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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その5【ガオウとの戦い】 □

俺は世界を……【ガオウとの戦い・その8】

 数秒の静寂と共に、瓦礫を吹き飛ばしてガオウが立ち上がる。
 あれほどのダメージを受けたというのに、その表情はなぜか嬉々としていた。
 そう、あの表情にレツは見覚えがあった。自分も良く見せる表情。
 強い相手と出会い、戦いを楽しんでいる時に見せる表情。
「斧の勇者さんは見当はずれだったからなぁ、お前は楽しませてくれよ?」
「カッツを悪くいうなぁ!!」
再びガオウに襲い掛かるタイガ。
 トラシアのときのようなスピードの衰えは見えない。いや、むしろスピードは上がっている。
 それを引き換えに失われていく、タイガの人間としての気配。
 その代わりに膨れ上がっていく獣のような闘争本能と怒り。
 タイガのクローと、ガオウの爪が空中で激しく衝突する。
「やればできるじゃねーか!!」
ガオウは興奮気味に叫ぶと、タイガとの間合いを一瞬開ける。
 だが、それを逃がさないようにタイガもすさまじい勢いで肉薄する。
 そしてそのまま二人の爪での攻防戦が始まった。
 タイガが放った一撃を右手で受け流したガオウは、カウンターのキックをタイガに叩き込んだ。
 蹴りはタイガの腹部にめり込み、今度はタイガが近くの木の幹に激突しその木を粉々に砕いてしまった。
 ガオウは木の破片の中に埋もれるタイガに追い討ちをかけるようなことはせず、ただ彼が立ち上がってくるのを待っているようである。
「何を……している……」
声のする方向をレツが向くと、カッツが斧を杖代わりにして立ち上がっているところだった。
 どうやら致命傷になるような攻撃は避けていたらしい。
 カッツはガオウと互角以上の勝負をするタイガを深刻そうな表情で睨みつけていた。
「早くとめろ!!じゃないと、タイガの心が武器にもっていかれるぞ!!」
カッツが必死の形相で叫ぶ。
 自分だって立っているのがやっとだろうに。
 だが、心が武器に持っていかれるとはどういうことなんだろう。
「おおおおおおおおおおお!!」
獣のような叫び声と共に、木屑の中から飛び出したタイガはガオウの喉に襲い掛かる。
 タイガの爪を受け止め、寸でのところで攻撃を防ぐガオウ。
 そのまま二人は地面に倒れこみ、殴り合いを始める。
 本能むき出しで戦う二人の姿は、まるでどっちが魔物かすらわからなくさせてしまう。
「なんか外野がうるせぇなぁ」
ガオウは不機嫌そうに言うと、タイガの右腕を掴み、地面に転がった体勢から強引に空中に持ち上げた。
 空中に投げ出されたタイガは猫のように空中で体勢を整え、ガオウを迎え撃つ。
 それを待っていたのか、ガオウは両腕の爪を最大まで伸ばすとタイガを向き合った。
「いくぜ、必殺、牙王天翔!!」
ガオウは技の名前を叫びながら自らも空中に飛び出した。
 それを察知して迎撃の姿勢を取ろうとするタイガ。
 だが、それよりも早くガオウの爪と牙がタイガの身体を引き裂いていた。
 まるで赤い花弁のように舞い散るタイガの鮮血。それでもなおガオウは攻撃をやめようとしない。
 トウマやチーコが攻撃をやめさせようと遠距離攻撃を仕掛けようとしているが、あの位置ではタイガに攻撃が及びかねない。
「これが、オレサマの獲物の証だ!!」
ガオウは服ごと引き裂かれすでに上半身裸に同然のタイガの身体にしがみ付く。
 そしてその首元に深々と犬歯をつき立てた。
「うあああああああああああ!!」
悲痛な悲鳴を上げるタイガ。
 しかしガオウは暴れるタイガを床に押し付け尚もその牙をタイガの身体奥深くに押し込んでいく。
 次第に激しく動いていたタイガの両腕がパタリと動くのをやめる。
 まさか、レツに戦慄が走った。
「大丈夫だ、殺してはいねーよ。俺の獲物だからな。マークをつけただけだ」
レツの心を読むかのようにガオウがレツに言う。
 ガオウの言うとおり、タイガの首筋にはガオウの犬歯と思われる赤い点が二つついていた。
 動かなくなったタイガを床に投げ捨てると、次にガオウはカッツを見た。
「次はてめぇだ」
「!!」
ガオウはタイガの戦いの後とは思えないすさまじいスピードでカッツの前に立つ。
 カッツもガオウの動きに反応して構えたのだが、深手を負った今ではそれは無意味に近かった。
 斧を振り上げようとした手を振り払い、両肩をしっかりと掴む。
 そしてタイガにしたのと同じように犬歯をカッツの首筋にめり込ませた。
 カッツも必死に抵抗したが、ガオウは執拗にカッツの首筋を咬み続け、彼がぐったりするまでそれを続けた。
「こいつらには強くなってもらわねぇと困るからなぁ」
ガオウはカッツから牙を抜くと、まるでゴミのように意識を失ったカッツを地面に投げ捨てると今度はレツの方を向いた。
「こいつらは作物だ。俺のために戦い、俺のために強くなる。そして最後、俺を楽しませるほどに強くなったら……刈取る。首のアレはその目印と共に、俺への服従の証だ」
ガオウは楽しげに言うと、レツ達に爪を向けた。
「そしてお前達には死んでもらうぜ。仲間を俺に殺されれば、あの二人も俺を恨んで死に物狂いで強くなるだろうしなぁ」
獲物を物色するガオウの目。
 残されたレツ達に緊張が走る。一歩一歩近づいてくるガオウ。
「や、やばいニャ!!やばいニャ!!」
真っ先に動き出したのはチーコだった。
 逃げ出すように走り出したのだが、パニックに陥ってるのかひたすら同じ場所をグルグル回っている。
 パニックになった猫に興味などないといった様子でチーコを鼻で笑うと、ガオウは標的をレツ達に定めた。
「まずはてめぇだ」
ガオウはトウマを指差しそう宣言すると、神速の踏み込みで一気にトウマに詰め寄った。
 トウマも咄嗟にくないを構えるが、そんなものでガオウの攻撃を止められないことはレツにもわかっていた。
 彼の表情からも、彼自身が一番よくわかっているのが伝わってくる。
 ガオウが右腕を振り上げ、トウマに振り下ろされる。
 くないを構えてはいるが、その身体は完全に萎縮して小さく縮こまっている。
「くそっ!!」
レツはガオウの攻撃を止めようとトウマとの間に割って入ろうとする。
 だが、その前にカイルが盾を構えてトウマを守る体制に入っていた。
 ガオウの攻撃を受け止めるカイルの盾。そのインパクトで大きく揺らいだが、盾そのものは無事だった。
「レツ、頼んだ!!」
「ああ!!」
恐怖で身体が動かないトウマを抱えて距離をとるレツ。
「邪魔すんなぁぁぁぁぁぁ!!」
ガオウの表情が一気に険しくなり、爪での攻撃を連続で盾に叩きつける。
 爪による斬撃と、それからくる衝撃。次第に盾を持つカイルの体制が崩れてくる。
 長くは持たないが、ガオウの注意がレツに向いている。
 このチャンスを逃す手はなかった。
「くそっ!!」
トウマは悔しそうに叫ぶと、レツの腕の間から抜け出る。
 そしてポケットからくないを取り出すと、ガオウに向かって投げつけた。
 だが狙いが定まらなかったのかくないはガオウではなく、ガオウの足元の地面に全て刺さってしまっていた。
 それにしてはトウマの表情に焦りがみられない。
「忍法影縛り、茨地獄の術!!」
トウマは高速で印を切ると、最後の一個のくないをガオウの足元に投げつけた。
 いや、ちがう。ただ足元に投げていたわけではないようだ。
 全てのくないが刺さった位置が、ガオウの影の中に収まっていたのだ。
 最後の一本が刺さった瞬間、ガオウの影に黒いスパークが走り、彼の動きが止まった。
 限界寸前まで来ていたカイルは突然動きを止めたガオウを、盾の横から恐る恐る覗き込む。
 ガオウは突然動きを止め、腕を振り上げたまま硬直していた。その焦りの表情からして自分の意思で止めているというわけではなさそうだ。
「影縛りで奴の動きを封じた。早くしろ、長くはもたねーぞ!!」
印を組んだままトウマが怒鳴る。
 どうやら影につきさしたくないによってガオウの動きを止めたらしい。
 チャンスは今しかない。レツは掌にありったけの気を練った。
「タイガとカッツをいたぶった例だ、受け取れぇぇぇぇぇぇ!!」
極大にまで練りこんだ気を一気にガオウに向かって放出する。
 気の波動はガオウの背中に直撃する。だが、影縛りのせいかガオウは揺らぐ様子すらみせない。
 反対側にいたカイルも剣を抜き、レツの攻撃の裏側から剣で突き刺した。
「うおおおおおおおお!!」
後のことは考えず、全ての気をガオウに打ち込むレツ。
 カイルもそれにあわせてガオウの腹部に剣を捻じ込んでいく。
 トウマも全身から汗を流しながら、目を閉じて必死に何かを念じ続けている。
 この連携で倒す、レツは掌に最後の力を込めた。
「しゃらくせぇ」
これだけの攻撃を受けてなお、ガオウの表情は涼しかった。
 ガオウは頃合を見計らうように突然腕を上げた。それに呼応するようにくないが影から抜けていく。
 レツとカイルが必死に攻撃をしている中、ガオウは準備体操をするかのように身体を動かす。
 そのたびにくないが抜け、トウマに苦悶の表情が浮かび上がる。
「遊びは終わりだ!!」
ガオウがそう天に吼えた瞬間、最後のくないが抜けトウマがガクリと膝をついた。
 動きを取り戻したガオウが真っ先に標的にしたのはカイルだった。
 ガオウの爪の連撃を受け、鮮血と共にカイルが地面に倒れこむ。
 十字騎士自慢のミスリル製の鎧もガオウの爪の前では無力だった。
「雑魚はさっさと殺されろ」
殺意に満ちたガオウの声。
 レツは咄嗟に片膝をついているトウマを抱きかかえた。
 次の瞬間ガオウの爪がレツに襲い掛かる。だが、全ての力を使い果たしたレツに防ぐ手立てはなかった。
 ただできるのは無防備なトウマを守って耐えることだけ。
 永遠ともいえる1秒間を耐え抜いたとき、レツは自分が地面に倒れていることに気がついた。
 全身にできた無数の傷。流れ出る血。もう立ち上がることすらできない。
 トウマはレツの腕の中で意識を失っていた。自分が庇ったのが幸いして、大したケガはしていないのだが。
 そんなレツの目の前に、ガオウの足が踏み下ろされた。
 見上げると、ガオウが不敵な笑いを見せながら爪を舐めている。
 どうやら最初にトドメをさされるようだ。
「ニャー!!」
そんなガオウの注意を逸らしたのはチーコの叫び声だった。
 相変わらずチーコはレツ達の周囲をジタバタしながら走り回っている。
 戦う意思がないとはいえ、気になったのかガオウは今度はチーコのほうを向いた。
「おい、そこの猫。あとで殺してやるから静かにしてろ」
「うっせーニャ。このボケ」
チーコの暴言にガオウの顔に血管が浮かぶ。
 今まで逃げ回っていたチーコの態度の豹変に、レツは薄れていく意識の中で疑問を感じていた。
「おい、猫。てめー、今すぐ殺されてぇか」
「それはこっちのセリフニャ。お前こそミイラにされたくなかったら、さっさと消えるニャ」
ガオウがムキになってチーコに飛びかかろうとした瞬間、ガオウの足元が黄色に激しく輝き始めた。
 その光を見たガオウの表情が一変して、焦りと動揺一色となる。
 チーコのほうを見ると、チーコが勝ち誇った表情でピコピコハンマーをガオウに向けていた。
「てめぇ、逃げ回ってるフリをして月光花を準備してやがったのか!?」
「ニャ」
チーコが左手の肉球をみせる。
 それを合図にしたかのようにガオウの足元に黄色に光り輝くエンブレムが現れる。
 月と猫の横顔とバラを象った円の紋章。
 これは月属性最高位魔法の発動を意味していた。
「一歩でも動けば月光花を発動させるニャ」
「とんだ食わせ物だな、てめぇ」
ガオウは月のエンブレムの上から一歩も動けないでいた。
 動けば、月猫族のみが使える月属性最強魔法、月光花が発動するからだ。
 生命力を吸って育ち、マナを吸って花を咲かせる植物、月光花を敵に植え付ける魔法。
 植えつけられた敵はマナがなくなるまで生命力を吸われ続ける。
 マナの豊富な者は生命力を吸われ尽くしてミイラのようになり、マナがない者でもマナを全て吸い尽くされて廃人と化す。
 全ての魔法の中でも最強といっても過言ではない魔法である。
 これを大抵の月猫族が使えるのだから、魔物が月の国や月猫族を敬遠するのも納得ができる。
「だがどうする?月光花が完全に発動する前にお前を殺せるかもしれないぜ?」
「バリカキ勝負なら得意ニャ」
そう言ってチーコが爪を出す。
 チーコはガオウの言葉がハッタリだと気づいてるのだろう。
 月光花のもう一つの効果。それは相手が使える魔法、技、特殊能力を全て封じられてしまうこと。
 正確にはそういったものが月光花の花となって咲いてしまうのだが。
 そのため、仮に月光花を耐え抜いても、衰弱した状態で泥沼の肉弾戦を強いられることになる。
 チーコはそこまで計算して動いてるに違いない。
「それなら、これならどうかしら?」
突然遺跡に響き渡る凛とした女性の声。
 次の瞬間、ガオウの足元に月光花とは別に光の十字架が現れた。
 新たな魔法の存在にガオウの表情は一層険しくなる。
「シャイニングティアだと!?」
ガオウが泣き言のように聞こえる声をあげる。
「攻撃範囲は置いておいて、攻撃力だけなら光属性最高位の魔法と遜色ないわ。月光花を喰らった後にこれをくらったら……いくら貴方でもどうなるかわかるわよね?」
そういいながら、遺跡の柱の影から現れたのはエルフの女性だった。
 銀色のショートヘアに、雪のような肌の色だった。
 レツはその女性に見覚えがあった。
「イ……イレーヌ……?」
掠れた声で女性の名を呼ぶレツ。
 イレーヌと呼ばれた女性はレツの方を一瞬チラッと一瞥し、厳しい表情でガオウの方に向きなおした。
「どうやらうちの知り合いに怪我をさせてくれたようね。本当に灰にしてあげようかしら」
イレーヌはガオウと十分な距離をとりながら、杖をガオウに向ける。
 意外な伏兵の登場に、ガオウは焦りを隠せないようであった。
「といいたいけど、こっちも怪我人が多いみたいだし、貴方倒して増援こられても困るのよね。さっさと消えなさい」
「何だと!?」
「聞こえなかったの?見逃してやるっていっているのよ」
ガオウの剣幕にも全く動じないイレーヌ。
 それどころかチーコと即席の連携を組んで、わざと魔法を発動させるフリをしてガオウにプレッシャーをかけている。
「このオレサマをコケにしやがって……」
「貴方に与えられた選択肢は二つ。このまま引き下がるか、ここで月光花とシャイニングティアの連続攻撃をもらって灰になるか。5秒あげるわ、よく考えなさい」
そう言うと、イレーヌは手を広げ、一本ずつ指折りしていった。
 チーコも1カウントごとにアドリブでクルクルと回転しながらステップを踏んでいる。
「5、4、3、2……」
「わーったよ」
ガオウがそういった瞬間、彼の頭上に紫色の魔方陣が現れた。
 全く動じる様子のないチーコとイレーヌを見る限り、攻撃魔法ではないようだ。
「今日は俺の負けだ、だが次は必ず勝つ!!」
ガオウはそう言葉を残して魔方陣の中に飛び込む。
 魔方陣はガオウを飲み込み、激しく回転した後に消えてなくなった。
 どうやら空間移動の魔法らしい。
 ガオウの姿が消え、再び遺跡の中に静寂が戻る。
「やっぱり灰にした方が良かったかしら」
イレーヌはそういいながら、レツの方を向いた。
「全く、貴方って人はどうしてこういつも怪我ばっかしてるのやら」
さっきまでとは対照的な優しい笑顔を見せながら、イレーヌはレツの顔を覗きこんだ。
「それよりも……ヒール……」
そう言いながら、レツは自分の意識がフェードアウトしていくのを感じていた。
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