鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その5【ガオウとの戦い】 □

俺は世界を……【ガオウとの戦い・その6】

 ひたすら遺跡の内部へと進むレツ達。
 その表情は暗く、口数も少ない。チーコだけが普段と変わらぬ陽気さなのだが。
 タイガとトウマも一応状況の説明をしたのだが、訳がわかってないといった様子だ。
 レツ達が天井のある遺跡の中に足を踏み入れようとしたとき、何かがレツ達の前に飛び出してきた。
 一瞬魔物かと構えるレツだったが、その正体を見た彼はかまえをといた。
 飛び出してきた人物が、ラフロイズだったからだ。
 彼女は全身に傷を負っていたが、どの傷も浅く命に別状がないようだった。
「た、助けて!!」
そう叫びながらそのままレツの胸の中に飛び込むラフロイズ。
 その身体は小刻みに震えていた。
「ケルベロスが、大きなケルベロスと人型の魔物が私達を襲って……グレンギリーが私を逃がすために……」
「落ち着けって!!」
彼女の肩を揺すってパニックを納めようとするレツ。
 何とか落ち着きを取り戻したラフロイズの目から滝のように涙が溢れ出す。
「ねえ、あの人は?グレンギリーは!?」
彼女の問いかけに、目をそらすレツ。
 レツの行為の意味を察した彼女は、力なくその場に座り込んだ。
 現実を受け入れられないのか、その顔には何故か薄ら笑みすら浮かんでいる。
「うそ……でしょ?あの人が死ぬなんて……」
「残念だが……俺が看取った」
カイルの言葉に、彼女はピクンと跳ねるようにカイルの顔を見た。
 彼女の顔は現実を受け入れられない怒りと悲しみで埋め尽くされているようだった。
「嫌ぁぁぁぁぁぁぁ!!」
堰を切ったように声を上げて泣き出すラフロイズ。
 そのあまりに悲痛な嘆きに、タイガやトウマまでもらい泣きをしている。
 そんな中、カッツだけが無表情で彼女の様を見下ろすように眺めていた。
 しばらく泣きはらして落ち着いた彼女を連れてレツ達がたどり着いた先は、石造りの回廊の中だった。
 外からは遺跡に根付いた木のおかげで殆ど中をみることができない。
 隠れて夜を明かすには丁度いい場所だった。
 位置を知られてはまずいので火を焚くこともできず、レツ達は静寂の中で野宿の準備を始めた。
 簡単な夕食の支度をしているレツの隣で、チーコがリュックから出した錠剤をラフロイズに手渡していた。
「コレを飲むと落ち着くニャ。そんでもって少し休むニャ」
「ありがとう……」
ラフロイズは錠剤を受け取ると、口に含んで水筒の水と共に一気に飲み下した。
 その憔悴しきった雰囲気は見てて非常に痛々しかった。
 薬を飲んで横になろうとする彼女の頭と床の間にトウマがそっと枕を差し込んだ。
「もしかしたら、俺達の中の誰かがグレンギリーのようになってたのかな」
ラフロイズが眠るのを見守っていたトウマがポツリと呟く。
 普段は明るく振舞って周囲をはげますトウマだが、今日はそうもいかないようだった。
 木の根に持たれて項垂れるように地面を眺めている。
「ま、そうだったとしてもオイラじゃないことだけは確かニャ」
ヒゲを弄りながら、チーコが自慢げに言う。
 この状況でその自信はどこから出てくるんだといいたくなるほどに尊大な態度だった。
「お前じゃないっていう確証はどこから来るんだよ」
「ふっふっふ、実は……」
チーコが説明を始めようとした途端、タイガがレツとチーコの間に割って入ってチョコマカ動き始めた。
 普段から落ち着きのない子だが、今の様子はいつもに輪をかけて落ち着きがない。
 必死に何かを探しているようだった。
「どうしたんだ、そんなに慌てて……」
レツに気づいてもらえたタイガは身振り手振りで自分の慌てっぷりを見事に表現していた。
 もっとも、何で慌てているのかは皆目検討がつかないが。
「レツにーちゃん、大変なんだよ!!」
「だから、何が大変なんだ」
「カッツがいないんだ」
タイガに言われてレツは自分の周囲を見回した。
 確かに周囲にはカッツの姿が見えなかった。さっきまで近くで座っていたのに。
 彼が座っていた岩から忽然と姿をけしていた。
「あれ……?」
レツは立ち上がって更に遠くを見回すが、カッツの姿は見えない。
 レツの胸の中にモヤモヤとした嫌な予感が広がるのがはっきりとわかった。
「カイル、俺達カッツを探してくる。行くぞ、タイガ!!」
「おう!!」
カイルにその場にいるラフロイズやトウマのことを強引に任せて、回廊の外へ出るレツとタイガ。
 回廊の外は遺跡に木が絡みつき、さながら天然の迷路になっていた。
 魔物の気配はないが、どこに誰がいてもおかしくない場所である。
 レツはタイガを傍において、細心の注意を払って密林の中を進んでいった。
「レツにーちゃん、あれ!!」
声を殺してタイガがレツを呼んで、一方向を指差す。
 タイガの指の方向にカッツはいた。木の根に腰掛け、小さく蹲っていた。
 レツ達が近づいていっても、カッツは一向に気づく様子もみせなかった。
「カッツ……」
レツが呼びかけると、カッツがフードの中からその鋭い視線をレツに向ける。
 普通の人間なら腰を抜かしてしまうほどの眼力だったが、以前ほどの威圧感は感じられなかった。
 どうやら相当弱っているようだ。
 ケルベロスから受けた一撃が未だに残っているとも思えない。
 となると、原因は一つである。
「カッツ、お前も武器を使うと……」
レツがそう尋ねると、カッツは小さく俯いた。
 どうやらそれ以上のものがあるのだろう。だが、レツにそれをうかがい知ることはできなかった。
 だが、それとは対照的にタイガは何かを感じ取ったようだった。
「そうだよな……」
タイガはカッツの隣に腰掛けると、その手を握った。
 カッツが嫌がるとレツは思ったが、不思議とタイガの手をカッツは受け入れた。
「従者の人から死んで欲しいなんていわれたら、しんどいよな……」
「……」
カッツの表情に変化はない。だが、その感情的な揺らぎが起きたのをレツは見逃さなかった。
「確かに俺達死ぬのが仕事だけどさ、面と向かって死ねっていわれるのしんどいよな……」
タイガの目から涙が溢れ出す。
 まるでカッツの分まで泣いているかのように。
 タイガが泣いている間、無表情で地面のただ一点を凝視し続けるカッツ。
 一方で、彼の手は自分の感情を表したいかのように強く握られていた。
 だが、そんな穏やかな時間はすぐに終わりを告げてしまった。
 地響きと共に、近くにある木や遺跡が次々と倒されていく。
 その破壊の主は確実にこちらに近づいてきていた。
「……来たか」
カッツはタイガの手を放すと、その手に斧を持ち替えた。
 レツもタイガの涙を拭いて立ち上がらせる。
 恐らく今から来る魔物はさっきのケルベロスの『親』だろう。
「まったく、てめぇの飼ってるペットくらい自分で躾しやがれってんだ」
レツの言葉とは裏腹に、彼のわき腹からは一筋の汗が流れていた。
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