鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その5【ガオウとの戦い】 □

俺は世界を……【ガオウとの戦い・その1】

 翌朝日が昇る頃、レツ達はパラディアの前の城門に集まっていた。
 二日休んでトウマも完全復活したらしく、鈍った身体を動かしたくてしかたないのか、準備体操に余念がない。
 チーコは昨日は早く寝たはずなのに、もう眠そうである。彼曰く、猫は朝方から眠くなるらしい。
 そんな中でタイガは一人城門の傍にポツンとしゃがみこんでいた。
 本部からホテルに戻ってから、タイガは頭から毛布を被ってずっと塞ぎこんでいた。
 トウマ、チーコと四人で食事を取った時は少し笑顔も見せたが、それ以降はずっとあの調子である。
 今もその表情は重く暗い。話しかければ笑顔で答えるのだが、話し終えるとすぐに表情は重く沈んでしまう。
 昨日のカッツのことと、司祭の話がショックなのだろう。
「ここにきているのはお前達だけか」
白銀の鎧を身に纏ってやってきたのは管理人のカイルだった。
 その格好は昨日と大差ないが、背中には巨大な盾が背負われていた。
 傷一つない、白銀に輝く盾である。あの盾なら、どんな攻撃も防ぐことも難しくはないだろう。
 まさに十字騎士にふさわしい盾である。
「グレンギリー側はどうした?」
カイルはそういって周囲を見回すが、あたりに自分達以外に人の姿はない。
 彼の話ではカッツと従者、管理人の3人も自分達と合流するはずである。
 だが、どこを見回してもやってくる気配すらない。
「困るんだよなぁ、こっちにも段取りってものがあるんだからさ……」
カイルはため息をつきながら、手に持った書類に目を通す。
「どうも」
「おわっ!!」
カイルの背後で少年の声がする。
 完全に虚を突かれたカイルは思わず飛び上がった。
 その声の主はカッツだった。彼はいつの間にかカイルの背後に立っていたのだ。
「俺に気配を気取らせないなんてやるじゃねぇか」
カッツの実力の片鱗を見たレツの顔に思わず笑みがこぼれる。
 実力だけならミカエルと同等かそれ以上だ。
 久々にレツの中の血が騒ぐ相手にめぐり合えたような予感がしていた。
 遅れてグレンギリーとラフロイグの二人が大通りの方からやってくるのが見えた。
「いやぁ、悪い悪い」
野太い男の声が換算とした大通りに響く。
 大通りの方を向くと、男女がこちらに近づいてくるのが見えた。
 間違いない、カッツのお供二人だ。
「早くしてください!!馬車を待たせてるんです!!」
のんびりとやってくるグレンギリー達にカイルは苛立ちながら急かした。
「あ、あのさっ!!」
門を出ようと歩き出したカッツにタイガが話しかける。
 カッツは足を止め、タイガに視線を向けた。
 フードから覗く顔は相変わらず無表情である。
「カッツも……勇者だったんだ……」
「……」
タイガの質問に答えることなく先頭の馬車に乗り込むカッツ。
 馬車は二台あり、両方とも6人乗りのしっかりした作りの馬車である。
 タイガも慌てて彼の後を追って同じ馬車に乗り込む。
「今回の作戦を馬車の中で説明します。レツとグレンギリー殿は私と勇者がいる馬車の中へ」
「あいよ」
カイルの指示に従って馬車に乗り込むグレンギリー。
 レツもその後を追って馬車に乗り込む。
 中ではカッツとタイガが隣合って座っていた。会話らしきものはなく、沈黙が二人の間に漂っている。
 タイガが話しかけたそうにカッツの顔をチラチラと見るが、カッツの方は腕組みをして視線を正面に向けたまま動く気配はない。
 一昨日あったときは確かに無表情だったが、それなりにタイガの話すことにも反応してくれていた。
 だが今は全くタイガの声に反応するそぶりすら見せない。まるで人形のように。
 レツはグレンギリーの反対側に腰掛け、その間にカイルが座った。
「よし、出してくれ」
カイルの号令と共に、ムチを撃つ音が聞こえ、馬車がゆっくりと動き出す。
 窓の外ではトウマたちを乗せた馬車も動き出すのが見えた。
「ここから40キロほど北上した国境付近に巨大な遺跡群がある。先日そこで大型の獣型の魔物一体と、小型の獣型を多数発見したという通報が付近の住民から入った。普段から人が寄り付かない場所で恐らくは魔物の巣になっていると思われる」
カイルは説明をしながらレポートのページをめくる。
「また、エルフの考古学者が遺跡に入ったまま消息を絶っており、今回の我々の任務は魔物の掃討とその学者の捜索である」
カイルは任務の書かれている紙を読み上げると、顔を上げた。
「魔物の数も多く苦しい戦いになると思うが、勇者が二人なら勝てない戦いではない」
勇者二人を前にして力説するカイル。
「ま、勇者様に任せておけば楽勝さぁ」
他力本願なそぶりを隠そうともしないグレンギリー。
「うちは勇者一人でやらせてもらうぜ」
グレンギリーはそういうと、腰のポケットから酒瓶を取り出しグイっと一口呑んだ。
 カイルがキッっと睨みつけるが、そんなことはお構い無しといった様子だ。
「グレンギリー殿、任務中の飲酒は控えていただきたい」
「おー十字騎士様は怖い怖い」
カイルの注意に、グレンギリーはオーバーなリアクションを取りながら酒瓶をポケットにしまった。
「レツも今回は勇者に任せるか?」
「いや」
カイルの問いかけに、レツは即答した。
「今回は俺にカッツ、いやあんたの勇者を預からせてくれないか?」
レツの突拍子もない申し出に、その場にいた全員が一瞬驚きの表情を見せる。
「俺達は全員で勇者二人と一緒に魔物と戦う」
「別に俺はかまわねぇぜ?けど、使い終わったらちゃんと返してくれよ」
まるでモノでも貸す様な言い草のグレンギリー。
 レツはなんとなくカッツがなんでこんな性格になってしまったのか気づき始めていた。
 きっと戦い道具として扱われてきたのだろう。
 だから、グレンギリーの前ではずっと自分を戦う道具だと振舞っているのだろう。
「足手まといにならなきゃ、俺は別にかまわないスよ」
抑揚なく答えるカッツ。
 もしかしたらグレンギリー達がいないところでなら、タイガとちゃんと話をしてくれるかもしれない。
 これは賭けに近い行為だった。
「それではグレンギリーとラフロイズ両名には退路の確保をお願いできますか?」
「要するに入り口にいろってことだな。いーぜ」
カイルの要求にめんどくさそうに答えるグレンギリー。
 これでタイガとカッツが会話ができる。
 レツはその小さな可能性にかけた。
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