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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その3【トウマ登場!!】 □

俺は世界を……【トウマ登場!!・そのその4】

 暗いくらい闇の底。
 幾多の影が蠢く深淵の混沌。
 その中央に11体の影が円卓を囲むように座っていた。
 その他の影はその11体を恐れるように一定の距離を取って浮遊している。
「グライドルに続き、グリフィスまでもが敗れるとは……」 
最も小さな影が憂うように呟く。
 そのシルエットは人間の老人のようにも見える。
「人間ごときに遅れを取るとはな。奴等らしい最期ではないか」
隣に座っていた細身の長身が見下した口調で呟く。
「だが、この短期間に二人の魔将を失うことは今までにないことだ」
「なら、勇者どもが徒党を組んで動いてるんじゃねーのか?」
老人の影に対面に座っていた、巨大な剣を担いだ影が口を出す。
「報告によれば、勇者の多くはそのとき半数近くが水の国の近くにいた。実質あの二人を相手できたのは一人、多くて二人の勇者だろう」
学者風の影がレジュメを片手に説明をする。
「お、おで、勇者5人相手にして、さ、三人ぶっ潰したど!!」
最も『体積が大きい』影が興奮気味に机に乗り出す。
 それを学者風の影が手で遮る。
「お前は勇者を簡単に潰しすぎだ。……そんなことより、たった一人の勇者が13魔将の二人を短期間に倒すとは考えにくい」
「つまり、何らかのイレギュラーが発生したと?」
「ええ。勇者側のイレギュラーなのか、第三者によるイレギュラーなのかはわかりませんが」
老人の問いに、学者の影が答える。
 学者の返答に、円卓の間にざわめきが起こる。
 だが、老人の影が右手を上げるとすぐさまに静寂がその場を支配した。
「イレギュラーか……ゲイザム、エルザム」
老人はそういって、円卓に腰掛ける一対の影を指差した。
 老人の問いに答えて、二体の影が腰を上げる。
 すると、影が身体から離れ、二体の蒼と紅の人型の魔物が現れた。
 身体の色こそ違えど、その体つきや顔立ちは瓜二つと言えるほどにそっくりだった。
 まるで双子である。
「そなたら二人はグリフィスが倒された地へ赴き、イレギュラーの情報を集めよ。相手は二人の魔将を葬った奴だ、発見しても不用意な交戦は避け調査に専念せよ」
「了解いたしました」
蒼い魔物が恭しく頭を下げ、老人の影に敬礼をする。
「我ら兄弟の前にはイレギュラーなど無力。グリフィスとグライドルの無念、イレギュラーごと周囲の勇者を屠ることで晴らそうぞ」
蒼の魔物とは対照的に、紅の魔物は雄雄しく右の拳を挙げ高らかに宣言した。


 拭き荒む木枯し、眼下には街の灯がが広がる。
 一人の男が黒いマントに身をまとい、山道を登っていた。
 フードからわずかに見え隠れする赤い髪、紅の剣。その男はミカエルだった。
 その足取りは速く、一点を目指している。
 山道が通行止めにされ、なおかつ夜であるため山道にはミカエル以外の人間の姿はない。
 それでもミカエルは慎重に顔を隠しながら山道を歩いていった。
 10分ほど歩いたところで、ミカエルは急に道からそれた岩場に足を踏み入れた。
 そこは通常なら誰も立ち入らないような、急なところである。
 半ば崖と化しているところをミカエルは足場から足場で跳躍しながら上へと上っていく。
 崖の頂上へと上ると、そこには小さな花々が風に吹かれ揺れている。
 その中央の泉の上に、一人の少女が金色の髪をなびかせながら佇んでいた。
 少女は泉の水に沈むことく、泉の上に漂っている状態だった。
 時折彼女の足が泉に触れるたびに、泉に波紋が起こる。
 彼女こそ、グリフィスを文字通り圧倒したあの少女だった。
 その傍らには紅の身体のエイが彼女を包むように寄り添っている。
 ミカエルは彼女の元へとゆっくりと歩み始めた。
 少女もミカエルを一瞬見ただけで、警戒する様子もなく視線を夜空に移す。
「13魔将の一人が倒されたという噂を耳にして、この地方を訪れたのだが」
ミカエルはそう言ってフードを外した。
「やはりお前だったか、エウルディーチェ」
ミカエルが名を呼ぶと、エウルディーチェと呼ばれた少女は悲しげな笑みを彼に見せた。
「ミカエルか……久しいな」
「お前にそう言われるとは思ってもみなかった」
ミカエルもどこか哀しげな笑みを見せると、彼女が佇む泉のほとりで歩みを止めた。
「オルフェウスを探しているのか……」
ミカエルの問いかけに、エウルディーチェは肯定も否定もせず、ただ目を閉じて俯いている。
 だがミカエルにはイエスと伝わったらしく、ミカエルもまた複雑な表情で視線を泉に落とした。
 水面に自分の情けない表情が写る。
「それが……私の存在する理由だ」
エウルディーチェはそう答えると、エイの怪物にそっと頬擦りをする。
 エイの怪物も彼女の愛情表現に答え、クーンと鳴いて彼女を包み込む。
「オルフェウスに繋がる何かを見つけるためには、私は手段を問うつもりはない」
「まだあの時に囚われているのだな。私も……お前も」
「否定はしない」
二人の間に沈黙が流れる。
「クジャタの神殿にいけ」
沈黙を切り裂いたのはミカエルの言葉だった。
「クジャタの神殿に?」
「あそこにオルフェウスが使っていた『アレ』が安置してある。何かの手がかりになるはずだ」
「感謝する」
ミカエルの情報に、エウルディーチェは再び笑顔を見せた。
 その笑顔は悲しみに曇っていない、純粋な笑顔だった。
 だが、その笑顔はすぐに消えた。
 突如、星空を漆黒で包むように降り立った黒い影。
 月明かりが二人を照らす。
 そこに照らし出されたのは、赤と蒼の双子の魔物であった。
「みつけたぞ」
赤い魔物が高圧的な口調で言い放つ。
 だが、ミカエルもエウルディーチェも全く動じるそぶりをみせない。
「我は13魔将が一人、エルザム」
赤い魔物が自らに親指をつきたて名乗りを上げる。
 その背後で、青い魔物の方は戸惑いを隠せないでいた。
「接触を避けろと命令を受けていたのに……我は13魔将が一人、ゲイザム」
「消えろ。貴様らにもう用はない」
青い魔物の名乗りに、エウルディーチェが不快を顕にする。
 それに連動するようにエイの怪物も二体の魔物に対して威嚇の姿勢をとる。
「貴様がイレギュラーだな?」
エルザムはエウルディーチェを指差し殺意を剥き出しにしている。
「てめぇら人間はな、俺達に従って生きてりゃいいんだよ」
だが、エウルディーチェとミカエルは涼しい顔でエルザムの挑発を聞き流している。
 それをみたエルザムのただでさえ赤い顔がますます赤くなる。
 暴れだしそうなエルザムを制して前に出るゲイザム。
 血の気が多いエルザムに対して、ゲイザムは努めて冷静に振舞っているようだ。
「勇者の代わりに魔物と戦ってるらしいな。悪いが、我々はそういった存在を勇者以上に危険視している。ここで消えてもらう」
「言いたいことはそれだけか」
ゲイザムに言葉を返したのはミカエルだった。
 彼の全身からは神々しいまでの威圧感が発せられていた。
 そのあまりの威圧感に二人の魔物は圧倒され思わず後ろに下がる。
「再会に水を注す輩がいるとはな……。ただで済むと思うな下衆どもが」
ミカエルは一歩一歩二匹の魔物へ詰め寄る。
 エウルディーチェも泉の水面を滑るようにミカエルの後に付く。
 その傍らにはエイの怪物もいる。
「ここまでくると、滑稽を通り越して哀れみすら感じるな。だが、容赦をするつもりはない」
エウルディーチェの言葉に反応するかのように、泉の中から紅蓮のムチが姿を現す。
 彼女がそれを手に取ると、エイの怪物が時の声を上げるかのごとく大きく吼えた。
 ミカエルも、普段とは違う構えで剣を抜いた。
「フォルネウス!!」
彼女の号令と共に、エイの怪物は泉の水を纏いながら高速で回転を始める。
 ミカエルの剣もそれと同時に太陽のような赤い光を放つ。
「な……まさか人間がこれほどの!?」
二人の変化に、さっきまで余裕の表情だったエルザムに焦りがでてくる。
 人間がこれほどの力をといった様子である。
 エルザムの背後で、青い魔物のゲイザムが恐怖に凍り付いていた。
「ちがう、これは……!!」 
ゲイザムが何かを言おうとした瞬間、ミカエルの剣とエウルディーチェのムチが振り下ろされ、二匹の魔物は全てを飲み込む白い光の中に消えていった。
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