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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その3【トウマ登場!!】 □

俺は世界を……【トウマ登場!!・そのその2】

 そんなこんなで入ったのは、このあたりで一番大きな食堂だった。
 ここもさまざまな人でごった返していて、その隙間をウェイトレスが縫うようにして料理を運んでくる。
 いたるところから料理はまだかというクレームの声が上がっている。
 レツ達も注文をしてから、かれこれ30分近く待たされていた。
「腹減ったぁ……」
テーブルにへばりつくタイガがか細い声で呟く。
 その目は虚ろで、今にも天に召されそうな勢いである。
 これでも朝は3人分の食事を平らげている筈なのだが。タイガの歳が一番食べる年齢ではあるから、仕方ないといえば仕方ない。
 レツも2.5人前食べたことはあえて触れないでおく。
「お待たせしましたー!!」
汗だくのウェイトレスがカートに料理を載せてやってきた。
 その料理の数々に周囲に座っていた人たちから驚きの声があがる。
 スープに、パスタ、ピラフにステーキ、鳥の丸焼きにポテトサラダ。どう見ても6、7人前はある。
 もっとも、これを今から二人で平らげるのだが。
 ミカエルとチーコの分はまた後でオーダーすればいい。
 勇者の従者には特別な小切手が渡されている。それを切れば、代金は全て教団もちになるという優れものだ。
 なので、どれだけ何を食べようが、どこに泊まろうが全く気にしなくていいわけである。
「おおおおおおおおおおおおお!!食い物!!」
数々の料理を前にして、少し前まで死んだ魚のような目をしていたタイガの瞳に輝きが戻る。
 タイガはスプーンとフォークを両手に携えると、どの料理から食べようかと目をキョロキョロさせている。
 まるでお預けを喰らった子犬のように見える。
「それじゃあ、いただきます」
「いっただきまぁーすっっ!!」
レツの合掌を合図にして、タイガが真っ先にピラフに飛びつく。
 小分けの皿を使わずに、直接スプーンで食べる豪快っぷりだ。
 だが、レツはあえて注意しなかった。自分も似たような食べ方でチキンスープを飲んでいるからである。
 ピラフとスープをものの数分で平らげた二人に周囲から再び驚きの声があがった。
 あっけに取られたウェイトレスが落とした皿がガチャンと音を立てて割れた。
 そんな二人に近づく、一つの人影があった。
 他の客には目もくれず、レツとタイガのもとへ向かう人影。
「よ、おにーさん」
その人影はレツの肩を軽く叩く。
 年齢はタイガと変わりないくらいだろうか、短い黒髪に黒い瞳。
 ぴっちりとした黒いノンスリーブのシャツの上にベスト、迷彩ズボンを見にまとっていた。
「歩くシャム猫が言ってるの聞いたんだけどさぁ、俺をナビゲーターに雇わない?」
レツは炒飯を食べながら、視線だけを少年に向けた。
 百歩譲って格好だけはナビゲーターに見えなくもないが、その幼さを拭いきれない雰囲気はどうみてもただの子供である。
 レンジャーというより、レンジャーの格好をしてなりきっている子供と言った方がしっくりくる感じだ。
「……ガキは宿題やって寝てろ」
「そんなこといわないでさー、おにーさん達勇者の一行なんだろ?」
少年の勇者と言う言葉に、レツのスプーンを動かす手が止まる。
 タイガも同じようにかぶり付いていた鳥の足を皿に置いた。
「……どこでそれを?」
レツが尋ねると、少年は待ってましたといわんばかりに自分に親指を付きたてた。
「そのシャム猫がナビゲーターの紹介所の窓口で『金に糸目はつけないから、勇者一行に見合うだけのナビゲーターを手配するニャ!!』って力んでるのを聞いててさ」
「あのバカ猫……」
レツは深いため息をついた。
「なぁ、頼むよ!!俺、経験は浅いけど、ちゃんと案内の仕事できるしさ。俺、勇者に協力するのがずっと夢だったんだ。こんな田舎町に勇者がくるなんて10年に一度あるかないかなんだよ」
「あのなぁ、俺達だって道楽で旅やってるわけじゃねーんだよ。ほっときゃそのシャム猫がお前より腕のいいナビゲーターを連れてくる。そんなに勇者にくっついていきたきゃ、10年後までに一人前になっとくこったな」
自分の言葉で少年は引き下がるだろう、レツは内心そう思っていた。
 だが少年はしょげるどころか、不敵な笑みを浮かべ、いっそう自身ありげに構えているではないか。
「ふっふっふ、それはどーかなぁ」
「悔しいが、その少年の言うとおりニャ……」
少年に同意したのはチーコの声だった。
 気づくと、少年の後ろにチーコとミカエルが立っている。
 二人ともどこか暗い表情である。
「今、この村にいるナビゲーターはこの少年だけニャ」
「だろ?」
チーコの言葉に後押しされて、少年が自慢げに胸を叩く。
「一週間前に登山道で落盤事故が起き、パラディアとの道が遮断された。おまけにこの村にいたナビゲーターは殆どがパラディア側に出払っていたらしい」
ミカエルが付け加える。
 どうやら少年が妙に自信ありげに振舞っていたのはこのことがあったらしい。
 不自然に人でごったがえしていたのにもこれなら合点がいく。
「ってことは、今こっち側にいるナビゲーターは……」
「どう?これで俺を雇う気になった?」
少年はそういうと、腕を組んだ。
「ちなみに山を迂回すると2ヶ月はかかるし、登山道が復旧して別のナビゲーターを待ってたら余裕で3ヶ月はかかる」
少年の言葉が一瞬ハッタリかデタラメとも思ったが、ミカエルとチーコの様子だとまんざら嘘でもなさそうである。
 さすがにここで二ヶ月も時間を潰すのは避けたかった。
「登山道が使えないなら、お前だってダメじゃねーか?」
レツの言葉に、少年はチッチッと人差し指を振った。
 我に秘策アリ、といいたげな雰囲気である。
「実は俺、今の登山道が使われる前の旧道知ってるんだよね」
少年の言葉に、レツ達に衝撃が走った。
「今の話、本当かニャ!?」
チーコが念を押すと、少年はああといってテーブルの上に地図を広げた。
 地図には山の絵が描かれており、一本は赤い線、一本は青い線が引かれていた。
 赤い線は比較的緩やかな尾根を伝っていくコース、もう一本は険しい場所を通っている上に、中腹あたりにある黒い穴で止まっていた。
「赤い線が現在不通の登山道。青い方が旧道。旧道は今じゃ誰も使ってないから獣道同然になってる。おまけに途中で鍾乳洞を通らなきゃいけないんだ。ひょっとしたら魔物もいるかもしれない」
テキパキと説明する少年。
 こいつ意外にできるかもしれない、レツの中で少年に対する評価が変わりつつあった。
「旧道を通ると、どれくらいで向こう側につく?」
「俺なら1日でやってみせる。いっとくけど、案内なしで行ったら120%遭難するぜ」
ミカエルの問いに、少年はニヤリと笑って断言した。
「それじゃ、お願いっすっかな……」
「よっしゃ!!そうこなくっちゃ!!」
レツに正式に依頼を受け、飛び上がって喜ぶ少年。
 地図を説明していた時の聡明な雰囲気はどこかに消え、今はただのお調子者の少年になっていた。
「俺、トウマ・シングウジ。よろしくなっ!!」
トウマがそういって手を差し伸べたのは、タイガだった。
 同年代だから友達にでもなりたかったのだろうか。
 話についていけなかったのか、再び食事を再開しようとしたタイガはぽかんとしてトウマを見上げている。
「お前、勇者なんだろ?名前は?」
名前は?そういった瞬間、タイガの表情が一気に明るくなった。
 まるで何かを待っていたかのようだった。
「俺、タイガ・ランページ!!よろしくな!!」
そう言ってタイガはニカッっと笑って自分の名前を名乗り、トウマの手を握った。
 その顔には名前を名乗れた喜びと自信に溢れていた。
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