鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その5【ガオウとの戦い】 □

俺は世界を……【ガオウとの戦い・その2】

 馬車に揺られること三時間、日もすっかり昇った頃にレツ達を乗せた馬車は巨大な遺跡群が並ぶ場所へと到着した。
 シートは上等だったのだが、三時間も馬車に揺られたせいで腰も尻も限界に来ていた。
 レツはふらふらしながら馬車から降りた。
 その後からタイガとカイルが同じように疲労した様子で馬車から降りてくる。
 そして最後に大あくびをしながらグレンギリーが、そして何事もなかったようにカッツが降りてくる。
 後続の馬車も到着し、チーコたちが身体を伸ばしながら降りてくるのが見えた。
 十分ほどの小休憩の後、レツ達はカッツと共に遺跡の奥へと向かうことにした。
 カッツはラフロイズから包帯に包まれた1mほどの武器らしきものを受け取ると、背中に背負う。
 遺跡の入り口で、木陰に寝そべりグレンギリーとラフロイズに見送られレツ達は遺跡の中へと進んでいった。
 先頭を歩くカッツの後ろをタイガが親犬についていく子犬のようについていく。
「な、なあ、カッツ」
レツの呼びかけにカッツが視線をタイガに向けて答える。
 もうカッツの視線にタイガは怯えることはなくなった。
「背中に背負ってるのが武器なのか?」
「ああ」
「でっけーよな」
「……私語はそこまでだ」
カッツはタイガを後ろに下がらせると、周囲を見回す。
 レツにはカッツの行動の理由がわかっていた。
 周囲に魔物の気配がする。それほどランクの高い魔物ではないが、数匹がこちらの気配をうかがっている。
「……ランページさん」
「皆、魔物がこちらを伺っている。注意しろ!!」
阿吽の呼吸で、カッツが言いたいことをレツが周囲に伝える。
「そんな様子はないが」
半信半疑の様子で剣を抜くカイル。
 チーコやトウマも周囲を警戒し始める。
「長年のカンって奴さ」
「そんな不確かなもので動くのかお前達は」
自慢げに言うレツに、カイルが不満の声を上げる。
 カイルは今までみっちり理論を学んできたのだろうから、勘や気配に頼った戦い方が気に入らないのはわかる。
 だが、今はそんなことで言い合うつもりはなかった。
「おい、何か言ったら……」
「ランページさんの言うとおりにした方がいいスよ」
レツに食って掛かろうとしたカイルに釘をさしたのはカイルの一言だった。
 カイルがカッツのほうを向いた瞬間、カッツの背後の茂みから一匹の魔物が飛び出してきた。
 小型の獣型の魔物、ガルムである。
 ガルムはカッツの喉笛めがけてその牙をむき出しにして飛び掛ってくる。
 そんなガルム相手にカッツはポケットに手を突っ込んだまま突っ立っているだけである。
「だからいわんこっちゃ……」
カイルがそう叫びながら盾を手にし、レツが反射的にガルムに突進する。
 だが、レツがガルムに攻撃を入れる前に、カイルがカッツを守る前に、カッツの蹴りがガルムの腹部にめり込んでいた。
 カミソリのような鋭い蹴りに真っ二つにされるガルム。
 そのガルムの悲鳴を合図にするように、別のガルム二匹が同じ茂みから飛び出してくる。
 時間差で襲い掛かってくる二匹。
 一匹目が襲い掛かった瞬間、カッツの踵落しがガルムの頭部にめり込んだ。
 脳漿をぶちまけ、痙攣しながらガルムが地面に伏す。
 その隙にもう一匹がカッツの喉元に喰らいつこうとしたが、カッツは地面に伏せてそれを回避し、逆に右手でガルムの喉元を掴んだ。
 気道を握られ息もできずもがき苦しむガルムをカッツは片手で軽々と吊り上げた。
 必死に振りほどこうともがくガルムだが、カッツの腕はびくとも動かない。
「こういうとき、マニュアルじゃどう動くんスか?」
「!?」
勝ち誇ったように不敵な笑みを浮かべながら、カイルに問いかけるカッツ。
 カイルは返す言葉もなくただ立ち尽くしている。
「魔物側もこっちの手の内は全て熟知している。だとしたら、勝利の鍵を握るのは経験とそこからくるカンじゃないんですかね?」
カッツはそういいながら、ガルムの首を絞める手の力を強める。
 喉に指が更に食い込み、ガルムは口から血の泡を吹きながらもがき苦しむ。
「そういったものを否定して、教本どおりでうまくいくと思うのなら……」
カッツがそういった瞬間、何かがへしゃげる音と共にガルムの身体がだらりと伸びた。
「さっさと内勤勤務に異動届を出すことをオススメしますがね。長生きしたけりゃですが」
息絶えたガルムを投げ捨てながら、カッツはカイルにそう言い放った。
 その威圧感に言葉も返せず唇をかみ締めるカイル。
 まるで魔物を殺すことを楽しんでいるかのようなカッツに、レツですら微かに恐怖を覚えるほどだった。
「勇者の武器使わずにガルム三体を瞬殺されちゃ、文句も言えないよなぁ」
「うるさい!!」
からかうトウマにヒステリックに叫びながら、一人先に進んでいくカイル。
 それを無表情で眺めるカッツ。
 ふとレツがカッツの右手を見たとき、彼の手の甲から血が流れているのが見えた。
 喉を掴んでいた時に引っかかれたのだろう。
「カッツ、手怪我してんじゃんか」
レツの声でカッツはやっと気づいたかのように手の甲を見る。
 そして傷を見て興味なさげにプイと手を下に降ろした。
 手の甲からはダラダラと血が流れているというのに。
「ああ、もう!!」
レツは強引にカッツの手を掴んだ。
「チーコ!!傷薬とガーゼと包帯!!」
「ニャ」
チーコはそう答えて、リュックの中を漁ってレツが指示したものを取り出す。
 レツはチーコだ取り出した傷薬の瓶を奪い取り、蓋を開けると手の甲にかけた。
 かなりの痛みのはずだが、カッツは無表情でそれを見下ろしている。
 レツは手際よくガーゼを当て、その上から包帯をクルクルと巻いていく。
「これでよし、と」
ふぅと息を吐いて、包帯を結ぶレツ。
 カッツの手には動かすに支障がない程度に包帯がしっかりと巻かれていた。
「みょうに手馴れてんな」
いつの間にか横から覗き込んでいたトウマが感心している。
「一人で旅してりゃ、自分でケガの手当てすることも多いからな」
レツはそういいながら、余った包帯とガーゼをチーコに返す。
「んじゃ、ハネッかえりのカイル君が犬の餌になる前に追いつくとしますか」
そういうと、レツはカイルが進んでいった方向に向かって歩き始める。
 彼についていくようにトウマとチーコがついてくる。
 ただ一人、タイガがカッツの様子を心配げに見つめていた。
「あの……」
カッツに呼ばれ、レツが後ろを向く。
 その顔はフードの中に埋もれ下を向いていたせいでわからない。
「ありが……とう」
さっきまでのカッツとは思えないほどの小さな声だったが、その声は確かにレツの耳に届いた。
 それを見ていたタイガも満面の笑みを見せた。
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