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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その4【ふたりめの勇者】 □

俺は世界を……【ふたりめの勇者・その1】

シャンデリアが煌々と部屋を照らす。
 家具や調度品もまるで新品同様のものが並んでいる。
 足首まで沈みそうな赤いカーペットの上に、一人の男があぐらをかいで直に座っていた。
 細かい傷が目立つ軽装の鎧を身に纏い、剣と言うよりマチェットに近い刀を背中に背負っている。
 靴や下に来ているシャツもみすぼらしく、部屋に見合った格好とは言いがたい。
 そんな事などお構いなく、男は酒瓶からウィスキーをグラスに注いでは勢いよく酒を呷っていた。
 ただの傭兵であるこの男が普通に稼いでいてはこんな高級な部屋に泊まれるはずもない。
 そう、彼が勇者の従者でなければこんな部屋に泊まる金は捻出できなかっただろう。
「これだから勇者の従者はやめられねぇ」
男はさらに足元の皿に並べられたチーズのカナッペをつまみ、口に放り込んだ。
 そしてクチャクチャと音を立てて噛み砕くと、それを酒で勢いよく流し込んだ。
 はした金で身体を張って、時には汚れ仕事にまで手を染めていた頃がバカみたいに思えてならない。
 魔物は全て勇者が倒していく。自分は気が向いたときに余った敵を適当に相手していればいいだけ。
 あとは勇者の一行というだけで金がわんさか集まってくる。
 勇者も無口で何考えているかわからない不気味なやつだが、放っておいても何の害もない。
 あとは勇者が死ぬまでこき使えば、社会的地位と何不自由ない生活が待っている。
「ま、あとは13魔将とぶつけて相打ちでも狙えば……」
男がニタニタ笑いながら、グラスに酒を注ごうとしたとき、木製の扉が勢いよく開かれた。
「ねえ、ちょっと!!」
男が飲んでいる部屋に赤髪の女が飛び込んできた。
 ブランド物の服を身に纏い、両耳には宝石の装飾が施されたピアスが輝く。
 スタイルのいい身体からは煌びやかで、それでいて上品な香水の香りが男の鼻をついた。
 格好だけなら、勇者の従者というよりどこかの貴族夫人にも見えなくもない。
 ただ、化粧のセンスや気品は本物に及ぶべくもないが。
「なんだ、騒々しい」
酒の時間を邪魔された男は不機嫌を隠すことなく女に答えた。
 彼にとって今こうして酒を飲んでいる時間が最も幸せなのである。
 相方である彼女だから許しているが、それを邪魔する奴は基本的に半殺しにするのが彼のポリシーである。
「勇者様がまた深夜徘徊にでちゃったのよ」
「はぁ!?」
女の言葉に、男は酔いが一気に吹っ飛んだ。
「だって睡眠薬飲ませたんだろ!?」
「最近あまり効いてなかったっぽいから……」
そういってオロオロする女。
 普段は勝気で好戦的な女なのだが、流石に勇者がからむと取り乱す。
 勇者は自分達の金蔓である。
 いなくなれば今のような生活はできないし、このまま失踪してしまったら勇者が死んだ後の補償もパーである。
「他の勇者もこんな風に深夜徘徊する奴ばっかなのか……!?」
男は頭を掻き毟りながらぼやいた。
 共に旅をするようになって半年たった頃から、勇者に異変が起きた。
 簡単に言えば、睡眠障害、摂食障害がおき始めたのである。
 夜眠らない、食事を食べてすぐに食べ物を吐くなどであった。
 最初は勇者の武器の力を発動させた後だけ起きていた。
 だが、武器の力を解放するたびに次第に普段でも眠れなくなっていた。
 医者から秘密裏に睡眠導入剤を仕入れ、なんとか眠らせることが多かったのだが、それでも眠れない日は今のようにふらりと徘徊に出てしまうのである。
 いつもは夜明け前には戻ってくるし、小さな村の住人なら魔物が出ないか見回りをしていたと言い訳ができる。
 だが、パラディアのような大きな街となると話は別である。
 夜中に子供がうろついていれば、十字騎士団によって補導される恐れがある。
 もし補導でもされようものなら、勇者が死んだ時の査定に響く以前に世間の笑いものになる。
 『勇者補導される』、そんな明日の朝刊の一面を想像した男は頭を抱えたい気分だった。
「とにかく、俺達で探すぞ!!」
「わかったわ!!」
男は酒の瓶に蓋をすると、女と連れ立って部屋の外へと駆け出していった。
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