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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その6【雷の平野で】 □

俺は世界を……【雷の平野で・その3】

 頬を撫でる風が彼女の栗色の髪の毛をなびかせる。
 栗色の髪、知性的な瞳。この国のアドミニストレーター(管理人)である彼女は、何か物思いに耽るようにビルの屋上から風景を眺めていた。
 彼女の背後から誰かが階段を登ってくる足音が聞こえる。
 振り向くと、そこにいたのは看護服に身を包んだベガの姿があった。
「ステラ様、勇者二人の処置が完了いたしました」
「ありがとう」
ステラはベガに感謝の言葉を述べる。
 それだけの言葉なのに、ベガはレツ達の前では決して見せない満面の笑みを見せた。
 ステラも彼女の笑顔を見て、柔らかな笑みを返す。
 ステラは再びビルの風景の目をやった。
「このタイミングで勇者が緊急入国してくるとはね……」
ステラはそういいながらため息をついた。
 レツ達の前では何事もないように振舞っていたが、内心は勇者の入国に焦っていた。
「やはり、光の国からの諜報員なのでは……」
「私も最初はそう思ったわ。でも、そんな重要任務に闇の国のエルフや月猫族を同席させるとは考えにくいわ」
「月の国や闇の国はどちらかというと、我々よりのスタンスですからね」
ベガの言葉に、ステラは小さくうなずいた。
「だから今回の訪問は本当にただの偶然だと私は考えてはいるんだけど……」
「どちらにしても、アレを光の国に知られるリスクを負ったことに変わりはありません」
「でも、あそこで逆に頑なに入国を拒めば光の国に懐疑の念を与えることになる。ここでうまくやり過ごすことができれば、しばらくは私達から注意の目がそれることになるわ」
「そうだといいのですが……」
ステラの言葉に対して不安げな表情を見せるベガ。
「何か問題でも?」
「勇者二人の処置をしているときに、二人の首筋に13魔将から受けたと思われる刻印が……」
「ガオウの狩りの刻印?」
「はい」
ベガの答えを受けて、ステラは困った様子で親指をかんだ。
 ガオウの狩りの刻印。つまりそれは勇者二人がガオウに付け狙われているということの証なのである。
「つまり、このタイミングで13魔将が入り込んでくるのね」
「その可能性は高いと思われます」
ステラの言葉にベガが相槌を打つ。
「勇者達から隠し通せても、魔物にアレの存在を知られたら本末転倒ね。ベガ、すぐに防衛システムのフェイズを最高レベルに上げて魔物が現れたと同時にすぐに迎撃が取れる準備を」
「はい」
「それと」
ステラの命を受けて走り出そうとするベガにステラが言葉を付け加える。
 彼女の視線はいつもとは異なり鋭く、冷たい輝きを放っていた。
「私用にヘカトンケイルシルエット、それと貴方も戦闘用の武装の準備をしておいて」
「え?」
「状況によっては私達で13魔将を討つわ」
「了解です」
ベガは凛とした表情で敬礼を行うと、パタパタとスリッパの音を立てながら階段を下りていく。
 残されたステラは覚悟を秘めた表情で雲ひとつない空を見上げた。
「アレは私達の国にとって、そしてエウルディーチェとの約束を守るために不可欠なもの……今知られるわけにはいかないの」
ステラはそう呟くと、再びビル風にその身を委ねた。


 それと時を同じくして、二匹の魔物が国境の丘から雷の国の門を見下ろしていた。
 一匹はガオウ、もう一匹は体長4mはろうかという巨大なブタの怪物だった。
 引き締まった体つきのガオウとは対照的に、ブタの怪物の方は脂肪と分厚い皮に覆われ醜悪な雰囲気をかもし出していた。
 その口からは絶えず涎が流れ、常に食べ物を口の中に放り込んでは食べている。
 だが、その巨体から繰り出される攻撃がいかに凄まじいかは誰もが想像できるだろう。
「いいか、あそこにオレサマがマーキングした勇者が二人いる」
「ゆ、勇者、おで、ごろす!!」
勇者という言葉を聞いた途端、ブタの怪物が急に暴れだす。
 さすがに潰されてはかなわないと思ったのか、ガオウも思わず距離をとった。
「まぁ、落ち着け」
ガオウがなだめる様にブタの怪物に言葉をかける。
「今回の目的は勇者を死なない程度にいたぶることと、勇者の仲間を今度こそぶっ殺すことだ」
「ゆ、勇者、ごろさねーのか?」
「ああ。まだまだ強くなってもらわねーとな」
ブタの魔物の問いかけにガオウはそう答えると、不敵な笑みを見せた。
「そういうわけだから、お前にも頑張ってもらうぜ、ブブリィ」
ガオウが名前を呼ぶと、ブブリィと呼ばれた魔物は嬉しそうに飛び跳ねた。
 巨体をジャンプさせながら近寄ってくるブブリィに、ガオウは薄ら笑みを浮かべながら距離をとる。
 いくらガオウといえど、ブブリィに潰されてはひとたまりもないのである。
「ま、まあ、落ち着け。俺潰しても怒られるだけだぞ?」
「わ、わがった」
「雷の国の連中に13魔将の恐ろしさ、思い知らせてやろうじゃねーか」
「おー!!」
「だから跳ぶなつってんだろうが!!」
再び飛び跳ねたブブリィから、ガオウは怒鳴り声を上げながらできる限り距離をとった。
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