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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その3【トウマ登場!!】 □

俺は世界を……【トウマ登場!!・その11】

 1時間ほど歩き、レツ達はパラディアの町の城門の前に到着した。
 それは同時にミカエルとの別れの時を意味していた。
 忘れかけていた別れの時の訪れに、レツもタイガも別れを惜しむ気持ちが溢れてきた。
 グリフィスとの戦いの時、ミカエルがいなければ自分達は少女の登場を待たずして全滅していただろう。
 それ以外にも彼には助けられることが多かった。
 頼りになる仲間であり、これからもずっと一緒のような気さえしていた。
 だが、これが別れの時なのである。
「それでは私はここで別れるとしよう」
「そうか……」
別れを告げるミカエルにレツは引き止める言葉を持たなかった。
 そう、パラディアまでは同行する、それが最初の約束だったからである。
 ミカエルにはミカエルの事情がある、それは仕方のないことだった。
「レツ、最後にお前に話しておくことがある」
「え?」
ミカエルは後ろにいるタイガやトウマに聞かれないためなのか、レツとの距離を詰めた。
 どうやらタイガやトウマ達には聞かれたくない内容らしい。
「勇者の武器の解放は、勇者の肉体と精神を蝕む。勇者の死因はそれが大半を占めている」
「なんでそんなことを……?」
「そんなことはどうでもいい。お前がタイガを死なせたくないのなら、何があっても勇者の武器を使わせるな。いいか、何があってもだ」
「あ、ああ」
ミカエルは半ば強引にレツに諭すとマントを翻し、一人城門の中へと進んでいく。
 なぜミカエルがそんなことを知っているか、そんなことはこの際どうでもよかった。
 自分の考えに気づき、それを応援してくれる人がいてくれることがレツにはたまらなく嬉しいことだった。
「ミカエル!!」
レツの声に、ミカエルが歩みを止め振り返る。
「今までサンキューな!!」
レツの感謝の言葉に、ミカエルは一瞬だけ穏やかな表情を見せると、再び夕焼けの街の中へと歩いていく。
 レツ達は人ごみの中にミカエルが見えなくなるまで、ずっと見送っていた。
「さてと、武器の管理人との合流は明日にするつもりなんだけど、これからどーする?」
ミカエルを見送ったレツが、タイガ達に意見を求める。
 まっさきに手を挙げたのは下着一枚のトウマだった。
「自分は、服を買いたいでありますっ!!」
なぜか軍隊口調で答えるトウマ。
 だがその目は真剣で、可愛そうな位に切実だった。
 2時間以上下着一枚で歩かされたら誰だってそうなるのかもしれないが。
 流石にこれ以上トランクス一枚で歩かせるのは可哀想だ。
「んじゃ、トウマの服を買ってからホテル探すか」
「よっしゃー!!やっと服がきれるっ!!」
大声を上げるトウマとその連れであるレツ達に視線が集中する。
 下着一枚のトウマ姿が憶測を呼び、いたるところでヒソヒソと会話しているのが耳に入ってくる。
 レツは慌ててトウマの首根っこを掴むと、タイガ達を連れて一番近くにある冒険者向けの服屋に駆け込んだ。
 無事その店でトウマの服も購入でき、チーコによって手配されたホテルにチェックインしたレツ達。
 見事そのホテルの最高級の4人部屋を手配したチーコは、自慢げにベッドの上に転がって帳簿をつけている。
 トウマは裸で山をうろついたせいか、部屋につくなり熱を出して寝込んでしまっていた。
 窓際のベッドをいち早く確保したタイガは、遊び相手のトウマが風邪を引いてしまい、退屈そうに外を眺めていた。
 それぞれに自分の時間を過ごしている、そんな状態だった。
 レツは丸一日の登山で疲れた体をベッドに沈めた。
 明日ついに管理人と合流する。
 それが魔物達との戦いの開始となる。
 勇者が死ぬか、魔物の長である魔王を倒すかどちらでしか終わることの戦いの日々。
 普通に考えれば勇者が死ぬのがこの旅の終わりである。
 勇者を、タイガを看取る、そんな言葉が頭に浮かんだレツは大きくかぶりを振った。
「なーなー、レツにーちゃん」
そうタイガの声が聞こえたと思った瞬間、何かがドスンとレツの腹の上に落ちてきた。
 どうやら自分のベッドからダイレクトのレツの腹の上にダイブしてきたようだ。
 見上げるとタイガが馬乗りになって妙何かを期待するような表情でレツの顔を見下ろしている。
「今から夕飯食べにいきがてら街みにいかねー?」
興奮気味に話すタイガ。
 レツは窓の外に広がる風景に目をやった。
 パラディアは光の国の中でも2番目に大きな町だ。市場には他の町にない店や商品も沢山ある。
 タイガが興味を示すのも当然だろう。
 本来なら休養に時間を費やすべきなのだが、レツの内心はタイガにはいろいろなものを見せてやりたい、そんな考えがあった。
 タイガを戦うだけの勇者にはしたくない、そんな兄心もあったのだと思う。
「おし!!」
レツは上半身を起こすと、タイガの頭を撫ぜておでこをくっつける。
 それだけでタイガは嬉しそうに笑う。
 もっと笑わせてあげたい、そうレツは心に決めていた。
「んじゃ、俺達は外で夕飯食べてくる」
「わかったニャ。おいらはルームサービスで済ませるから、ゆっくりしてくるニャ」
チーコはカタログを片手に、帳簿から目を離さないまま肉球だけをレツに見せた。
「ごめん、本当は俺が案内しなきゃいけないけど……」
トウマがシーツの中から手を伸ばした。
 布団からのぞいた顔は赤く、鼻水も止まらない様子だった。
 今日はいろいろと世話になったし、病人に鞭打つようなことをするのも気が引ける。
「いーよ、俺とタイガで行ってくるから」
レツが労わる様に言葉をかけると、トウマは手を振りながらもぞもぞと布団の中に戻っていった。
「トウマの薬と食事もルームサービスで用意しとくニャ」
チーコが帳簿に何かを書き入れながらレツに言葉をかける。
 タイガはベッドから飛び降りると、早く行こうといわんばかりにレツの腕を引っ張った。
 レツは引っ張り起こされるように立ち上がると、タイガを連れて部屋の外へと続くドアのノブを握った。
 そして勢いよくドアを開けた。
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