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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その2【トラシアでの戦い】 □

俺は世界を……【トラシアでの戦い・その4】

「ほら、これに着替えろ!!」
レツは荷物袋からタイガの服を取り出すと、着易いように広げてタイガの首に通した。
 それをタイガは器用にスルスルと身体を通していく。
 今度は下のハーフパンツを穿かせる。
 小さい(?)子供に服を着させるテクニックには自信があるのだ。
 タイガに自力で着替えさせるよりは早く済ませる確信がレツにはあった。 
 タイガは何かをブツブツいいながら腰の紐を縛る。
「あのさ……」
「ん?」
「俺、別に一人で着替えれるから……」
タイガが恥ずかしそうに呟いた。
 たしかにタイガの歳では着替えを手伝われたら恥ずかしいだろう。
 焦っていたとはいえ、少し思慮が足りなかったとレツは反省していた。
「それと……」
タイガが言葉を続ける。
「ごめんなさい、怒らせて……」
ゴニョゴニョとだが、タイガが謝罪の言葉を口にする。
 さっき怒鳴ったのを気にしているのだろう。
 あれは半分八つ当たりに近かった。
 何よりも優先して魔物の襲撃を教えてくれたのに。
「お前が謝ることねーんだよ」
レツはタイガの頭をそっと撫ぜた。
 タイガはきょとんとした様子で自分を見上げている。
「さっきのは俺が悪かった。ごめん」
「え?」
「さっきのはお前は悪くないんだ。本当に悪かった」  
レツはタイガの頭をギュっと抱きしめた。
 八つ当たりしてしまったこと、そしてタイガに謝らせてしまったこと。
 自分の未熟さを痛感する。
「別にもういいって」
タイガが自分を恥ずかしげに言葉を漏らす。
「パンツ一枚でいたこと怒られたと思っただけだからさー」
「お前なぁ……」
「んじゃ、俺先に行くぜー」
 タイガはレツの腕をすり抜けると、跳ねるように部屋を出て行く。
 レツも遅れないようにその後を追った。
 二人が宿屋の外に出ると、すでにミカエルが魔物と交戦を開始していた。
 その敵の数の多さにレツ我が目を疑った。
 空を覆わんばかりのガーゴイルの群れ。焼かれた家の炎に照らし出される姿が不気味さをさらに助長する。
 軽く見積もっても二百匹以上はいる。
 この街を襲撃するにしても数が多すぎる。
 明らかにこの街を潰す数である。
「大いなる風のマナよ、今こそ我が指先に集いて邪なる存在を引き裂け、ウィンドスラスト!!」
ミカエルが呪文を唱え、指先から真空の刃を発生させる。
 その刃は数多くのガーゴイルを巻き込んだが、今の状況では焼け石に水であった。
 倒し損ねた敵を、ミカエルは紅に輝く剣で手早く止めを刺していく。
「ミカエル!!」
レツの声に、最後の一匹を倒したミカエルが振り向く。
「レツと勇者か」
「この数は何だ!?」
ミカエルが答える前に、一匹のガーゴイルがレツに襲い掛かってくる。
 だが、レツに回避され、カウンターに浴びせ蹴りを食らわされた挙句、タイガにアッパーカットをくらってあえなく絶命した。
 レツとタイガが振り向くと、ミカエルは剣を収め険しい表情で空を見上げていた。
「この魔物の数、無計画な夜襲とは考えにくい」
「うんうん、俺もそー思った」
知ったかぶりをするタイガを無視してミカエルは話を続ける。
「恐らくは上級の魔物が統率をしていると考えていいだろう」
「上級の魔物!?」
レツが聞きなおすと、ミカエルは小さく頷いた。
 完全無視されたタイガは少し拗ねている。
「ああ。恐らくは13魔将クラスだ」
ミカエルの口から出た言葉。
 13魔将というのは魔王直属の魔物達であり、そのほかの魔物を統括する存在である。
 実力も圧倒的で、数人の勇者を同時に相手しても退けることすら難しいという。
 しかし、言葉を返せばそいつを仕留めることができればこの大群に混乱が生じ、勝機が出てくる。
 レツとタイガの頭の中ではこれはむしろ好機といっていい状況だった。
「しっかたねぇなぁ」
レツが不敵な笑みを浮かべながら拳を鳴らす。
「ボス潰すしかないっしょ」
タイガもやる気マンマンの顔で爪を装着する。
「無謀極まりないが……やるしかないな」
ミカエルも覚悟を決めたように剣を再び抜いた。
 ガーゴイルの群れの動きはある一点から拡散するように上空を移動している。
 つまりその中央に上級の魔物がいることになる。
「とにかく魔物を倒しながら町の中央にいくしかない。行くぞ!!」
レツの掛け声と共に一斉に駆け出す3人。
「空を飛んでいる奴は無視しろ。こちらに向かってくる魔物だけを相手にしろ」
すれ違いざまに魔物を一閃で切り伏せ、二人に指示を出すミカエル。
「だぁ、逆にその方がめんどくせー!!」
タイガが危なっかしく魔物をかわしながら、音を上げるように叫ぶ。 
 仕方なくタイガを二人がフォローしながら、三人は魔物の流れの中心へと向かう。
 幸か不幸か、魔物たちは町の破壊に夢中で自分達に気づくことは少ない。
 魔物の流れを掻い潜りながら町の中央の噴水にたどり着いた時、3人は一匹の人型の魔物を見た。
 明らかに他の魔物より二周りほど大きな体。
 オレンジ色の身体には、人間では決して敵わないと思えるくらいの筋肉がついている。
 翼も広げれば3m近くありそうな大きさだ。恐らくはあの翼で人間の首を跳ね飛ばすのだろう。
 そして何よりも、その圧倒的な威圧感。
 奴がこの魔物達のボスであることは3人にもすぐに理解できた。
「ほぅ、逃げ出さずに戦いを挑む愚か者がいようとはな」
オレンジ色の魔物はレツ達に気づくと、ベロリと唇を舌で舐める。
 まるで獲物を見つけた獣のような顔つきで。
 その狂気に満ちた瞳にはタイガの姿しか映っていないことをレツは気づく由もなかった。
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