鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その3【トウマ登場!!】 □

俺は世界を……【トウマ登場!!・そのその1】

 結局、トラシアの街にはタイガの療養のために丸二日滞在することになった。
 チーコの薬と、ミカエルのヒール、そしてレツの看病のおかげで二日目には軽い運動くらいならできるようになっていた。
 三日目の早朝、村長だけに手短な挨拶を済ませたレツ達は修理中の城門を潜り抜けて新たな目的地パラディアへ向かって旅を再開した。
「パラディアの最短ルートは、この先にあるボレアス山脈を越えるルートになるな」
ミカエルがそういって指差す先には、山のてっぺんに雪をかぶった、どうみても標高3000mを超えてそうな山脈が連なっていた。
 レツも小さい頃から山を見て過ごしてきたわけだが、実際に山越えをしたことはなかった。
「あの山を越えるなら『ナビゲーター』がいるよな」
レツの提案に、ミカエルとチーコも異論はないようだった。
 ただ一人、タイガを除いては。
 もっとも、反対というよりはナビゲーターという言葉の意味がわかっていない様子なのであるが。
「なー、なー、なびげーたーって何?」
タイガがそう言ってレツのタンクトップの裾を引っ張る。
「ナビゲーターってのは、簡単に言えば道案内する人のことだな。普通の街道もそうなんだけけど、今からいくボレアス山脈みたいな山道の場合はちゃんと道を知ってる人に案内してもらった方がいいんだ。その案内人をナビゲーターっていうんだ」
「へぇー、レツにーちゃん物知りだなー」
タイガは納得した様子で、鼻高々に説明するレツに憧れの視線を送る。
 俺だってこれぐらいの説明はできるんだと、レツは自慢げだった。
 逆に言えば、これくらいの説明しかできないのだが。
「彼らは世界中の街道、山道を熟知している。チーコのような商人と同時に、勇者の旅には欠かせない人材だ」
ミカエルがレツの説明の補足をする。
 いるからといって格段に旅が楽になるわけではないが、いないと迷った時に命に関わる状態になる。
 それはレツが一人旅をしているときに何度も思い知らされたことであった。
「街が見えてきたニャ」
チーコが小さく見えてきた集落を指差す。
 そんなことを考えているうちに、山のふもとに広がる小さな集落が見えてきた。
 あの町こそ、山越えをする旅人達が支度をする町、通称エントランスタウンだった。
 街の大きさこそトラシアに及ばないものの、訪れる旅人の多さから活気だけならこちらの町に軍配が上がる。
 街に近づいていくごとに旗のようにはためくカラフルな布や、粗末な石造りの家々が目に飛び込んでくる。
 レツ達が街の入り口に足を踏み入れると、値段交渉をする商人と旅人の言い争う声や、荷物を運ぶ男や家畜の声で思わず耳を塞ぎたくなるような状況だった。
 レツはその人の多さに違和感を感じていた。
「妙だな、やけに人が多い」
ミカエルは顎に手をやり、訝しげに周囲を見回した。
 確かにこの街にしてはいささか人の数が多すぎる。街のキャパシティーの限界に近いようだ。
 地面に座り込んでいる旅人や、荷車に乗った商人を見る限り望んで滞在をしているというよりは足止めを喰らっているような様子だ。
「んじゃ、オイラはナビゲーターを手配してくるニャ。皆はどっかで適当に食事でもとっててくれニャ」
チーコはお決まりの肉球ポーズをすると、足取り軽く人ごみの中に消えていく。
「私はこの町の状況の原因を調べてくるとする。二人は食堂の席でも取っておいてくれ」
今度はミカエルがスタスタの人ごみの中に自ら飲み込まれていく。
 ミカエルの後を追おうとしたときには、すでに彼の姿はなかった。
「なー、なー、腹減った」
駄々をこねるように食事をせがむタイガを見下ろし、レツは小さく肩を落とした。
 勇者の従者っていえば聞こえはいいが、要は子供のお守りなんじゃないかと。
 でもそれでもかまわない、同時にレツはそう考えていた。
 あの時できなかったことを今できる喜びが今ここにあるから。
「んじゃ、あそこの店で昼飯にすっか」
レツがそう言って近くの冒険者用の食堂を指差すと、タイガの表情がぱぁっと明るくなる。
 そう、この喜びが味わえるのなら、子供のお守りもけして悪くはない。
 レツはそう思った。
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