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□ 小説本編その4【ふたりめの勇者】 □

俺は世界を……【ふたりめの勇者・その6】

 司祭に案内され、レツとタイガは祭壇の奥の部屋へと案内される。
「それではこれからレツ様のご指定になられた武器の管理人のところへご案内いたします」
「ぶきのかんりにん?」
司祭の言葉にタイガが反応する。
 そういえば、タイガに武器の管理人のことを話していないことを思い出した。
「武器の管理人とは、勇者様がお使いになられている武器を専門に警護する者のことです。勇者様が使われている武器は魔物に対して脅威である故、魔物もそれを狙っております。そのため従者が管理人を任命し、武器を直接守るのでございます」
レツが言葉を練りだすよりも早く、司祭が説明をしてしまう。
 流石は教団の関係者である。
「それと、勇者様が戦いの途中でお亡くなりになられたときにその武器を命に変えても持ち帰る、という使命がございますな」
司祭の言葉を聞いた瞬間、タイガの顔が凍りついた。
 いくらタイガが勇者でも、まだ14、5歳にも満たない子供だ。
 自分が死んだ話を聞けば怯えて当然なのに。
 勇者なら何を言ってもいいといった様子の司祭のデリカシーのなさに、レツは軽い苛立ちすら覚えていた。
「まぁ、俺が管理人頼んだ奴も俺の幼馴染のなかじゃ一番の出世頭だし、絶対に死なせはしねーよ」
「うん……」
タイガはそう返事しながらも、顔は笑っていなかった。
 本人ながらに気休めの言葉でしかないことに気づいているんだろう。
 レツは気休めを言ってやることしかできない自分に嫌気がさした。
 二人は無言のまま、司祭の後をついて歩いた。
「ではこちらで待機しておりますので」
司祭はそういって、簡素な木製の扉を開いた。
 そこは質素な作りの祭壇以外には何もない部屋だった。
 その部屋の中央には白銀の鎧を身に纏い、背中には紅のマントを羽織っている男がいた。
 鞘に収めた剣を床につきたて、その柄に手を添えている。
 その後姿は間違いなく、一人前の十字騎士の姿だった。
「カイル・クレイトー、こちらを向きなさい」
司祭の言葉に従い、カイルと呼ばれた男がレツ達に振り向く。
 170cmを超える身長、短い髪をオールバックにまとめ、威厳に満ちた凛々しい顔つきの青年がそこにいた。
 そう、少なくとも自分の知っているカイルではなかった。
 悪口を言われればすぐに泣き、何をやらせても失敗し、村の子供からいじめられていた泣き虫カイル。
 その面影はすでにそこにはなかった。
「こちらがそなたを武器の管理人に指名したレツ・ランページである」
「はっ」
「これからは互いに力をあわせ、人民と教団のために尽力を尽くすことを期待しておる」
「神の御心のままに」
カイルはそういうと、片膝を突き司祭が差し出した右手の指輪に軽く口づけをする。
 司祭はカイルの頭にその右手をかざした。
「それではお二人募る話もございましょう。では私はこれにて」
司祭はレツに軽く会釈をすると、ゆっくりとした足取りで部屋の外へ出て行く。
 彼がレツ達の背後を通り過ぎ、ドアが閉まる音がするとレツとタイガは大きく息を吐き出した。
 気のよさそうな人なのだが、司祭のような人がいるとどうしても堅苦しい空気になってしまう。
「そういうわけだから、よろしくなカイル」
そういってレツが差し出した手を、カイルは握ることなく立ち上がった。
 そしてきょとんとしているレツを見下ろし、こう言った。
「俺は十字騎士団のカイル・クレイトーだ。そこらへんを考慮して接してもらいたい」
カイルの高圧的で攻撃的な言葉に、レツは一瞬呆気に取られる。
「カ、カイル、どうしたんだよ?」
「俺はもうあの時の俺じゃないんだ」
「んなこといったってカイルはカイルだろ?」
「俺は十字騎士、お前は勇者の従者。互いに成すべきことがある。もう子供じゃない」
カイルはそういうと、手で支えていた剣を腰にかけた。
 普通の人が着たら身動きが取れなくなりそうな鎧を颯爽と着こなしている姿をみるとカイルはもう昔のカイルじゃなくなっているのかもしれない。
 けれど、レツにはどうしてもカイルの姿が昔のカイルと変わらないままでいるような気がしてならなかったのだ。
 身体にも心にも鎧を着て、大人ぶって見せているが中身はあの頃のままのように見えた。
 そう、昔別れたあの時から時間が止まっているかのような。
 それに関しては自分もなのかもしれないが。
「明日夜明けに、パラディアの正門でグレンギリー一行と落ち合う。遅れるなよ」
それだけ言うと、カイルはレツに視線を合わせることなく部屋の外へと出て行ってしまった。
 残されたのは困惑気味のレツとタイガ。
「アイツ、何で怒ってるのかわかるか?」
レツの問いかけにタイガはフルフルと首を横に振った。
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