鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その6【雷の平野で】 □

俺は世界を……【雷の平野で・その1】

 夜が明けると同時にレツ達は雷の国との国境を目指して歩き出した。
 タイガとカッツがまだ意識が戻らないため、魔物との戦闘を避けるように遺跡の中を進む。
 レツがタイガを、カッツはカイルがそれぞれ背負った。
 憔悴しきったラフロイズは同じ女性であるイレーヌが手を繋いで歩いていく。
 状況は決していいものとはいえなかったが、それでも雷の国という希望があるためレツ達の表情は暗くなかった。
「なあ、イレーヌ。雷の国ってどんなところだ?」
レツが尋ねると、イレーヌは一瞬考えた後に説明を始めた。
「あの国を始めて見る人は必ず驚くわね。空が見えないくらいの建物が立ち並んで、いろいろな機械がそこらを走り回っているの」
「機械?」
「実際に見ればわかるわ。ほら」
イレーヌの指差す方向に、朝霧の隙間から朝日に照らされた巨大な門が現れた。
 とてつもなく大きな金属製の門。大きさだけならパラディアといい勝負だが、こちらの門は磨きたての金属のようにピカピカと光っていた。
 その左右には白い城壁が延々と続いている。
 あまりのスケールの大きさにレツは思わず息を呑んだ。
「さっさと行くニャ!!」
思わず足を止めて門に見とれていたレツはチーコに急かされて慌てて歩き出した。
 門の前の広場に到着すると、そこは人っ子一人おらず静まり返っていた。
 たいていの国境の門の前は人でごった返している。
 だが国交がなく、両国の人の出入りが厳しく制限されている以上、ここを利用する人は少ないのだろう。
 レツ達が門の前に行くと、頭上に設置されていた箱に少女の顔が現れた。
 美少女と呼べるかわいい子だったが、まるで人形のような無表情の少女だった。
「は、箱から人の首がぁ!?」
思わず叫ぶレツ。
 驚くレツ達とは対照的に、チーコやイレーヌはほとんど驚いていない様子で、そんな彼らを見てくすくすと笑っている始末だ。
「あれはモニターといって、これは遠くの風景を映す機械よ。ここに移っている人は遠くの部屋の中にいるのよ」
「そ、そうか」
イレーヌの説明を聞いてなんとなく落ち着いた気になったレツは、頭上のモニターを見上げた。
「お、俺達を雷の国へ入れてほしい。けが人がいるんだ!!」
「残念ですが、光の国との協約により、勇者を本国へ入れることはできません」
レツの申し出をモニターの女性は冷たい口調で断った。
 あまりに無機的な反応に文句を言おうとしたレツの前にチーコが割って入った。
 振り向いて任せろといわんばかりに肉球を見せたチーコは、再びモニターと向き合った。
「今勇者達は昏睡状態にあるニャ。けが人の入国を拒むことは、国際協約第12条3項の人道的救済の義務の項目に違反すると思うニャ」
「ですが勇者は……」
「あの項目に勇者の例外事項はなかったニャ」
チーコに言い負かされたモニターの女性は言葉に詰まる。
 逆にチーコは自慢げに胸を張っている。
「わかったわ。入国を許可します」
モニターの女性とは別の声が門に響く。モニターの声よりは幾分かは人間味のある声だった。
 それと同時に門が誰もいないのに地響きを立てながら勝手に開き始めた。
 これも雷の国の機械なのかと感心しているうちに、巨大な門が人が通れる分だけ開いた。
 レツ達はその門を恐る恐る潜る。
 その先は、金毒に覆われた巨大なホールだった。
 いたるところに先ほどあったモニターがさまざまな映像を映し出しており、それ以外にも見たことのない機械がせかせかと走り回っている。
「病院へ案内します。足元のラインに従って歩いてきて」
その言葉のとおり、レツの足元に赤いラインが表れた。
 それは部屋の中のある出口へと繋がっているようだった。
 レツ達は赤いラインに従って歩き、その出口の前に立った。
 予想通り勝手にドアが開き、レツ達はガラスのチューブの中に案内された。
 外には幾何学的な巨大な建物が立ち並び、空はわずかにしか見えない。また、無数の鳥のような機械が空を行き交っている。
 イレーヌのいうとおり、レツにとっては驚きの連続だった。
「すげー、俺もナビゲーターやってるけど、ここ来るの初めてなんだよなぁ」
トウマがガラスの壁をべたべた触りながら興奮気味につぶやく。
 雷の国へ行くと決定したときは不機嫌だったカイルもその風景をみて圧倒されているようだった。
 皆が皆、周囲の風景を足を止めて眺めている。
 だが、立ち止まって周囲を眺めていても、なんの問題もなかった。
 なぜなら歩道が勝手に動いているからだ。もう何に驚いていいのかレツはわからない状態だった。
「この先が病院よ」
女性の声のとおり、目の前に現れたガラスのドアが自動で開く。
 そこを通ったところに現れたのは、すべてが白で埋め尽くされたロビーのような部屋だった。
 受付のようなテーブルの前に立っていた二人の女性。
 一人はモニターに映っていた少女。そしてもう一人は小さなめがねをかけた栗色の髪の女性だった。
 その服は妙にテカテカと光沢を放つワンピースであった。
「ようこそ、雷の国へ。私はこの国のアドミストレーターのステラ・ミルキーウェイ。隣のこの子はベガ。我々はあなた達を歓迎します」
ステラと名乗った栗色の女性はにこやかに微笑んでレツ達に歓迎の言葉を贈った。

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