鎌使いの文章倉庫

□ スポンサー広告 □

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


* 「スポンサー広告」目次へ戻る
*    *    *

Information

□ 小説本編その11【再会】 □

俺は世界を……【再会・その17】

「で、どーすりゃいいんだ?」
俺の問いかけに、イスケは脱力したように肩を落とした。
 俺、何か変なこといったっけか?
「あんだけ偉そうに説教しておいて何も策無しかよ!!……まぁこんだけメンツが揃ってりゃ、対処法が無い訳じゃない」
「さっすがイスケ様、俺の知ってる人の中でエルザさんの次に切れ者だけあるぜ」
「そういうときはお世辞でも一番っていいやがれ。二手に分かれて、片方はゴウタを抑える。もう片方は鏡を見つけてきてくれねぇか」
「鏡ぃ!?なんでまたそんなものを用意するんだよ?」
「理由は見つけてきてから……」
イスケがそこまで言いかけたときだった。

ドッゴウラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

叫び、いや衝撃に近い怒号が俺の鼓膜をビリビリと振るわせた。
 魔物でもこんな声を聞いた事はない。
 怒りと闘気、それにむき出しの殺意が乗った声。
 雑魚の魔物だったらこの声を聞いただけで間違いなく逃げ出すだろう。
 俺だって森の中で怒声を聞かされたらすぐに物陰に隠れて、その場から逃げ出す算段を始めているはずだ。
 こんな声を俺と同じ人間が発する事ができるなんてすぐには信じられなかった。
 でも、現実に声だけでそれだけの威圧感を発する事ができる奴が目の前にいる。
「ゴウタが……動き出す!!」
イスケがかすかに声を震わせながらそう告げた。
 ゴウタは天に向かって吼えると、自らを覆っているコートを毟り取ると、地面に投げ捨てる。
 一着のコートが風に舞いながら地面に落ちる、そんな光景を俺は想像していた。
 けど、実際は違っていた。

ズゴォ!!

 コートは風なんかないように一直線に地面に吸いつけられると、衣服の類が起こすはずのない鈍い音を立てて石畳を少しめり込ませて地面に着地した。
 重たい……なんてものじゃない。
 音からしてとんでもない重さだってことはわかった。
 地面に投げ捨てただけで石畳が凹むような重さのコートなんて人間が着られるようなものじゃない。
 っていうか、ゴウタは闇の国でそんなとんでもない重さのコートを着て俺と戦ってたってのか!?
「おい、なんだありゃ!?石畳が思いっきりめり込んだぞ!!なんてモノ着せてるんだお前!?」
俺は石畳を歪ませた張本人を指差しながらイスケを問い詰めた。
「ありゃ、ゴウタ専用の対魔法コート……AM合金を糸のような細さに伸ばして、それを織り込んだものだ」
「AM合金って魔法が効かなくなるっていう金属の?」
「ああ。普通は俺のインナーみてぇに衣服の糸の中に編みこんで使う程度なんだがな……奴のは全部AM合金製だ」
AM合金……雷の国でベガ達が使っていた、魔法を無効化する特殊な金属のことだ。
 闇の国でイスケ達と戦った時、魔法の直撃を食らっても無事だったのは、二人が勇者だったからだけじゃなかったってことだ。
「いくら繊維状にして軽量化してるつっても、ギッチリ編みこんでるから、ぶ厚い鉄板入れたコートと大差ないくらいの重さになってるはずだ」
「そんなものどこで……」
「この戦いが終わってお互い生きてたら話してやる。とにかくできるだけ早く鏡見つけて来い」
「なんで鏡が必要なんだよ?俺たち全員で押さえつけりゃいくらなんでも……」
「闇の国でアイツの馬鹿力とスピードを見ただろうが。あのクソ重いコートを着てアレだぞ?それを脱いだってことはどういうことかアンタだってわかるだろ」
イスケの言わんとした言葉の意味がすぐに理解できた。
 コートを脱ぎ捨てたゴウタは丈の短いタンクトップにスパッツという軽装だった。
 だが、そのおかげで奴の筋肉の鎧が嫌でも目に飛び込んできた。
 何食べて、どんな鍛え方すりゃあんな体格になれるんだよ……俺は絶句して何も言えなかった。
 勇者の従者になる過程でいろんな奴と闘ったが、岩みてーに膨れ上がったゴツゴツした筋肉を見るのは初めてだった。
 あんな筋肉じゃなきゃ、あのコートを着て戦うなんてことできるはずがない。
 逆に言えばゴウタが着ていたコートは魔法から身を守る防具であると同時に、ゴウタのスピードとパワーを押さえる枷にもなっていた訳だ。
 それを脱いだってことはつまり、闇の国で戦った時以上のパワーとスピードで襲い掛かってくるってことになる。
 俺もタイガもどっちかっていうと、パワーよりもスピードで相手をかき回すタイプだ。
 ゴウタと力勝負をしたら簡単にねじ伏せられてアウトだ。
 ガレットも常人よりは身体能力が高いってだけで、勇者の中じゃそんなにパワーもスピードもあるほうじゃない。
 イサムやライトは勇者の力は使えないみたいだし、イスケは見ての通りの重傷なわけで。
 エルザさんやイレーヌさんは対ガオウ用の準備に専念していて終わる気配はない。
 つまるところ、今ここに居るメンツでゴウタと一対一でぶつかって押さえ込む事ができる人は誰もいない。
 チーコかカッツでもいればちょっと変わってたかもしれないが、いないメンバーの事を言っても仕方がない。
「まともにやりやったら……最悪死人が出るかもな。とにかく鏡を用意すりゃいいんだな?」
「ああ。顔が映る程度の手鏡でいい。鏡がなかったら、鏡みたいに磨かれた金属でもいい」
「んじゃあ、鏡は……イサムとライトで見つけてきてくれ」
俺が頼むと、イサムとライトは小さく一回頷くと近くの建物へと駆け出していった。
 あの2人なら雑魚の魔物相手に後れを取ることなく、鏡を探せるだろう。
 イサムの動きじゃゴウタに対抗するのは厳しいだろうし、ライトはさっきみたいにブチ切れた途端におかしくなっちまう可能性がある。
 俺ですら自分のみが守れるか危ういのに、この二人をフォローしながらゴウタを止めるのは厳しいというのも理由の一つだった。
「ガレット……お前の盾期待してるぜ」
「はいっ!!絶対に止めて見せますっ!!」
俺の隣でガレットが気合の入った声を上げた。
 パンッと両手で自分の頬を叩くと、気合の入った表情で俺が叩き込んだ流水の構えをとった。
 ガレットには攻撃力はないが、気合の鉄壁がある。ゴウタの動きを封じるチャンスを作るには最適な技だ。
 俺の考えでは、この面子の中で一番頼りになる筈だ。
 気合の鉄壁で抑えきれなくても、俺との合体技がある。
 いくらゴウタが馬鹿力でもあの技は簡単には破れないはずだ。
「そういうお前は大丈夫なのか?お前も鏡を探す方に……」
「寝言は寝て言いやがれ。鍛え方が違うっつーの」
イスケは憎たらしく吐き捨てると、腰に下げた皮袋の封を開けると、そこから何かを取り出した。
 それは白銀に輝く武器……鎖鎌だった。
 恐らくこれがイスケの勇者の武器なのだろう。
 闇の国じゃ忍術と体術だけで襲い掛かってきたからな……意外にもアイツの武器は始めてお目にかかるものだった。
 そんな訳でその武器の能力も全くの未知数だった。
「いくらブチ切れたアイツでも、何の躊躇なしに俺を殴り殺さねぇ……と思いたいがな」
イスケはそう言うと、勇者の武器を構えてゴウタと向き合った。
 その気配に気付いたのか、ゴウタがぬらりとイスケのほうを向いた。
 白目をむいたその顔からは理性というものは消えうせていた。
 闇の国で俺と戦ったときのゴウタはむき出しの殺意を放っていたが、少なくとも人間の理性のようなものは感じられた。
 だが、今の奴には理性のかけらすら感じられず、純粋な破壊の衝動だけがビリビリ伝わってきた。
「来るぞ!!」
イスケが何かを察知して叫ぶ。
 次の瞬間、ゴウタが大砲の弾のように地面を震わせながらこっちに向かって突っ込んでくる。
 俺は覚悟を決めてゴウタを迎え撃つために構えをとった。

スポンサーサイト


* 「小説本編その11【再会】」目次へ戻る
*    *    *

Information


+
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。