鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その3【トウマ登場!!】 □

俺は世界を……【トウマ登場!!・そのその5】

 翌朝、朝靄がまだ立ち込めている街にレツ達は立っていた。
 彼らの目の前には荒れた登山道が山頂に向かって伸びている。
 大通りと直結している現登山道とは対照的に、旧道は民家が立ち並ぶ裏路地と繋がっていた。
 しかも、その終点がある民家の裏庭の道だったりする。
 石畳の舗装も剥げているところの方が多く、獣道と呼ぶのがふさわしい道であった。
 おそらくトウマがいなければ見つけることすら難しかっただろう。
「どうして他のナビゲーターはここを使って戻ってこないんだ?」
「ここの道知ってるナビゲーターが殆どいないってのが一つと、魔物とちょくちょく会うんで普通のナビゲーターにはつらいのが二点目。三つ目にそんだけ危ない目してこっちきても、客を連れて山を登れなきゃ意味がないってとこかな」
ま、俺は余裕だけどねといったそぶりで説明をするトウマ。
 ズボンの両側には一対の大型のナイフが鞘に納まってるし、ズボンのポケットの中にも地図以外にいろいろと詰まっている。
 おそらくは魔物と戦うことも想定に入れた装備に違いない。
 トウマを先頭にして山を登るレツ達。
 最初は木々の生い茂った森林地帯だったが、次第に木の姿がまばらになり、かわりに岩肌が露出した山道へと風景が変わっていった。
 足元にに昨晩泊まった街の全景が広がる。
 そんな風景を楽しむ余裕もなく山を登っていくレツ達。
 三十分ほど登ると、目の前に高さ3mほどの大きさの洞窟がぽっかりを口を開けていた。
「ここを通って山の反対側に行くのか?」
「そのとーり」
レツが尋ねると、トウマが自信たっぷりに答えた。
「魔物の気配がするな」
ミカエルが暗闇に覆われた洞窟の奥を見据えて呟く。
 レツもミカエルと同じく、魔物の気配を感じていた。
 単体の上級の魔物のプレッシャーというより、無数の魔物の気配が洞窟の奥から伝わってくる。
 タイガも気配を察したのか、武器を片手に警戒をしている。
「雑魚がウジャウジャいそうな予感だぜ……」
「ここめったに人が通らないから、魔物が溜まるんだよ。俺の力じゃ魔物追い出せないしさ」
洞窟の中での戦いを考え、険しい表情を見せているレツに、トウマが面目ないといった表情で詫びる。
 だが、ここで引き返すわけにも行かない。
 5人いれば、チーコとミカエルの魔法で十分殲滅可能だろう。
 レツは大丈夫といいたげにトウマの肩に手を乗せた。
 そのための勇者と自分なのである。
「それじゃ、行くか」
「おう!!」
レツの号令に、タイガが元気よく答えた。
 チーコの持参したランプの明かりを頼りに洞窟の奥へと進む一行。
 かび臭い臭いと腐臭が混ざった何とも不快な臭いが奥から流れてくる。
 どうやらこの先に魔物の巣があるのは確定のようだ。
 この先で戦いになる。覚悟はいいな?レツは言葉の変わりに振り返り、4人に視線を送った。
 どんと来いと言いたげな表情のタイガ。相変わらず余裕すら伺えるミカエル。
 案外落ち着いているトウマに、鼻歌交じりで歩くこの先で戦闘が起きることがわかってるのかわからないチーコ。
 四人が四人ともがバラバラの受け取り方をしている。
 奥へ行くごとに広くなる横穴。
 しばらく歩いていると、高さ10mほどの鍾乳洞のホールへとへと出た。
「よくまあ、ここまで……」
レツはホールの天井をみて顔をしかめた。
 天井にビッシリと張り付いていたのは、鳥形の魔物、チョンチョンだった。
 鳥の身体に長い首、先端には一つ目の人間の頭。その口からは人間の脳髄をすするための鋭い舌を揺らしている。
 数匹がこちらに気づいて地上に降りてきているが、大半はまだこちらに気づいている様子はない。
「チーコ、先手を打って殲滅魔法を発動させることは可能か?」
「ニャ」
ミカエルのリクエストにチーコが肉球を見せるポーズを取る。
 そしてピコピコハンマーを両手に持ち、不思議なステップを踏みながら円を描くようにダンスを始める。
「俺とミカエルでチーコの詠唱を援護する。タイガ、お前はバックでトウマのフォロー頼む」
「トウマのフォロー?俺が?」
「ナビゲーターは戦闘向きじゃないんだ。友達、守れるな?」
レツの問いかけに、最初は少し不満げな表情をしていたタイガだが友達という言葉を聞き、自信たっぷりに頷いた。
 まだ傷が癒えきってないタイガに前衛を任せるのは少し不安があったための配置である。
 それにトウマを守っているうちは、あの武器の力を使わないだろう。それも計算にいれた配置だった。
「トウマ、俺の傍離れるなよ!!」
「俺も一応戦えるんだけどなぁ……」
鼻息荒くトウマの前に立つタイガとは対照的に、トウマは戸惑った様子でタイガに前を任せていた。
 トウマがどの程度戦えるかは未知数。とりあえずタイガと組ませて、どの程度の実力か見極める必要があった。
 タイガと遜色ない実力なら二人でタッグを組ませればいいし、そうでなければ非戦闘員として考える必要がある。
 この戦いはいろいろな意味でこれからの旅のあり方を占うものであった。
「来るぞ!!」
レツの言うとおり、チーコの呪文詠唱に気づいたチョンチョンたちが次から次へと地上に降りてくる。
 統率が取れた大群は恐ろしいが、司令塔も何もない烏合の衆ならば各個撃破していけばおそるるに足らない。
 一番手で飛び込んできたチョンチョンをレツが蹴り飛ばしたのを皮切りに、チョンチョン達が一斉に襲い掛かってくる。
「にゃんにゃんにゃんの、ふ~にゃふにゃふ~、ごろごろごろの、なおなおな~」
意味不明な呪文を口にしながらクルクル回転したり跳ねたりの不思議なダンスを踊り続けるチーコ。
 月猫族は踊りで呪文の発動に必要なマナを集める。
 詠唱中は滑稽だが、踊りが終わった瞬間に目の前に地獄絵図が繰り広げられることになる。
「はぁ!!」
ミカエルがチョンチョンを二匹同時に切り裂く。
 切り裂かれた頭部が宙を舞い、後ろに控えるチョンチョン達をパニックに陥れる。
 レツもミカエルに負けじと、気を込めたストレートでチョンチョンの頭部を砕いた。
 凄惨な最期を迎えた仲間を目にし、二人に恐れをなした数匹のチョンチョンがタイガの方へと殺到する。
 だが、タイガは白銀に輝く武器を手にしそのチョンチョンを不敵な笑みで迎え撃つ。
「俺様が勇者だ、覚えとけ!!」
チョンチョンが舌で攻撃するよりも早く、タイガのクローがチョンチョンの胴体を切り裂く。
 断末魔の悲鳴を上げながらタイガの前にひれ伏すチョンチョン。
 もう一匹のチョンチョンに攻撃をしようとしたとき、脇を何かが駆け抜けた。
 トウマだ。
 そう思った瞬間には、すでにトウマのブレードがチョンチョンの首を切り裂いていた。
「俺だってこれくらいのことはできるんだぜっ!!」
地に伏したチョンチョンを踏みつけ、得意げに笑みを見せるトウマ。
 タイガは嬉しそうにニヤリと笑うと、トウマの『サイド』についた。
「俺右側、トウマは左側なっ」
「いっちょやったるか!!」
タイガとトウマはタッグを組むと、チョンチョン達を協力しながら倒していく。
どうやら二人を組ませたことがいい方向に向かったようだ。
「チーコの詠唱が終了するぞ!!」
ミカエルの合図と共に、レツ達四人は一斉にチーコの周囲へと集まる。
「いくニャ、スチームガスト!!」
チーコが踊りの最後のポーズを取った瞬間、チョンチョンたちの足元の地面が大きく裂け、真っ白い蒸気が渦を巻いて噴出した。
 巨大な蒸気の竜巻はチョンチョン達の殆どを巻き込み、そのまま天井の鍾乳石までもを飲み込んだ。
 スチームガスト。蒸気の竜巻で敵を攻撃するという、水属性の魔法の中でも殺傷力、攻撃範囲に優れた上級魔法である。
 その破壊力ゆえ発動に多大なマナを必要とし、扱える人間は多くはない。
 蒸気の竜巻はさらに勢いを増し、チョンチョン達の悲鳴すらを巻き込みながら全てを砕いていく。
 数分後、竜巻は姿を消し、チョンチョン達は蒸気の熱と竜巻のダメージで粉々に引きちぎられていた。
 その肉片は蒸気によっていい具合に蒸しあがっていた。
「マジっすか……」
トウマが唖然とした様子で言葉を漏らすのが聞こえた。
 タイガも開いた口がふさがらないでいた。
 こんなダイナミックな魔法を目にする機会など、普通に生活していればまずない。
 修行のために各地を回っていたレツでさえこんな上級魔法を目にしたのは、数えるほどでしかないのだ。
「んじゃ、チップいただくニャ」
ホールの敵が全滅をしたのを確認したチーコはレツに右手を差し出した。
 チョンチョン達を全滅させたチーコの魔法にあっけに取られていたレツは、慌てて小切手に値段をかいてチーコに渡した。
 チーコはその小切手を大事そうにリュックのポケットにしまう。
「こ、今度からチーコ怒らせるのはやめとこ……」
タイガが上ずった声で呟いたのが聞こえた。
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