鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その11【再会】 □

俺は世界を……【再会・その15】

 今はそんな事に気をとられてる余裕は無かった。
 エルザさんが作ってくれた時間を無駄にする訳にはいかない。
 ズタズタにされた前衛を立て直して、ガオウの出現に備えないと。
「ガレット、お前はイスケとゴウタをこっちに連れてくるんだ」
「はいっ、わかりましたっ!!」
歯切れのいい返事をすると、ガレットはイスケとゴウタが倒れる血の海へと向かっていった。
 勇者であるガレットの力なら二人を担いでこっちまで走ってくる事ぐらい簡単なはずだ。
 俺はタイガ達のほうの救出へ向かわなくちゃいけなかった。
 こっちは怪我が少ない分、かなり厄介な状況になっていた。
「離せ、オレはこの犬ッころのケツの穴を串刺しにしてやらねぇと気がすまねぇんだよ!!テメーも負け犬のままでいいのかよ!!」
「ちょっと、落ち着いてよ、ライトォ!!」
「うるせぇ、オレはテメェと違って非力なんかじゃねぇんだよ!!オレは、オレは……!!」
炎の手に押しつぶされたガオウに向かって斬りかからんとするライトに、それを羽交い絞めにして止めるタイガ。
 タイガが正気に戻って、ライトを押さえてくれてたのは正直救いだった。
 イサムは気絶したまま箱の中から出てこねーし、こんな状況でタイガとライトを同時に止める自信は正直ない。
 下手に攻撃してガオウを拘束している魔法が破られる……なんて状況になったら一気に全滅する恐れだってある。
「非力、オレは非力……違う、オレは非力なんかじゃ……オレはリュウトより弱くなんか……リュウトリュウトリュウトリュウト」
突然ライトが意味不明な言葉をつぶやきながら動きを止めた。
 さっきまでの野生の動物のような刃物のような威圧感は消え、初めてであった時の様な空っぽな気配と虚ろな瞳のライトに戻っていた。
 糸の切れた操り人形のようにダランと全身の力が抜け落ちてしまったライトを羽交い絞めにしたままタイガは戸惑っていた。
 突然きれて性格が180度変わったり、そうかと思ったら意味不明な言葉を喋りながら大人しくなったり。
 普通に危ない奴だと思われても仕方ない行動だ。
「リュウトリュウトリュウトリュウトリュウトリュウトリュウトリュウト……あああああああああああああああああああああああああ!!」
タイガを振りほどこうと身をよじりながら突然悲鳴をあげるライト。
 戸惑いながらもタイガもライトを押さえてくれていたが、正直いつライトが振り払うかは時間の問題だった。
 俺も早く手伝わないと……そう思った瞬間、タイガの武器が光を放ち始めたのを俺は見逃さなかった。
「ライト、しっかりしてよ、ライトォ!!」
タイガの叫び声に応える様に、武器の光は強さを増し、タイガとライトを包み込んでいく。
 いつもの冷たささえ感じるような真っ白い光じゃない、例えるならお日様のような暖かい黄色い明かりだった。
 これと同じ光を俺は見たことがあった。
 土の国で嵩山が暴走しかけたときに、それを止めた光の巨人も同じ色の光を放っていた。
 その光が止んだ時、呆然と立ち尽くしているライトと、眼をしっかりと閉じたままライトを羽交い絞めにしているタイガがいた。
「……あれ?」
正気に戻ったらしく、ライトがゆっくりと首を左右に振って周囲の様子を伺う。
 大丈夫と判断したのかタイガはライトから手を放すと、疲れた様子で尻餅をついた。
「ライト、大丈夫か?」
「ごめんなさい……また迷惑……」
聞き取れないようなか細い声で謝ると、ライトはトボトボとイサムが突っ込んでいった箱の方へと歩いていった。
 何が起きたかサッパリだが、とにかくこれでライトは大丈夫っぽい。
 タイガも疲れてるというより、驚いている感じの方が強い。
 自分でも何をやったのかわかっていないようだった。
 とか言ってる俺もサッパリなんだけどな。
「タイガ、今何やった?」
「何って……ライト押さえながら、おちつけーって思ってただけだよ?」
「それだけ?」
「うん。そしたら、ライトの心が流れ込んできて、チクッってなったから、ワッってやったら、光がパーっと出て、シューッてなって、フワーンって感じがして、ライトが落ち着いた」
返ってきたのは恒例のタイガの効果音だけの説明だった。
 タイガにゃ悪いが、これ以上は聞くだけ無駄だろう……。
 今はライトが正気に戻ってくれただけでもよしとしよう。
「とにかく、ライト止めてくれてありがとな」
「うんっ!!」
俺が手を差し伸べると、タイガは満面の笑みでその手を握って立ち上がった。
 鳩尾にはガオウに付けられた痣が見えたが、本人はそれほどダメージを受けていないようだった。
 後ろではライトが気絶したイサムを木の箱の中から助け出していた。
 こっちはこれで大丈夫か……。
 問題は……不安な気持ちを抱きながら俺はもう一方、ガレットが向かったゴウタとイスケの方を見た。
「イスケ、大丈夫!?」
「お、俺の事はいいから……ゴウタを連れて……」
「ゴウタより君のほうが重症なんだ。だから早く……」
「バカ!!怪我とかそういう問題じゃねぇ……アイツは……」
イスケはそこまで言いかけると、大きく咳き込んで同時に赤黒い血を吐き出した。
 ガレットは無理やりイスケを抱え起こすと、小走りでイレーヌさん達がいる後列に走っていった。
 あの怪我と出血量でよく喋れるな……というかよく生きていられるなというのが素直な感想だった。
 タイガも脇腹を抉られたのに、何だかんだで助かったどころか、数十分後には動けるまでに回復してたしな……。
 イスケも勇者なんだと改めて実感させられた。
 その直後、今まで何の気配も無かった場所に巨大な殺意の塊が生まれたのを感じた。
 一瞬ガオウが出てきたのかと思ったが、ガオウは相変わらず炎の拳に押しつぶされたままだった。
 いや、この気配はガオウのものとは違う。
 以前どっかで……そう、闇の国で感じた純粋で強烈な殺意。
 その正体がわかったと時、俺はやっと周囲に響き渡る不気味な呼吸の音に気がつく事ができた。

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