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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その5【ガオウとの戦い】 □

俺は世界を……【ガオウとの戦い・その5】

 頭を失い、地面に倒れるケルベロスの胴体
 ボスを失ったことで、残ったガルム達は一目散に逃げていく。
 残されたのは無数のガルムの死体と、レツ達、そして血だらけのカッツだった。
 白い光が消えたカッツは、全身に返り血を浴びているせいもあって赤く染まっていた。
 そして焦点の定まらない瞳でケルベロスの頭をぼんやりを眺めていた。
「レツ」
カッツに声をかけようとしたとき、その前にカイルに声をかけられた。
 レツが振り向くと、カイルは曇った表情で首のない胴体を見上げていた。
「なんだよ、カイル」
「これ、見てみろ」
カイルはそういうと、首の付け根の所を指差した。
 カイルが指差した先には、人間が何人も入れるくらいの太さの首輪が巻かれていた。
 真紅の皮に、常識外れの大きさの鋲がぎっしりと打ち込まれているものだった。
 その表面を見た瞬間、レツは腰を抜かしそうになった。
 首輪に使われていた皮、それは人間の顔の皮だったのである。
 表面にビッシリと並んでいる目のない人間の顔。とてもじゃないが、直視できるようなものではなかった。
「人間の顔の皮……かよ」
「ああ。だが、本当の問題はそこじゃない」
「え?」
「普通に考えてみろ。動物に首輪をつけるときはどんな時だ?」
カイルの質問に、レツは思わず息を呑んだ。
 普通、動物に首輪を巻くということはその動物が自分の所有物であることを主張することともいえる。
 大抵は首輪をつける側が立場も能力も上なのだが。
「おい、冗談……だろ?」
レツは自分の額に汗が流れるのを感じた。
 つまり、この巨大ケルベロスには飼い主がいるということ。
 その飼い主は恐らく、このケルベロスより上級の魔物であること。
 このランクの魔物をペットにするのだから、13魔将である可能性も否定できない。
 そしてペットが殺された以上、飼い主が出てくる可能性があること。
「成り行きで倒したが、これは学者の捜索どころじゃないぞ……」
カイルは険しい表情でそう漏らした。
 カイルもレツと同じことを考えているのだろう。
「今すぐパラディアに戻って増援を要請する。体勢を整えてから捜索を再開すべきだ」
「だな」
カイルと共に撤退の準備を始めようとした時、レツの背後で何かが倒れる音がした。
「おい、カッツ!!」
タイガの悲鳴が聞こえる。
 レツが反射的に振り向くと、そこには地面に倒れているカッツと彼を起こそうと身体を揺り動かしているタイガの姿があった。
 ケルベロスの攻撃を受けて、なおかつ武器の力を発動させたのでは倒れても仕方ない。
 恐らくタイガは初めて武器を発動させた時と同じような状態になっているのだろう。
「カイル、撤退のことを皆に伝えてくれ!!」
レツはそういい残すと、カッツの元へ駆け寄った。
 レツが駆け寄ると、タイガが泣きそうな表情で自分を見上げた。
 その間も必死に身体を揺らすが、カッツが動く気配はない。
「レツにーちゃん、カッツが、カッツが!!」
「大丈夫だから少し落ち着け」
レツはそう言って、パニックになっているタイガの両肩に手を置いてその瞳を見つめた。
 焦りの色一色だったタイガに、少しだけ落ち着きの色が見え始めた。
 レツはレツの手をカッツから離すと、カッツの身体を抱き起こした。
 どうやら気を失っているらしく、何の抵抗もなくレツの腕の中に納まる。
 カッツの身体はタイガよりは幾分かがっしりしていたが、それでも思っていた以上に軽い身体であった。
 起こさないように静かに持ち上げると、周囲を見回した。
 周囲に魔物の気配はない。遺跡を出るにはいいタイミングだった。
「皆、今のうちに遺跡を出るぞ!!」
「え?」
レツの指示に少し戸惑っているトウマ。
 チーコはカイルの後をついてそそくさと移動を始めている。
 レツもカッツを抱えたまま一人と一匹の後を歩き出す。
 タイガとトウマもレツの後をついて歩いてくる。
 できるだけ早くこの場を離れなければ、レツの足が自然と速くなる。
「ん……」
レツの耳元で、カッツの声が漏れるのが聞こえる。
 フードの中に埋もれたカッツの顔を覗くと、カッツが薄っすらと目を開けているのがわかった。
 レツはカッツの様子を見るために一瞬足を止めた。
「カッツ、大丈夫か?」
レツが声をかけると、カッツはレツの腕を振り払って地面に降り立って。
「行きましょう」
何事もなかったように歩き出すカッツ。
 だが、わき腹を手で押さえながら歩くカッツの姿は見ていて非常に痛々しいものだった。
 手を差し出したいのだが、カッツの全身から出ている手を出すなというオーラがそれをさせてはくれなかった。
 満身創痍で一人歩くカッツの姿が、彼の今までの生き方を見せてくれているように見えた。
「おい、来てくれ!!」
遺跡の入り口からカイルの叫びにも似た声が聞こえてくる。
 声からただ事ではないと気づいたレツは、声のする場所に向かって駆け出した。
 カッツもレツ達に負けない速さでついてきている。
 十数m先でレツを見つけたカイルが慌てた様子で手を振っている。
 何事かとカイルの元にレツが駆け寄った時、レツは思わず息を呑んだ。
「なんだよ、これ……!?」
目の前に広がっていたのはレツが我が目を疑いたくなる光景だった。
 粉々に砕かれた馬車、内臓や首を引きちぎられ地面に横たわる馬の死体。
 馬車の残骸の下には馬車の手綱を操っていた兵士の下半身だけの死体が転がっていた。
 ここまで凄惨な殺戮現場はタイガと出会った時以来だった。
「レツにーちゃん!!」
「来るな!!」
近づこうとするタイガ達を怒鳴り声で制止させるレツ。
 レツの言葉の意味を悟ったらしく、タイガ達も近寄ってくる気配はなかった。
「グレンギリーさん!!」
カイルが叫ぶ声が聞こえる。
 レツがその方を振り向くと、カイルが馬車の残骸の中からグレンギリーを引きずり出しているところだった。
 辛うじて息はあるようだ。
 レツはグレンギリーの元へと駆け寄った。
 彼はまだ息はあったのだが、全身からの出血がひどく長くはないことはレツにもわかっていた。
「グレンギリーさん、何があったんだ!?」
「魔、魔物が……獣みてぇな人型の魔物と、バカでっけぇケルベロスが俺達を……」
カイルに抱えられ、途切れ途切れに状況を話すグレンギリー。
 どうやらレツ達の予感は現実のものとなったようだった。
 ケルベロスの飼い主が現れ、入り口にいたグレンギリー達を襲ったのだ。
「ラ、ラフロイズは……」
「もう喋ってはいけない!!これ以上喋ると……」
出血が止まらず、次第に息が浅くなっていくグレンギリー。
 そんな彼を小さな影が覆った。レツが見上げると、そこにいたのはカッツだった。
 カッツは表情一つ変えずにグレンギリーを見下ろしていた。
「何で俺が先に……てめぇが……てめぇがもっと早く死んでくれれば……」
カッツを見た瞬間に、グレンギリーの表情が一変した。
 その顔は憎しみにゆがみ、まるで悪鬼のようである。そんな彼に睨まれてもカッツは表情一つ変えない。
 二人に間に流れる冷たい空気がレツにも感じられた。
「てめぇが先に……死ななきゃ……俺は贅沢できね……え……だ……」
全てを言い終える前に、グレンギリーの呼吸が止まり、瞳孔が開いた。
 カイルは見開かれた彼の瞼をそっと手で閉じた。
「くそっ、退路を塞がれたか……」
カイルはそう呟きながらグレンギリーの顔に持っていたハンカチを乗せ、地面に寝かせた。
 そして胸の前で十字をきり、簡単な祈りの言葉を呟くと、立ち上がりレツの方を向いた。
「日が落ちる前にできる限り遺跡の奥に行き、適当な場所で夜を明かす。今晩中に俺達が帰ってこなければ、パラディアの本部で異常を察して救援隊がやってくる」
「……だな」
カイルの提案にレツは苦虫を噛み潰したような表情で同意した。
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