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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その5【ガオウとの戦い】 □

俺は世界を……【ガオウとの戦い・その7】

 レツ達が爆発の場所に駆けつけると、そこは回廊の出口に当たる場所だった。
 木と共に石柱が粉々に砕け、土煙がもうもうと上がっている。
 その中に見える人影。全体のシルエットは人間なのだが、手や足の先がどことなく獣に似ている。
 そして極めつけは尻尾があること。これだけみても奴が人間でないことは明らかである。
「レツ!!」
少し遅れてカイルとトウマ、チーコも駆けつけてくる。
 味方がこれだけいてもレツの心臓の高鳴りは収まることがなかった。
 土煙の向こうにいる人物、そいつが放つプレッシャーが尋常なものではなかったのである。
 トラシアで戦ったグリフィスと互角か、それ以上の実力の持ち主である。
 こいつは間違いなく13魔将だ、レツの勘がそう告げていた。
「あーあ、来て早々いきなりかくれんぼかぁ?」
年端も行かない14、5歳の少年の声。
 だが、その声にはレツですら戦慄させるほどの威圧感があった。
 土煙が退き、レツ達の前に姿を現す魔物。
 それは人間とも獣ともつかない獣人と呼ばれる種族の魔物であった。
 骨格は人間なのだが、手足の爪は虎のように鋭く、顔も目や髪の毛は人間なのだが、口や鼻は肉食の動物に近い。
 そして意思があるかのようにピコピコと動く尻尾。
「てめーらか」
獣の少年が待ちわびたように声をかける。
 その声に過敏に反応してカッツが斧を構える。どうやらカッツもあの少年の実力に気づいているらしい。
 タイガも自然と闘いの構えをとっているし、残りのカイルたちも、さすがにあの少年が発している気配に気づいているようだ。
 まちがいない、こいつは13魔将の一人だ。
「どーみてもグリフィスやエイザム、ゲイザムを倒したとは思えねぇ面構えだな」
緊張で固まっているレツ達に対して、獣の少年はまるで友達に語りかけるように話しかける。
 尊大な態度だったグリフィスとは対照的な、子供っぽい魔物だ。
「ま、戦ってみればわかることか」
少年はまるで何かを実験するかのように言うと、その鋭利な牙をレツ達に見せ付けた。
「オレサマは13魔将の一人、ガオウだ。弱きゃ一思いに殺す。強けりゃ楽しんでから殺すからそのつもりでな」
物騒な自己紹介の後、ガオウと名乗った獣の少年はとてつもないスピードで飛び掛ってきた。
 レツの反応速度ですら完全に追いついていない。まっさきに狙われたのは自分だった。
 奴の姿を認識するのが遅すぎた。ガオウの爪がレツの胸板に襲い掛かる。
 爪がレツの胸を切り裂く間一髪で、レツは身体を後ろに反ってそれを回避した。尻餅をつくように回避をする。
 レツのシャツには引き裂かれた後がクッキリと残っており、その僅かだが傷口から血が滲みだしていた。
「お、やるじゃねーかよ」
爪についた血を舐めながら嬉しそうにレツを褒めるガオウ。
 奴は一瞬で目の前に現れた。
 自分ですら目が追いついていかない。さっきは運良く回避できたが、次は避けられるかわからない。
 実力ならグリフィス以上の相手だ。
 持久戦に持ち込んだらこちらが不利。短期決戦で一気にケリをつけないと。
 そう思った瞬間、誰かがレツの横をすり抜けてガオウに切りかかっていた。
 カッツだ!!
「カッツ!!」
「俺の次はお前だ、いいな!!」
タイガにそれだけ言い残すと、カッツは斧から白い光を放って武器の力を解放させた。
 ガオウに負けず劣らずの速さである。
「うおおおおおおおお!!」
一瞬でガオウの目の前に立ち、斧を振り上げるカッツ。
 一方のガオウはそれをまるで待ちわびているかの表情で避けようともしない。
 斧とは思えない速さで振り下ろされたそれは、今度はその大きさの何倍以上のインパクトで振り下ろされる。
 だが、その一撃はガオウに届くことはなかった。
「いいね、いいね。お前がいるだけでここに来た甲斐があったってもんだぜ」
そういって笑うガオウの左手にはカッツの斧の歯が握られていた。
 あの一撃を片手で白羽取りしている。それだけでも十分驚異的なのにガオウに握られた刃はカッツがどれだけ動かしてもピクリとも動く気配がない。
 カッツは必死の形相で斧の刃をはずそうとしているのに。
 レツはカッツの姿に僅かな違和感を感じていた。確かにガオウの力は圧倒的である。
 それも事実なのだが、それ以上にカッツの不調振りが目に付いて仕方がなかった。
 ケルベロスからのダメージなのか、それともさっき言っていたタイガの言葉どおりの原因なのか。
 原因は定かではないが、普段の力の半分も出せていないような印象すら見受けられる。
 そのブレがガオウとカッツの力の差をより顕著にしているようだ。
「お前とは一度殴りあいで勝負してぇところだな」
ガオウはそういうと、右手を大きく振り上げた。
「カッツ、下がれ!!」
反射的に叫ぶレツ。
 だが、そのときにはカッツは赤い鮮血と共に宙に舞い上がっていた。
 高速の爪による攻撃。ほぼ一瞬で全身が傷だらけになり、服はまるで身体に張り付いている程度にボロボロになっていた。
 斧をしっかりと握ったまま重力に引かれて落ちていくカッツ。
「カッツ!!」
タイガが叫ぶ。
 カッツが地面に激突するのと同時にタイガが武器の力を解放する姿勢をとる。
 彼の表情はいつにない、怒りと憎しみに満ち溢れていた。
「お前、お前ぇ!!」
タイガはそう叫びながら、クローからまばゆい光を発生させる。
 トラシアで見たときと同じ、武器の力の解放の瞬間である。
 タイガは瞑想するように目を閉じ、深い呼吸を何度も繰り返していた。
 まるでその姿は武器の光を全身に溜め込んでいるかのように見える。
 そして一部始終を見守るように何もしないガオウ。
「さぁ、来い!!」
両腕を開いてタイガを待ち受けるガオウをタイガは睨みつけると、あの瞬間移動のようなスピードでガオウに襲い掛かった。
 スピードはトラシアの時以上である。レツでも時々目で追いきれないほどである。
「うおおおおおおおお!!」
光のような踏み込みでガオウの懐に飛び込んだタイガは、その顔面に強烈なストレートをぶち込んだ。
 顔面を変形させながら吹っ飛ぶガオウ。
 数m吹っ飛ばされたが勢いは収まらず、背後の壁面にすさまじい衝撃で激突した。
 壁画をぶち抜き地面に衝突するガオウ。追い討ちといわんばかりに頭上に壁画が崩れ落ちてくる。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ!!」
瓦礫に埋もれたガオウを待つかのように立っているタイガ。
 その視線にはすでにガオウしか写っていないかのようだった。
 前かがみになって、両手をダランと伸ばすその姿は人間というより獣か魔物に近い。
 殺意と戦闘本能だけで戦う獣である。
「あれが……勇者……」
レツの隣で、トラシアで自分が呟いたのと同じような言葉をカイルが呟いた。
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