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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その3【トウマ登場!!】 □

俺は世界を……【トウマ登場!!・その8】

 トウマを先頭に洞窟を進んでいく三人。
 洞窟に三人の足音が不気味なくらいによく響く。
 ランプの明かりだけを頼りにしての移動。いつ魔物に襲撃されてもおかしくない状況である。
 三人ともちょっとした物音に過敏に反応するほどに、極度の緊張状態にあった。
 そのせいか疲労の速度も速く、少し進んでは休み、また進む、その繰り返しであった。
「少し休憩にしよう」
レツが口にするのと同時に、タイガとトウマが倒れるように地面に腰掛ける。
 二人とも緊張からか、疲労の色が濃い。
 だが、三人とも今の状況を絶望視してはいなかった。
 最初よりも流れてくる空気の量が少しずつであるが多くなってきている。
 つまり、僅かではあるが確実に出口に近づいているのだ。
「あとどれくらいかな……」
タイガが指で風の方向を確かめながら呟く。
「そう遠くはないと思うぜ」
トウマはそういうと、額の汗を手で拭った。
 トウマは汗の不快感に耐えかねたのかジャケットを脱ぐと、汗でぐっしょりとぬれた黒シャツを脱ぐ。
 そして地肌に直接メッシュジャケットを羽織った。
「風が穴に流れ込む音が聞こえるんだ。こういう音は洞窟の入り口じゃなきゃ聞けない」
トウマは目を閉じ、まるで風の音を聞くかのように耳を済ませている。
 再び目を開けたとき、彼の瞳には活路を見出した強い光が宿っていた。
「どう?ただのガキじゃねーだろ?」
雇ってよかっただろ?といった口調でこちらに語りかけてくるトウマ。
 生意気だけど、なんだか憎めない。そこがトウマの良さなんだろう。
「ただのナビゲーターの卵かと思ってたが、意外と戦えるみたいだしな」
「意外は余計だぜ、意外は」
「そういう生意気言うやつには……」
レツはトウマのメッシュジャケットの袖から手を突っ込み、身体をくすぐる。
 地肌に直接着ているので、そのしたは肌なわけで、ダイレクトにくすぐられたトウマは身体を捩じらせて抵抗する。
「ちょ、だめっ、俺、そういうの弱いんだって!!」
トウマは笑い涙を見せながらそう懇願するが、レツはトウマをがっちりホールドしてくすぐりつづける。
 タイガも興味津々な様子でレツとトウマの二人の様子を見に近づいてくる。
「俺もやるー」
「バカ、止め……ギャハハハハ!!」
タイガも参加し、一方的なくすぐり攻撃がトウマに加えられる。
 トウマの笑い声が静寂の洞窟の中に響き渡る。
 彼の笑い声が止んだのは、数分後二人から開放された時であった。 
 一仕事終えた様子で満足げに地面にあぐらをかいているタイガとレツ。
 その隣でゼーゼー肩で息を切らしながら地面に這い蹲っているトウマ。
「俺、汚されちゃった……」
疲れ果てた表情でトウマがぼやく。
 本人はギャグのでいっているつもりだが、その表情、体勢ではギャグになってない気もする。
 トウマには悪いが、彼のおかげでさっきまでの嫌な緊張感がなくなっていた。
「んじゃ、ちゃちゃっと外でようぜ」
レツは勢いよく立ち上がると、流石に悪いと思って倒れているトウマに手を差し伸べる。
「ひでぇ、俺休めてないって」
渋々レツの手を握ってぶーと文句をたれるトウマ。
 レツはトウマを引っ張り挙げると、服についた埃を手で払ってやった。
「わりぃな。ちょっと悪乗りしすぎた」
「俺もごめん」
レツに続いて、タイガも頭を下げる。
「お詫びに今日の夕飯はトウマの好きなものでいいからさ」
「……まぁ、それでいいぜ」
しかたねぇなといった口調で二人を許すトウマ。
 だが、好きなものを食べられると聞いた様子はまんざらでもないようだ。
「んじゃ、ちゃちゃっと洞窟脱出だ!!」
食べ物に釣られたのか、元気よく声を上げ、意気揚々と歩みだすトウマ。
 レツとタイガも遅れて歩き出そうとするだが、白いものが自分の鼻先を掠めた。
「トウマあぶねぇ!!」
「え?」
レツがトウマに叫んだ時には時すでに遅く、トウマはその白いものに巻き込まれ、壁に叩きつけられていた。
「トウマ!!」
レツの叫び声に反応して、トウマの手足がじたばたと動く。
 どうやら身体そのものは無事のようだ。
「くっそー、ねばねばして動けねー!!」
よく見るとトウマを覆っているものは白い糸だった。
 どうやら相当の強度と粘性を持ってるらしく、トウマが動けば動くほどその身体を絡め取っていく。
 とにかくトウマを助けないと……レツがしゃがもうとした時タイガがレツのタンクトップの肩のヒモを引っ張った。
「タイガ、お前もトウマを……」
「レツ……にーちゃん……あれ!!」
そんなレツをタイガが怯えた口調で何かを伝える。
 一体何なんだ、レツが振り返った瞬間彼はタイガが怯えていた理由を悟った。
 暗闇に揺らめく無数の赤い瞳。
 不協和音のように耳障りな声を上げながら、こちらに迫ってくる。
 トウマを絡め取っている糸と、暗闇に点在する赤い複数の目。
 姿はみえずとも、レツにはその正体の察しがついた。
 さきほど自分が倒したのと同じ蜘蛛の化け物である。
「くそ、やばいな……」
レツはタイガを庇うように前に出ると、自分の背後にチラリと目をやった。
 後ろでは壁に貼り付けられたトウマがナイフを片手に糸と格闘をしているが、そのナイフが逆に糸に絡まっている始末である。
 すぐに脱出できる気配ではない。
 無数の蜘蛛に囲まれ、レツは久々に自分が死と背中合わせにいることを感じ取っていた。
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