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□ 小説本編その3【トウマ登場!!】 □

俺は世界を……【トウマ登場!!・そのその3】

 そのまま食堂で食事を済ましたレツ達はチーコの手配した宿屋へと向かった。
 どうやら金で強引に捻じ込んだ予約らしく、二人部屋と、三人部屋が手配されていた。
 宿屋に入ると、フロントの前に部屋のキャンセル待ちをしている冒険者達でごった返していた。
 その脇をすり抜けて、チーコがチェックインを済ませる。
「部屋割りはどうするニャ?」
チーコが手に二つの鍵をぶら下げて、レツ達に尋ねる。
 勇者は一番豪華な二人部屋で休ませて、とレツが頭を回し始めた時だった。
「俺、トウマとレツにーちゃんと一緒がいいっ!!」
タイガはそう言って、右手を勢いよく挙げた。
 その仕草は、学校で唯一わかる問題に手を挙げた生徒のようにも見える。
 タイガはチーコから三人部屋の鍵を奪うと、一段飛ばしで階段を駆け上がっていく。
「おーい、待てって!!」 
トウマもタイガを追って階段を走って登っていく。
「それじゃ、ミカエルとチーコは二人部屋のほうな」
二人の返事を聞く前に、レツもタイガの後を追う。
 チーコの手配した三人部屋は二階の階段の隣にある部屋だった。
 ドアの前に立った時点で二人が騒ぐ声が漏れて聞こえてくる。
 レツがドアを開けると、暖かな日の光が照らす部屋が目に入った。
 どうやらチーコが街一番のホテルを手配したらしく、レツ自身も興奮を隠せないくらいの内装だった。
 綺麗な壁紙に、並みの宿屋の倍はあるベッド、そして小奇麗な化粧台まである。
 普通に暮らしていてはなかなか泊まれない部屋である。
 こんな部屋に簡単に泊まれるのも勇者の力なのだろう。
「すっげー、フカフカー」
レツがベッドの方に目をやると、真ん中のベッドでタイガとトウマがベッドの上で跳ねて遊んでいた。
 どうも、タイガとトウマの思考パターンは似ているところがあるような気がする。
 だからこそすぐに仲が良くなったのだろう。
「ベッドってもっと硬いもんだと思ってたぜ」
トウマが上機嫌でベッドの感触を楽しんでいる。
 二人ともベッドの感触を十分堪能したのか、レツがトウマの上に乗った状態で寝そべっている。
 レツも試しに同じベッドに腰掛けてみる。
 想像以上に沈むベッドにレツ自身も驚きを隠せなかった。
 あと3歳若かったら、確実に跳ねて遊んでいたと思う。
 それくらいにフカフカで柔らかかった。
「んじゃ、少し早いけど、風呂にすっか」
レツが二人に呼びかけると、二人とも大喜びでベッドから起き上がった。
 宿に着く前にチーコからここには大浴場があると聞かされていた。
 せっかく早めに宿に入ったのだからゆっくり風呂に入ってゆっくりしたかったのだ。
 これからの旅、いつ休めるかわからない、休めるうちに休んでおきたかった。
 というのは建前で、レツ自身がホテルの大浴場がどんなものか見てみたかったのだ。
 タイガとレツを連れ、レツは大浴場へと向かった。
 宿泊客専用という暖簾をくぐり、脱衣所へと入る。
 整然と並んだ木製のロッカーと、浴場への入り口のガラス張りのドアが目に入る。
 流石に宿泊客専用とあって、フロントの喧騒がウソのように人は少なかった。 
 レツは手近なロッカーを開けると、着ていたシャツを一気に脱いだ。
 隣ではタイガが服を脱ぎ散らかしてパンツ一枚になっていた。
 レツはやれやれといった様子でタイガが脱いだ服を籠に放り込む。
 久々のしっかりした風呂に浮かれ気分で、ハーフパンツとトランクスも一気に脱いでしまう。
 そしてタオルで前を隠して、大浴場の扉を開く。
「いっちばんのりー!!」
レツが足を踏み入れる前に脇をすり抜けてタイガが素っ裸で浴場へ突進する。
 勇者の武器は紐で首にかけられていた。
 少し遅れてトウマもタオル片手に入ってくる。
「風呂に入るのは身体洗ってからだ」
レツはタイガの肩を掴むと、洗い場の方へ引きずっていく。
 ふとレツは浴場のほうへ目をやる。そこには20人くらいが入っても余裕がありそうな風呂に湯が張られている。
 なるほど二人が飛び込もうとしたのも頷けた。
「ここの風呂って、世界中でも五本の指に入る大きさらしいぜ」
鏡の前に腰掛け、トウマがかけ湯を身体にかけながらレツをタイガに説明をする。
 さすがはナビゲーター、そういうことの知識は豊富のようだ。
 トウマの身体は自分やタイガほどではないがそれなりに鍛えられ、しなやかな作りをしていた。
 この歳でナビゲーターとして働いているのだから、当然といえば当然だ。
 レツ達は身体を手早く洗うと、3人揃って湯船に飛び込んだ。
 川で泳ぐように風呂で泳いでいると、自分が勇者と旅をしている認識が薄くなってくる。
「そーいやさ、レツのあんちゃん」 
トウマが風呂場の縁に腰掛けてレツに声をかける。
「なんでパラディアなんかに行くわけ?」
「あぁ」
トウマの問いかけに、レツは湯につかりながら答えた。
「パラディアで武器の管理人と合流する予定なんだよ」
「パラディアで?十字騎士でも管理人にするわけ?」
トウマは興味津々な様子で、レツの隣に寄り添う。
 どうやら騎士に興味があるらしい。
 レツも小さい頃は騎士にあこがれていた。そういう男の子は消して少なくない。
「そうだぜ。ここだけの話な……俺の幼馴染なんだ」
「マジで!?」
レツがそっと耳打ちすると、トウマがレツも驚くような声で叫んだ。
 トウマが叫んだ声がエコーで何倍にも増幅される。
 トウマが驚くのも無理はない。
 十字騎士とは騎士の中でも特に選ばれたエリートで、剣術、体力、光の術、性格、全てにおいて一級と認定された者のみが任命される騎士の中の騎士なのである。
 勇者が魔物と戦う『剣』なら、十字騎士は教団や街を守る『盾』のような存在なのである。
「俺もそう聞かされたとき、マジでビビったからなぁ。カイルって名前なんだけどさ、よくビービーなくもんで泣き虫カイルって皆にいじめられてたんだ」
「俺のダチにもドジな奴いるなぁ」
「よく一緒に遊んでたんだけど、カイルの母親が死んで、親戚いなかったからそのまま教団系の孤児院に引き取られてそれっきりさ」
レツは懐かしげに語ると、口の辺りまで身体を湯に沈めた。
 不意に誰かが背中にしがみ付いてくる。振り返るとそれはタイガだった。
 さっきまで楽しそうに風呂で泳いでいたのに、今は不安げな表情でレツの背中にくっついている。
「いいなぁ、友達……」
タイガがポツリと呟いた。どうやさっきの会話を聞いていたらしい。
 それもひどく寂しげに。
「タイガも勇者の友達とかいないのか?」
トウマが尋ねるとタイガはフルフルと首を振った。
「俺、俺以外の勇者のことなんてしらねーし。勇者にそんなものいらねーって言われたし」
そういうと、タイガのしがみ付く腕の力がさらに強くなる。
 ペンダントのようにぶら下げている勇者の武器がタイガの胸に押されて背中に食い込んでくるのが痛い。
 けれど、タイガはそんなことお構い無しにしがみ付いてくる。
 タイガの方も痛いはずなのに。
「じゃあ、俺が友達だな」
レツはそういうと、タイガの手をそっと握ってやる。
 それで安心したのか、しがみ付く手が少しだけ緩む。
「んじゃ、俺も友達ってことで」
そう言って、トウマがタイガの頭をグシャグシャに撫ぜる。
 ふっとタイガの身体がレツからはなれる、振り向くとタイガがトウマの頭を撫ぜ返していた。
 そのまま水中プロレスに発展する二人。
 楽しげにトウマと遊ぶ姿が、レツに名前を貰ってはしゃぐ姿とダブる。
 たとえ何も持っていなかったとしても、これから一個ずつ手に入れていけばいい。
 レツはそう決意すると、二人のプロレスに乱入した。
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