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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その3【トウマ登場!!】 □

俺は世界を……【トウマ登場!!・その9】

 蜘蛛型の魔物、通称ブラックウィドウと呼ばれる魔物の対処法はいろいろあるが、全てに共通する前提が一つある。
 それは決してこちらの動きを止めてはならないこと。
 動きを止めれば粘性の強い糸で絡め取られ、牙から毒を注入される。
 蜘蛛の毒は動きを封じるのと同時に、身体の筋肉を分解する性質がある。
 ブラックウィドウは分解された筋肉を啜ることで餌を食す。
 逆に言うとその糸以外に目立った能力もなく、常に動いて相手を撹乱していけばけして倒せない敵である。
 そう、動きさえ止めなければ……。
「どーすりゃいいんだよ……」
レツは自分達を取り囲むブラックウィドウの群れを前にして、そう言葉を漏らした。
 そう、ブラックウィドウと戦う際の大前提である常に動くことを封じられているのである。
 下手に動き回れば、真っ先に動けないトウマが餌食になる。
 かといってトウマを守るように戦えば自分達も餌食になる。
 トウマの命をとるか、自分達の命をとるか、まさに究極のジレンマだった。
「こうなったら……」
タイガはそういいながら、装備しているクローに左手を当てた。
 そう、あれは……。
「やめろ!!」
考えるよりも先に身体が動いていた。
 タイガの左手を引っ張り上げ、武器の力の発動を阻止したのだ。
 レツの取った行動を信じられないといった表情で見上げるタイガ。
「何やってんだよ!!」
眉間にしわを寄せて抗議の声をあげるタイガ。
「その力は使うなって言っただろ!?」 
「つったって、ここでこの力使わなきゃ意味ねーだろ!?」
タイガの怒声にレツが言い返そうとしたが、その前にブラックウィドウの白い糸が二人の間に割って入る。
 間一髪で手を離して回避する二人。
 だが、その動きが災いして蜘蛛の糸によって二人は分断された形になってしまった。
 近づいてくる蜘蛛を各個で撃退する二人だが、糸に気を取られて思うように攻撃ができない。
 蜘蛛の白い糸が尚も執拗に二人を追い詰める。
 確実に逃げ場を奪われていく二人。
 気が付けばレツ達の周囲は糸で完全に包囲されていた。
 蜘蛛の巣となった洞窟のいたるところからブラックウィドウたちがじわりじわりと迫ってくる。
「あーもー、俺力使うからな!!」
タイガが半ば自棄になって武器に手を添える。
「タイガ、もうちょいまった!!」
再びタイガを静止する声。
 だがそれはレツの声ではなかった。そう、トウマだったのだ。
 レツがトウマの方を向くと、トウマは信じられない行動を取っていた。
 糸に絡め取られた服を脱ぎ、蛹が殻を破って外に出るかのごとく飛び出してきたのだ。
 トランクス一枚で。
 だが、これでこの場で留まって戦う理由はなくなった。
 タイガもそれを理解したのか、武器の発動を控えた。
「この服高かったんだぞ……その分はたっぷりお礼させてもらうぜ!!」
トウマは怒りを隠そうともしない口調で蜘蛛に言い放つと、岩壁に貼り付けられた自分のズボンの横ポケットから一本の巻物を取り出した。
 それを口に銜えると、目にも留まらない速さで手で印のようなものを組んでいく。
 印を結び終えたと思うと、今度は銜えていた巻物の紐を解き、口から離して地面に敷いた。
「忍法火遁、紅蓮華の術!!」
トウマの掛け声と共に、巻物を起点にして炎の絨毯が扇状に広がる。
 炎は糸に引火し、面白いように広がっていく。
 そしてその糸を吐いていた蜘蛛たちにも火が燃え移り、あたりは火達磨になった蜘蛛達が這いずり回る地獄絵と化していた。
 辛うじて炎上を免れたのは糸がなかったレツ達の周囲だけである。
「おっしゃ、あとは任せた!!」
自信満々で二人の陰に隠れるトウマ。
 だが、糸を燃やした上に蜘蛛達をパニックに陥らせたのは十分すぎる働きだった。
「後は任せろ!!」 
勝利の声を上げながら、動きの鈍った蜘蛛を一匹ずつ確実に粉砕していくタイガ。
 あの力を使わせずに済んだ、安心したレツは心置きなく掌に気を集中させる。
「はぁ!!」
レツの掌から放たれた気の波動が蜘蛛を3匹一気に巻き込んで粉砕する。
 そしてそのまま敵の中に突っ込んでいったレツは大きく跳躍し、4匹目に強烈な回し蹴りをお見舞いする。
 直撃を受けた蜘蛛は黒こげた足を撒き散らしながら地面を転がっていき、そのまま動かなくなった。
 10匹近くいたブラックウィドウは、大半がレツとタイガに倒され、僅かな生き残りも黒焦げになるまで身体を焼かれて息絶えていた。
 生き物が焼けたとき特有の嫌なにおいが洞窟の中に充満している。
 だが、それとは対照的にレツの気分は晴れやかだった。
「いやぁ、一時はどうなることやらヒヤヒヤしたぜ」
蜘蛛の死体を足蹴にしてトウマがしみじみと呟く。
 今回の戦闘の最大の功労者のはずなのに、パンツ一枚のせいで威厳も何もあったもんじゃない。
 トウマの服は炎の絨毯によって、ブラックウィドウと運命を共にしてしまっていた。
 そんなわけで、パラディアに着くまではトランクス一枚でいることを強いられているのだ。
「何だかしらねーけど、タイガも変な力使わなくて済んでよかったんじゃなないの?」
トウマがそういってタイガに笑いかけると、タイガも戸惑いながらも微かに笑った。
 今回はトウマのおかげでタイガにあの力を使わせずに済んだ。
 ありがとう、レツは心の中で礼を言った。
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