鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その11【再会】 □

俺は世界を……【再会・その16】

 フッ、フッ、フッ、フッ……。
 浅い呼吸が増すたびにビリビリと殺意が肌を突き刺す。
 息の数が増えるに連れてその殺意は細い針のように俺の全身の毛穴をピリピリと突っつくように刺激してきた。
 この感覚……覚えがある。
 闇の国で背後からゴウタに襲われた時……抗う事も考えられず、ただ迫り来る死の恐怖から逃げる事しかできなかった。
 殺される……反射的に体が跳ねたのを今でも覚えている。
 その時感じたのがこの心臓を鷲づかみにされるような殺気だった。
「ヤバイ……始まりやがった……」
ガレットに止血をされながら、イスケがかすれた声でそういったのが聞こえた。
 ヤバイ……一体何が……この殺気の事なのか?
 そうこうしているうちに殺気がドンドン膨れ上がっていくのを感じる。
 俺の硬い髪の毛がビリビリ震える位に。
 恐る恐る目をやると、さっきまで横たわっていたゴウタが何事もなかったかのように立ち上がっていた。
 全身についていたひどい切り傷も既に塞がっていて、赤い血の後がコートに薄っすら残っている程度だった。
「い、一体何がどうなってるんだよ!?」
俺が問いかけても、ガレットもわからないといった様子で首を横に振るだけだった。
「アイツ……キレやがった……」
「え?」
「いいか、アイツが、ゴウタが今着てるコートを脱いだら俺を置いて逃げろ」
「な、なんだよそ……」
「死にたくなかったらそうしろ!!」
イスケは強い口調で俺の言葉を遮ると、上半身を起こした。
「キレるって闇の国で私たちと戦った時みたいに?」
「あんなんキレた内に入るかよ。普段は朴念仁みてぇな奴だが、一度キレたら……周りが何も無くなるまで暴れ続ける」
「……まさにバーサーカーね」
エルザさんが苦笑いをしながらそう答えた。
 ゴウタから発せられる殺意を彼女も感じられるらしい。
 いや……今の奴の気は素人でもビリビリ感じるほどヤバいものに膨れ上がっていた。
「助けてもらってなんだが、アンタ達も早く逃げろ。ゴウタが暴れだしたら、全員巻き込まれるぞ」
「どうにかならねーのかよ!?」
「キレたアイツを力で抑えられるのはリーダーともう一人くらいだ。あとは俺の言葉で落ち着いてくれりゃいいが……キレた理由が理由だからな……」
「理由って……」
「昔は人の血の臭い嗅ぐだけでしょっちゅうキレてたんだ。けど、俺と組むようになって、それじゃ潜入なんてできねぇから苦労してキレないように慣れさせたんだ」
「じゃあ、なんで……」
「町中から漂ってくる血の臭いと……さっきの魔物にボコられたせいで、アイツ自身でも抑えきれないくらいにキレちまったんだろう。こんな状況で戦わせるんじゃなかった。もう二度とキレさせねぇって誓ったのに……」
イスケはそこまで言うと、包帯に巻かれた右手で目を覆い、口元を歪ませた。
 泣きたいのを必至に堪えている様子だった。
 どういう経緯で二人が出会ったのかは知らないが、イスケの悔しさ、やるせなさは痛いくらいに伝わってきた。
「お前はこれからどうするんだよ?」
「ゴウタが落ち着くように声をかけ続ける。もっとも俺も巻き添えになる可能性のほうが高いがな」
「お前何言って……」
「ゴウタがさっきの魔物を倒してくれりゃいいが、そうならなくても深手は避けられないだろう。そんときは……」
「そんときなんてねぇよ!!」
今度は俺がイスケの言葉を遮る番だった。
 イスケの悲劇の主人公っぷりにメチャクチャ腹がたったからだ。
 俺が怒鳴りつけると思ってなかったのか、イスケは鳩が豆鉄砲を食らったときみたいに驚いたまま固まっていた。
「俺が聞きてぇのは、どうすりゃゴウタが落ち着くかだ!!お前の死に方なんか聞くつもりはねぇ!!」
「そんな綺麗事いってる場合か!!ゴウタのバカ力はアンタもよく知ってるだろうが!!いっとくが、マジで暴走したらアレ以上なんだぞ!!」
「だからってな、自分一人で全部抱えて死のうとしてる奴よりはずっと現実的だと思うけどな」
「な!?」
「何でもかんでも抱え込んで死ぬつもりなら、お前勇者と同じだぞ。それが嫌で勇者辞めたんだろ?」
俺の言葉が痛いところをついたのか、イスケの顔がカァッと赤くなった。
 言い返す言葉がないのかコイみたいに口をパクパクしているが、何も言葉が出てこないみたいだった。
「今は俺たちもお前の仲間なんだ。こんだけ人がいりゃ、何か方法があるだろ?お前、俺より頭いいんだから、そんな事ぐらい気づけよ」
「でも……」
イスケはそこから先が言えないでいた。
「説得中、悪いんだけど……本気であのガオウとかいう魔物を倒すつもりなら、あの逆毛クンの力の力を借りないと厳しいわよ?」
会話に割り込んできたのはエルザさんだった。
 彼女も闇の国でゴウタの怪力を目の当たりにした一人だったのを思い出した。
「これから私とイレーヌは次の展開に向けて準備に入るわ」
「次の展開?」
「ガオウが私達の拘束の魔法を破って姿を現した時よ。奴が起きた時に攻撃を重ねて再び動きを封じつつ、奴の体力を削ってハメ殺す算段なんだけどね。その時にあの逆毛クンに暴れられると面倒なのよ」
「まあ、確かに……」
「逆に彼を戦力に加えられれば、その火力で一気に決着を付けるプランに移行する事も可能になる。そうすれば時間をかけてハメ殺しをする必要もなくなる。それじゃ、私達は準備に入るから、それまでに何とかしておいてね?」
エルザさんは一方的にそういい残すと、イレーヌさんを連れて駆け出していった。
 二人はガオウの周囲で立ち止まっては、呪文を唱えて何かを仕込んでいるようだった。
 赤い球や光の球、目を細めてみないと見えないような光の糸が至る所に張り巡らされ、風が渦巻く円盤のようなものが地面に垂直に何枚も立てられていた。
 慌しい様子で二人はいたるところにそれらを配置していた。
 それぞれが強力な魔法だとしたら、ガオウの動きを抑えるのも難しくなさそうな様子だ。
「ま、諦めろ。既にお前等は仲間ってことで事が進んでるんだよ」
「……」
「んじゃ、俺たちは俺達ができる仕事をしようぜ?」
「……闇の国でタイガが言ってた言葉の意味わかった気がするぜ」
「あ?」
「俺は勇者でも幸せだって……な」
イスケはそう言うと、恥ずかしそうにはにかんで見せた。
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