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□ 小説本編その4【ふたりめの勇者】 □

俺は世界を……【ふたりめの勇者・その2】

 勢いよく夜の街へ繰り出したレツとタイガだが、二人とも裏路地に迷い込んでいた。
 ホテルのロビーで、『こんしぇるじぇ』という人から美味しいレストランの場所を教えてもらったのだが、そのとおりに歩いたらこのザマである。
 いや、もしかしたら道を1、2本間違えたような気もする。
 人の気配などほとんどなく、ショーウィンドウの代わりに左右には木の箱やダンボールが堆く積まれている。
 いるのはゴミを漁っている野良犬だけ。
 誰がどう見てもこんなところにレストランがあるとは思えない。
「ほんとうにこんなところでメシが喰えるのぉ?」
タイガが不安げにレツの顔を見上げる。
 大丈夫だといってやりたかったが、レツにもそんなことわかるはずもなかった。
 すでにホテルに戻れるかどうかさえ怪しいのである。
 無理に笑ってタイガを安心させようとしているが、内心は泣きたい心境だった。
「だ、大丈夫だって。適当に歩いてれば、いつかは大通りにでるだろーし」
レツは空笑いしながらタイガを励ました。
 そして、近くの箱にもたれかかるように手をついた。
 だが、レツが手を突いた箱は彼に押されて、あっさりと崩れ始めたのだ。
 2m近く詰まれた箱の塔は想像以上にバランスが悪かったらしく、レツが手で押したことによって崩れ始めたのだ。
 まるで落石のように頭上に降ってくる木の箱。
 頭に当たればただでは済むまい。
「ちょ、ちょっと!!」
頭上から降ってきた箱に、タイガは避けることもできないでいた。
 このままじゃ箱に潰される。こうなったらタイガだけでも守る、レツは咄嗟にタイガの上に覆いかぶさった。
 レツが一瞬だけ頭上を仰いだ時、白い影が箱と激突し、箱が大きく吹っ飛んでいくのが見えた。
 箱が地面に激突して大きな騒音が周囲に響き渡る。
 幸いにも、レツ達の上には一個の箱も落ちてくることがなかった。
 いや、あの白い影が自分に落ちてきた箱を蹴り飛ばしてくれたおかげだろう。
「レツ兄ちゃん、あれ!!」 
レツの下からタイガが指を指す。
 タイガの指差す先、自分達から2mほど離れた位置にいたのは一人のフードつきのジャンパーを羽織った少年だった。
 背を向けているので顔などはわからないが、背格好から推測するにタイガと同じかそれより年上の少年であった。
「ここらへんに置いてある物、結構適当に置いてあるんで触ると危ないスよ」
変声期特有の声でそう言って振り返る少年。
 フードの中から覗いていたのは細く鋭い目。愛想のカケラもない無表情な少年だった。
「あ、ああ、サンキューな」
レツは自分の服とタイガの頭に降りかかった埃を手で払うと、立ち上がって感謝の言葉を述べた。
 少年はレツの言葉に反応することもなく踵を返すと、その場を立ち去ろうとする。
「ちょ、ちょっとタンマ!!」
その少年をタイガが呼び止める。
 少年は立ち止まると、横顔だけをタイガに見せた。
 その視線は大の大人ですら震え上がりそうなほどの眼力を秘めていた。
「何か用スか?」
「あ、あのさっ!!」
その眼力に一瞬気圧されながらもタイガは言葉を続けた。
「この町の人?」
「いえ」
「じゃあ、この街詳しい?」
「まあ、人並みには」
「じゃあさ、じゃあさ」
少し興奮気味にタイガは続ける。
「ここの店案内してくんない?」
タイガはそういって少年に地図を手渡した。
 少年はその地図を凝視しながら、周囲を見渡しながら上下を入れ替えたりしている。
 そしてしばらく地図を眺めた後小さく頷いた。
「ああ、ここか」
少年は納得するとタイガに地図を返した。
「そこなら場所わかりますが、どうします?」
少年の申し出はまさに渡りに船だった。
 これでこの裏通りから脱出することができる。
「じゃあ、お願いできるかな」
「こちらです」
少年はレツ達に背を向けると、曲がり角を曲がって足早に歩いていってしまった。
 レツ達も慌てて後を追うが、少年は足はレツ達が小走りでやっと着いていけるほどの速さだった。
 さっきの蹴りといい、足の速さといい、ただの子供ではないのかも、レツはぼんやりとそんなことを思い始めていた。
「おーい、待てってー!!」
少年の後を必死に追いかけるタイガ。
 性格も雰囲気も何もかもが違う二人。
 それなのに連れ立って歩く二人の姿を見て、少年とタイガの姿が何故か重なって見えていた。
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