 カッツも相当の深手を負っていたが、リク達はそれ以上に手ひどくやられていた。
 いくら3人が協力して戦っても、カッツとの差を埋められるほどではなかったのだ。
「ああああああああ!!」
カイが斧の一撃を阻止せんと背後から飛び込んで、カッツの肩を貫く。
 肩がパックリと裂け、血の花が宙に舞いカッツの身体がぐらりと揺らぐ。
 だが、カッツは何とか踏みとどまりカウンターに斧の柄でカイの腹を突いた。
「ぐぇ!!」
「がああああああああああ!!」
 逃れる隙を与えずカッツはカイの身体を強引に宙に持ち上げ、リクとクウのいる地点に全力で叩き付けた。
 ゴギャという嫌な音がして、くぐもった悲鳴が一瞬だけ漏れた。
「ゴフッ!!」
投げ飛ばしたカッツ自身も大きく吐血をして地面に膝を付いた。
 その隙を突いて、リク達も立ち上がった。カッツも、リク達ももう限界が近いのは俺の目から見ても明らかだった。
 何もできないもどかしさが俺の心を容赦なく切り裂いた。
「見てろ、そろそろ決着が付くぜ」
寝そべりながらユダが神妙な面持ちでそう俺に告げた。
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