鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その5【ガオウとの戦い】 □

俺は世界を……【ガオウとの戦い・その9】

焚き火の炎がレツの顔を暖かく包む。
 ガオウに受けた傷はイレーヌによってほとんど癒えていた。
 それはカイルやトウマも同じだった。二人とも安堵と炎の暖かさからかうつらうつらと舟を漕いでいる。
 ラフロイズも今は薬が効いて眠っているし、チーコはいつもの調子で毛づくろいをしている。
 13魔将を退けた。それだけでも十分な快挙なのに、レツの心は晴れなかった。
 レツの目の前で横たわるタイガとカッツ。
 カイルとトウマがイレーヌの回復魔法ですぐに意識を取り戻したのにもかかわらず、タイガとカッツはいまだに目を覚まさない。
 イレーヌいわく、ただの疲労だろうから寝かせておけば良いらしいが。
 彼女の丁寧な回復魔法のおかげで、二人の傷はほとんど癒えていた。
 首筋の傷もあらかたは消えたが、まだ微かに残っている。
 これもガオウの呪なのかと考えると、レツは二人から目を背けたい気分だった。
 そしてカッツが言った心を奪われるという言葉。
 それはどういう意味なのか。
 レツの中でさまざまな思いが交錯していて、少し混乱気味になっていた。
「とりあえず、勇者の従者就任おめでとう」
イレーヌがレツに祝いの言葉をかける。
 だが、レツは素直に喜べなかった。
 ガオウに標的にされた二人への懸念、そしてタイガとカッツを守れなかった不甲斐なさ。
 本当に勇者の従者なのかと自分で問いたくなる。
「あなたは良く戦ったわ。あれだけのクラスの魔物よ。あの猫ちゃんが月光花を発動させていたから私も強気に出られたけど、そうでなければ私も勝てたかどうかわからなかったわ」
「いや、イレーヌがいなきゃ俺たち皆殺しにされてた。サンキューな」
「弱気だなんて、貴方らしくないわよ」
イレーヌは落ち込んでいるレツを励ますかのようにあえてきつい口調で言った。
「しかし、イレーヌが行方不明の学者だったとはな」
「遺跡の調査中に魔物に群れに襲われてね。応戦しながら出口を目指していたら、貴方たちに出会った次第よ」
「俺の悪運もまだまだ捨てたモンじゃねーな」
レツはそういうと、久しぶりの笑顔を見せた。
 レツの笑顔を見たイレーヌも安堵の表情を見せる。
「俺たちはパラディアに引き返そうと思ってるんだけど、イレーヌはこれからどうするんだ?」
「私も研究用の道具がかなりお釈迦になっちゃって、どこかで買いなおさなきゃいけないのよね」
「ならさ、途中まで一緒にいかねーか?」
レツの問いかけに、イレーヌは少し困った様子で顎に手をやった。
「パラディアまで歩くの?」
「ああ。タイガやカッツは俺とカイルが背負っていくつもりだ」
「パラディアに戻ろうと思ったら2日はかかるわ。でも雷の国なら夜明けに移動を開始すれば昼前には国境に到着するわ」
「雷の国にか?」
イレーヌの言葉にレツは同様を隠せなかった。
 雷の国と光の国は国交がない。つまり、勇者の入国を認めてくれるかどうかわからないのだ。
 それに雷の国には鋼の巨人が動き回っているとか、妙な噂やデマが流布していてレツも一度行ってみたいと思っていた地域の1つだ。
「距離的にはそうだが、問題は光の国と雷の国が国交がないことだ。易々と入国を許可してもらえるとは思えないが」
二人の間に割って入ったのは目を覚ましたカイルだった。
 砕けた鎧の隙間からのぞくカイルの肌がガオウの破壊力と、イレーヌの回復魔法の凄さという相反する二つをレツに思い知らせてくれる。
 せっかく雷の国へ行く流れになっていたのに、水を差そうとするカイルにレツは内心少し腹が立っていた。
「そうねぇ。闇の国とは国交があるから、私はパスポートと観光ビザで入国できるんだけど……」
「そこは任せるニャ」
今度はチーコが肉球を誇示するかのように右手を挙げた。
「怪我人もいることだし、勇者が意識不明って言えば人命優先で入国許可してもらえるはずニャ」
抜かりはないといった様子で肉球を見せるチーコ。
「チーコがそういうなら、俺も雷の国へ行ってみたい」
レツはカイルやイレーヌの前ではっきりと自分の意見を口にした。
 雷の国へ行きたいのは好奇心だけの話ではない。
 雷の国は魔法ではなく、機械を使うことで発展した国である。
 もしかしたら、機械の力でレツやカッツの武器の秘密もわかるのかもしれない。
 国交のない国に入国したと教団が知ればなんと言われるかわからないが。
 それでもカッツの言った『心が奪われる』という言葉の意味がわかるかもしれないということの前にはさしたる問題に思えなかった。
「光の国でわからないことも、雷の国でならわかるかもしれない」
「何を知りたいの?」
イレーヌの問いかけに、レツは意を決したように顔を挙げた。
「勇者のことだ。勇者の武器を使った後のタイガの異変とか、カッツの心を奪われるっていう発言とか、勇者に関して俺わかんないことばっかだ」
「おい、レツ!!」
制止しようとするカイルをものともせずレツは話を続ける。
「俺、タイガを守るって心に決めたんだ。そのためには魔物と戦うのと同時に、勇者のこともちゃんと知っておく必要があると思うんだ。勇者の武器を使うたびにタイガやカッツは弱っていく。その衰弱が勇者の死因の大半だってある人から聞いた。じゃあ、何で弱るのか、勇者を死から守る方法はないのか俺は知りたいんだ」
イレーヌはレツの決意を聞き、納得したように微笑んだ。
「やっぱり貴方はただの勇者の従者で終わる人ではなさそうね。私の知り合いで勇者の武器を研究している教授がいるわ。彼女に会って、勇者の武器を見せればきっと何かわかるはずよ」
「そ、その人に合わせてくれねーか!?」
「その教授は闇の国の私の所属する大学に勤めているわ。彼女は基本的に学内にいるから、大学に行けば会えるはずよ」
イレーヌの一言一言を目を輝かせて聞いているレツ。
 そんなレツと話しているイレーヌもなんだか嬉しそうだ。
「闇の国は雷の国と隣接しているわ。そのまま雷の国経由で行けば早いわよ」
「あ、案内してくれるか?」
「いいわよ」
レツの申し出をイレーヌは快く快諾してくれた
 その傍らで雷の国に続いて、光の国と関係が良くない闇の国へ入国することを決めたレツをカイルが苦々しい表情で睨み付けていた。
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