鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その6【雷の平野で】 □

俺は世界を……【雷の平野で・その4】

 タイガは目を覚ますと、目をパチクリしながら周囲をゆっくりと見回す。
 だが、自分がどこにいるのかわかってないようでさらに見回す。
 そして数秒後、何かを思い出したようにベッドから飛び起きた。
「ガオウは!?ガオウはどうしたんだよ!?」
タイガはそう叫んでガオウを探そうと立ち上がろうとしたが、すぐに膝を押さえて蹲った。
 勇者の武器の力を解放した直後はたっていることすら難しいほどに体にダメージを受ける。
 まともに立ち上がることすら難しいはずだ。
「大丈夫だ、ガオウはチーコと偶然居合わせた俺の知り合いのおかげで追っ払うことができたさ」
レツの言葉を聴くと、タイガは安心したような、それでいて落ち込んだような表情を見せてベッドに座り込んだ。
「そっか、俺また負けちゃったのか……」
タイガは小さく呟くと、自分で投げ出した布団を頭からかぶって丸まった。
 ガオウに敗れたことはタイガなりにかなりショックのようだ。
「何いってんだよ、生き延びることが勝つことだろ?」
「……勇者は戦わなくちゃいけねーもん」
「ちゃんと戦ったじゃねーかよ。お前が戦ったおかげでチーコの魔法の布石が完了して、イレーヌが駆けつける時間がつくれたんだからさ」
レツはタイガに慰めの言葉をかけながら、頭の部分を布団の上からやさしく撫ぜた。
 最初は手足を引っ込めた亀のように蹲っていたタイガだが、頭を少しだけ出してレツの顔を見上げた。
「……本当?」
「タイガもカッツもよく戦った。俺が保障する」
レツが力強く答えると、タイガの表情に明かりがともったように笑顔が戻った。
 そして布団の中から上半身がもぞもぞと出てきた。
「ここ……どこ?」
「ここは雷の国だ。ここならガオウも簡単には手出しできない」
レツが直にタイガの頭を撫ぜてやると、再び満面の笑みを見せた。
 しばらく頭を撫ぜ続けていると、隣で布がこすれる音が聞こえた。
 横を見ると、カッツが布団から上半身を起こしていた。
「起きたか、カッツ」
レツが声をかけると、カッツは無表情のままチラリとレツの顔を見て再びベッドに横たわった。
 タイガ同様にカッツも相当消耗しているみたいだ。
「……ガオウのマーキング」
ベッドに横たわり、右腕で顔を隠しているカッツが言葉を漏らす。
 彼の言葉にタイガもビクっと体が反応した。
「俺たちについてるんスよね?」
カッツの質問に、レツは答える覚悟がなかった。
 ガオウがタイガとカッツの首筋につけた噛み跡。あれはガオウなりの獲物のしるしに違いない。
 何故あの場で殺さなかったのかはわからないが、今後も自分たちを狙ってくるに違いない。
 カッツも、そしてタイガも薄々そのことに気づいているのだろう。
 だからこそ、実際に口にするのは憚られたのだ。
 ラフロイズはソファーをベッド代わりにして寝息を立てているし、カイルとトウマも疲れていつも間にか仲良く転寝をしている。
 病室の中にいやな沈黙が流れた。
「レツさん達は俺をおいて早急にこの国を出国してください」
「何いってんだよ!?」
カッツの申し出にレツは思わず仰天して声を荒げた。
「ガオウの狙いは俺たち二人だ。つまり、俺たちの行くところに奴が現れるってことなんスよ」
「だったら、皆で一緒に行動したほうが……」
「俺にとっても奴は獲物なんスよ。他の連中に邪魔されたくないもんで」
カッツはレツの言葉をさえぎって狂気に満ちた不適な笑みを見せる。
「13魔将は勇者にとって最高の獲物なんスよ。何もしなくたって13魔将が勝手に寄って来るならこんなチャンスはないっしょ」
「お前だってガオウの強さをその身で味わっただろう!?」
「そうッスね」
「なら……」
レツの言葉をカッツは鼻で笑う。
「俺の生きる目的は勇者として魔物と戦うことだ。その頂点にいる13魔将を倒せるのなら、俺は武器の力を完全解放して死ぬことだって……」
「……だめだよ」
カッツの高慢な演説をとめたのは、タイガの悲しげな一言だった。
「一人で戦って、一人で死ぬなんて寂しいこというなよ……」
カッツはタイガの言葉に言い返す様子もなく顔を背けた。
 その顔にさっきまでの狂気や戦いを求める様子はない。
「自分を囮にしてもう一人の勇者を逃がそうとする気持ちは理解できるけど、そういう自己犠牲をタイガ君は望んでいないのではないかしら?」
部屋の外から急に声が聞こえる。
 レツとタイガが振り向くと、病室の戸口にステラとベガが立っていた。
 彼女の手には見舞いに着たのか、花束を手にしていた。
 痛いところを突かれたのか、カッツは気まずい表情のまま彼女から顔を背けていた。
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