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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】 □

俺は世界を……【カイルと三つ子の勇者・その43】

「あああああああああ!!」
カッツの雄たけびと共に冷気の強さが増す。
 ブリザードといって差し支えないそれは、リク達の体を容赦なく凍りつけ、地面に磔にした。
 このままでは3人が危ない。そう思って俺が一歩前に出ようとした時だった。
「来るな!!」
その声はリクの声だった。
 普段と同じあどけない声の筈なのに、その中に秘められた怒気のようなものに俺の身体は竦んでしまった。
 一歩が踏み出せない俺を見て、カイが一瞬だけニッコリと笑った。
「こっから先は……お願い……」
クウはそう言うと、凍りついた身体を強引に起こした。
 クウの背中は氷によって地面に張り付いたままで、無理に起き上がろうとすれば皮膚が裂ける恐れだってあった。
 それでもクウは……何の躊躇もなく地面から立ち上がった。
「があああああああああああ!!」
クウの悲鳴が当たりに響き渡る。
 メリメリという音と共に皮膚が引きちぎれる音が俺の耳まで届き、クウの背中が一瞬で真っ赤に染まった。
「わあああああああああああ!!」
「ぐあああああああああああ!!」
クウに続き、リクとカイも自分の皮膚を引きちぎり、血を流しながら立ち上がった。
 その生々しい音に一瞬耳を塞ぎたくなったが、おれは必死にそれを堪えた。
 彼らは自分の命をかけてカッツを救おうとしているのだ。
 それから目を逸らす事など、許される筈がないのだ。そう、無力な俺にできる唯一の事なのだから……。
 全身からあふれ出す血を、カッツから放たれる冷気が凍りつける。
 そんな中で痛みなど忘れたかのように平然とリク達は己の武器を弓の形態にした。
 凍り付いた三人の血が赤い結晶となり、ブリザードに吹き上げられ赤い花弁のように舞い上がっていく。
 普通ならのた打ち回ってもおかしくないほどの深い傷だというのに……。
「お?」
ドラゴンの上で寝そべって戦いの行く末を見ていたユダがその身体を起こした。
 リク達の様子から何かを感じ取ったようだった。
 俺の予想が通り、リク達は互いの弓をくっつけ、光の弦を引いた。
「ああああああああああああ!!」
リク達の動きを察したカッツが斧を振り上げ、三人に斬りかかる。
 だが、それよりも先にリク達が光の弦から指を離した。
 弓から放たれた三本の矢は交わり、一本の光の柱となって弓から放たれた。
 その先にいたのは鬼神と化したカッツだった。
「がああああああああ!!」
 カッツも光の柱が発射されるのと同時に、斧を振り下ろす。
 光の柱とカッツの斧の刃先がぶつかり、衝突している部分から白銀の光が上がった。
「ヒャッハァ!!あのチビ共、とんでもねー切り札もってやがったぜ!!」
花火でも見ているつもりなのだろうか、ユダが興奮気味に歓声を上げた。
 本当はこの光の矢は貴様のぶち込む為に編み出した技なのに……俺は悔しさで拳を握り締めた。
 できることなら、今すぐにでもあの憎たらしい顔を原型がとどめなくなるまで殴ってやりたかった。
「ぐ、ぐぐ……」
光の矢に押され、カッツの身体が僅かにのけぞる。
 最初は拮抗していた二者だったが、リク達が放った光の矢が次第にカッツを圧倒していた。
 総合的な戦闘力ではカッツのほうが上だが、瞬間火力であればリク達に軍配が上がると言わざるを得ない。
 その結果が今俺の目の前で繰り広げられていた。
「ぐ……あああ……!!」
光の波動に押しつぶされ、カッツが苦しげに悲鳴を上げた。
 斧本体とそこから発せられる光によって辛うじて防いではいたが、いつ光に飲み込まれてもおかしくない状況だった。
 そうなれば……たとえ今のカッツといえど命の保障はないといっても良い。
 カッツの動きを止める……そこからあまりにかけ離れたリク達の行為に俺は焦りともどかしさを感じていた。
 まさか、全力で戦ったせいで冷静な判断力が欠如しているのか?
 だとしたら、このままではカッツの命が……!!
 リク達から放たれた光はカッツの武器の光を徐々に浸食し、カッツの武器と身体を飲み込み始めていた。
 いくら勇者の武器が強力といえど、それは攻撃力においての話だ。岩盤すら易々と砕く一撃の前に、勇者の武器が耐えられるとはとても考えられない。
「ああああああああ!!」
カッツの身体が光に飲み込まれ始め、カッツが再び悲痛な叫び声を上げた。
 だめだ、このままでは……!!
「やめろ、リク、カイ、クウ!!このままじゃ……」
俺がリク達と止めようと叫んだ瞬間だった。
 リク達が俺の顔を見ているのが見えた。その顔は何故か……笑っていた。
 三人の唇が同時に動く。轟音で声が聞き取れたわけではないが、『後は任せた』俺にはそう言っているように見えた。
 次の瞬間、三人は弓の合体を解いた。カッツを圧倒していた光が一瞬弱まる。
 カッツの身体を半分飲み込んでいた光が消え、カッツの冷気が一時的に強まる。
「やめろおおおおおおおお!!」
カッツが泣きながら斧を振り下ろした。
 リク達の光を切り裂き、カッツの斧がリク達の足元に叩きつけられた。
 爆音と地響きが周囲に鳴り響き、カッツの一撃によって巻き起こった白いブリザードの煙が俺の視界を奪う。
 まさか、最初からリク達はカッツをギリギリまで消耗させるために戦っていたのか?
 最後に自分達を犠牲にして、カッツに最大の一撃を放たせて、体力を奪わせたのか?
 数秒の後……煙が引いた先にいたのは、満身創痍で斧を支えに辛うじて立っているカッツの姿と……氷の柱に身体の大半を飲み込まれたリク、カイ、クウの姿だった。
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