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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その4【ふたりめの勇者】 □

俺は世界を……【ふたりめの勇者・その5】

 翌日タイガとレツは二人で十字騎士団の本部へと向かった。
 トウマは病み上がりということで部屋で安静にしておいたほうがいいということで、チーコはその日消耗品の仕入れがあるそうで参加できなかった。
 十字騎士団とはパラディアを中心に、魔物から教団や人々を守る選ばれた騎士のことを指す。
 勇者とその従者とは異なり、積極的な討伐はあまりおこなわず街の専守防衛と治安維持が主な任務である。
 とはいえ街の最終防衛線を任された者たちであり、全てにおいて秀でたもののみが任命される職なのである。
 大半は幼少から徹底的な英才教育を受け、ゆくゆくは騎士団そのものの上級職に名を連ねることになる名門なのである。
 最も、レツがそんなことを知るはずもなく、ただ偉い騎士程度の認識しかなかったりするわけだが。
 十字騎士団の本部はパラディアの街の中央に存在する、荘厳な作りの聖堂だった。
 窓には立派なステンドグラスがはめ込まれ、いたるところに細かな彫像や装飾が施されている。
 門の前には右手に槍を持ち、純白の鎧を身に纏った騎士が二人、入り口の警護に当たっている。
 胸の甲冑に輝くのは金色の十字架、エリートの証だ。
 レツとタイガが聖堂に足を踏み入れようとすると、案の定手にした槍で二人の進路を塞いできた。
「ここは十字騎士団の敷地だ。早々に立ち去られよ」
頭二つ分くらい上から、大男が見下ろしながらそう言った。
 ここは貴様らのような小汚い小僧が来る場所ではない、とでもいいたげな目だ。
 たしかに生まれも教養もない自分が本来着ていい場所ではない。
 だが、今は違う。
「こちらは勇者、俺は勇者の従者だ。騎士団に用がある」
レツは高圧的な二人の門番に、タイガの武器と、レツが従者に任命された時に渡されたエンブレムを見せた。
 この二つは紛れもない、二人が勇者と従者である証。
 さっきまで汚物を見るような態度だった二人の態度が急に改まる。
「こ、これは失礼しました」
跪き、レツ達に道を譲る門番。
 騎士、特に家柄がいい出身の騎士の中にはそうでないものを見下している者が多い。
 十字騎士ともなるとその傾向は普通の騎士に比べて強い。
 レツも十字騎士の高慢な態度に煮え湯を飲まされるような思いをしたことは一度や二度ではない。
 そんな連中を従えさせたような気がして、レツは気分が良かった。
「いくぜ、タイガ」
「おう」
タイガは胸を張ってタイガと共に聖堂の門をくぐった。
 聖堂の中は予想以上に暗く、それが逆に日の光を通して写るステンドガラスの模様を映えさせていた。
 規則的に並べられた長椅子、そして巨大な祭壇。
 ふしぎな香の煙が辺りを包み、ここが日常とは切り離された空間であることを教えてくれる。
「お待ちしておりました、レツ様」
そう言って祭壇の前から静々と歩いてきたのは、法衣を纏った一人の老人だった。
 法衣の装飾から察するに、この教会を統括する司祭のようだ。
「本日はレツ様以外にも、もう一組勇者様とその従者がここを訪れておりまして。何かとゴタゴタしておりますがお許しください」
「もう一人勇者がいるのか?」
「はい、後々詳しくお話しすることなのですが……」
司祭の言葉を遮るように、足音と数人の大人が話す声がレツ達の近くへ近づいてくるのがわかった。
 司祭も話を止め、声のする方向に恭しく頭を下げた。
 レツ達もその声のする方向を向いた。
 そこにいたのは一人のフードを被った少年と、傭兵の身なりをした男に、妙にこぎれいな格好をした赤髪の女だった。
 その後ろから数人の神官たちがいろいろと話しかけながら金魚の糞のようについてきている。
 静かだった聖堂が急に騒がしくなったのはこのせいだったらしい。
「あれは……?」
「あちらが先ほどお話した、レツ様以外に本日ここを訪れになられた勇者様と、その従者であるグレンギリー様と、武器の管理人であるラフロイズ様です」
頭を上げた司祭が先頭を歩く三人の紹介をする。
 その先頭を歩くフードの少年にレツは見覚えがあった。
 隣にいるタイガもレツと同じことを感じているようだ。
 あの雰囲気、歩き方。少年が近づいてくるごとに、疑惑は確信へと変わっていた。
「タイガ……」
フードの少年もこちらに気づいたらしく、小さな声をあげる。
「カッツ……?」
タイガも信じられないといった様子である。
 二人は少しの間互いに見つめあったまま動けないでいた。
 カッツの後ろにいる従者と管理人は突然歩みを止めた彼に戸惑っている様子だ。
「アンタも勇者の従者か?」
傭兵らしき男がレツに声をかける。
「あ、ああ」
レツが答えると、傭兵らしき男はニッっと笑って手を差し出した。
「俺はコイツの従者をやってるグレンギリーだ。」
レツも手を出すと、グレンギリーはその手を強く握った。
 身長は180cmほどだろうか。体格もがっしりとした、まさに傭兵と呼ぶにふさわしい剣士だ。
「後で司祭から話があるだろうが、明日はお前達と共同で遺跡の魔物掃除だそうだ。よろしく頼むな」
グレンギリーはいきよいよく手を上下に振ると、その手を離す。
「行くぞ」
カッツはフードで顔を隠して、足早に聖堂の外へと歩いていってしまう。
 それを追って小走りで後を追うグレンギリー。
「じゃ、そういうわけで明日はヨロシクねボウヤ」
ラフロイズであろう赤髪の女性はレツに投げキッスをすると、慌てて二人の後を追って聖堂の外へ駆け出していった。
「明日は先ほどの勇者様と共同で雷の国との国境付近にある遺跡の魔物を退治していただきます。その話はまた後で。まずは武器の管理人の紹介をしますので、奥の部屋へ」
そういって祭壇の奥にある部屋に歩き出す司祭。
 レツも後をついて歩こうとするが、タイガがついてきていないことに気づいて足を止めた。
「カッツ……」
カッツが出て行った後もずっと彼が出て行った扉を見つめ続けるタイガ。
 レツも驚いたが、タイガはそれ以上にショックを受けているのだろう。
「タイガ、明日一緒に行動できるんだ。そのとき話そう」
「うん……」
タイガの説得に、タイガはコクリとうなずきレツの下に駆け寄ってくる。
 沈んだ表情のタイガの肩を抱いてやることしか、レツにしてやれることはなかった。
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