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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その2【トラシアでの戦い】 □

俺は世界を……【トラシアでの戦い・その1】

 森の道をひたすら進んで数時間、レツとタイガは城壁に囲まれた街、トラシアにたどり着いた。
 ゆうに3mを超える城壁が示すように、この街は魔物に対して多少の防衛が可能である。
 つまり、それは勇者が滞在しても安全な街だという事だった。
「でっけー門」
自分の背丈の3倍以上ある門を見上げて、タイガは驚きの声を上げる。
 レツは場所柄何度か訪れたことがあるので驚きはしなかったが、自分もはじめて来たときに同じリアクションをしたのを思い出して思わず噴出した。
「何かおもしろいことでもあったか?」
「いや、ちょっと思い出し笑い」
「ふーん」
まだ笑いが収まらないレツを不思議そうに見上げながら、タイガが先に門をくぐる。
 レツも数歩遅れて門をくぐる。
 すると目の前に街の風景が広がる。
 土壁に木製の屋根の家々が広がる。
 荷馬車を引く牛や、それを引っ張る農夫。そして小さいながらも活気がある市場。
 決して豊かな町ではないが、それでもここら辺で数少ない市場のある街だった。
「とりあえず今日はここに泊まって旅の予定立てよう」
「ぇー、その前に腹ごしらえ」
そういうと、タイガは一人で勝手に市場の方に走っていってしまう。
 待てといいたかったが、レツの腹もタイガに同意するようにグゥと鳴った。
 そういえば、勇者との合流の手筈が狂って食事を取ってなかった。
 これも仕方ないと自分に言い聞かせ、レツも市場に走り出した。
 タイガには程なくして追いついた。
 食料品を扱う店の前でがっくりと肩を落として突っ立っていたからだ。
 何があったんだろうと近寄ってみると、レツにもその理由がすぐにわかった。
 店に商品が殆どなかったのだ。
 ヒモのように細い野菜が少数に、干した肉が数えるほど。
 レツが小さい頃胸を躍らせた、市場で販売されているその場で食べられる料理などは全て売切れになっていた。
「あにきぃ……」
タイガが目をウルウルさせてこちらを向いてくる。
 レツも正直がっくりしたい気分だった。彼も朝から何も食べてないのだ。
「ごめんね、坊や」
市場のおばちゃんが申し訳なさそうにタイガに声をかける。 
 今の品揃えでよだれと涙を同時に流しながら商品を見ていれば謝りたくもなるだろう。
「俺昔ここに住んでいたことあるんだけど、ずいぶん品数減ってないか?」
レツが尋ねると、おばちゃんは再び深いため息をついた。
「昨日ここに来るはずの荷物が魔物に襲われちゃってねぇ」
「魔物に?」
レツの質問に、おばちゃんはそうだよと答えながら少ない商品の整理を始めた。
「輸送隊と護衛の傭兵まで根こそぎ全滅したらしくて。ただの魔物じゃないって話だけど、どっちにしても並べる商品がないことに変わりはないしねぇ」
「そっか……」
「最近は品物が魔物に襲われる頻度も多くなってね……。売るものが減っちゃってねぇ」
そういいながら頭を下げるおばちゃんに二人は何もいえなかった。
 魔物のせいで苦しい生活をしている村や町は決して少なくない。
 魔物に対して十分な防衛体制が整っているのは、闇・月・雷・風の四国を除けば大都市にしか存在しない。
 その他の小さな町に住む人々は、目の前にいるおばちゃんのように魔物に怯えながら暮らすしかない。
「よし、その魔物、俺達で退治しよーぜ!!」
「そうこなくっちゃな。俺達の初仕事だ!!」
タイガの言葉に、レツが賛同する。
「んでもって、ここで腹いっぱい食べる!!」
タイガが景気よく宣言すると、さっきまで暗い表情だったおばちゃんが微笑ましげに笑う。
 どうやら子供が勢いで言っているのと思われているらしい。
 まあ、これではどう見ても勇者というよりただのお子様だが。
 だが、そんな慎ましい幸せの時間は呆気なく終わりを告げた。
 市場の反対側、門の方で爆発音がしたからだ。
「タイガ!!」
「どーやら、俺達が出向く必要もなかったよーだぜ!!」
二人は顔を見合わせると、その爆発の方へと走っていった。
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