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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その6【雷の平野で】 □

俺は世界を……【雷の平野で・その9】

 ガラスで覆われたトンネルの中を、レツ達一行は動く歩道に乗って移動していた。
 その先頭でバスガイドの格好をしたベガがテキパキと観光地の説明をしている。
「この雷の国の起源はこの世界の創世の時と同じといわれています。守護女神メッカラの力により、国土のいたるところで放電、落雷が数多く起きています。我々はその電気のエネルギーを安定させ、機械の動力とすることで繁栄してまいりました」
ベガが淡々と説明を続ける。
 普段は不気味な抑揚のない口調が、こういう説明の場面ではかえって都合が良かった。
 そんな彼女の説明を一心不乱にメモに書き込むトウマ、雑誌を片手にあの店はああだと語り合っているイレーヌとチーコ。
 そしてそんな二人の後ろから覗き込むように雑誌を読んでいるカイル。
 タイガはガラスの壁に顔面をくっつけそうな近さで外の風景に興味津々な様子で眺めている。
 皆、それぞれに休日をエンジョイしているようだ。ただ一人を除いて。
「で、やっぱりアイツはあんな調子なわけか」
レツはため息をつきながら、通路の真ん中に立ってただぼんやりと通路の先を眺めているカッツに視線を向けた。
 彼の何かで濁った目には、雷の国の風景は全く映っていないようだった。
 まるでただ時間が過ぎるのをまっている、レツにはそう見えた。
「やっぱこういうのは苦手か?」
カッツの隣に立って、声をかけるレツ。
 カッツはフードの中から一瞬レツを見ると、すぐに視線を通路の奥に戻した。
「……ラフロイズ」
「え?」
「ラフロイズはどうしたんスか?」
カッツの意外な質問に戸惑うレツ。
 まさか彼が自分以外の他人を気にかけるとは予想だにしていなかった。
 それも明らかに仲が良さそうに見えなかった二人の片割れのラフロイズのことをである。
 確か、彼女は未だに体調が良くなっていなくてホテルで休んでいたはず。
「ラフロイズは部屋で休んでるんじゃないか?」
「そうっすか」
カッツはそう答えると、初めて視線を通路の奥以外に向けた。
 その先には食べ物やらしき店が並んでいた。その店先にはカッツやタイガくらいの子供が何人も集まって何かを話している。
 きっと何を食べようか相談しているのだろう。
 他愛ない日常の風景をカッツはずっと眺めていた。
「ラフロイズの奴、ああゆう店に行くの好きだった」
「え?」
カッツはそれだけを言うと、再び視線を通路の先に戻してしまった。
 レツが何か声をかけようとしたが、彼の雰囲気は普段の獣のような威圧的なものに戻りつつあった。
 今回もだめかと諦めかけていたそのとき、ふっとカッツの雰囲気が緩んだのに気がついた。
 彼のほうを見ると、彼の目の前にさっきまで夢中で外を見ていたタイガが立っていた。
「カッツはどっか行きたい場所ある?」
「行きたい場所?」
「これからベガがスゲー場所案内してくれるんだってさ。空一面ピカピカ輝いてるんだって」
タイガはそういうと、有無を言わさずカッツの手を掴んでさっきまで自分がへばりついていた窓に引っ張っていった。
 戸惑いながらもタイガについていったカッツは、一緒に外の風景を見始める。
 二言三言だが、タイガと言葉を交わして一緒に外を見始めるカッツ。
 こういうことは同じ勇者であり、同年代であるタイガのほうが向いてるのだろう。
「皆様、間もなくセントエルモの裾野に到着いたします」
ベガのアナウンスと同時にレツ達が進んでいた床がトンネルの中に入り、周囲が暗闇に包まれる。
 数秒間の暗闇の後、トンネルから抜けたレツ達は幽玄という言葉にふさわしい風景を目にすることとなった。
「すっげー」
レツは思わず自分が言葉を漏らしていることに気がついた。
 空一面を雷雲が覆っている。
 だがそんな天候なのに、雲の中一面を絶えず雷が走り回りその色は濁った黄色ようだった。
 霧雨の地面には背の短い草ところどころに芝生のように生え、たまに見かける枯れ木とあわせてこの世の風景とは思えない雰囲気を醸し出している。
 そして極めつけは、木の枝の先端や岩のてっぺんなどに青白い炎がまるで死人の霊魂のようにユラユラと燃えているところだった。
 一瞬自分が死者の国に来ているかのような錯覚に陥る風景だった。
「ここは現在観光地区として開発を薦めているセントエルモの裾野です。ここは一年の多くが霧雨の日で、雷の国の中でも特に落雷、放電が多く、セントエルモの火現象が多く発生することからこの名が付けられました」
そう説明するベガが持っている彼女の旗の先端にも青白い炎がジュウジュウ音を立てて揺らめいていた。
 それを見て一瞬たじろぐレツとタイガだが、ベガは一瞬炎を見ただけで平然と再び旗をヒラヒラ降り始めた。
「大丈夫です。基本的にセントエルモの炎は無害です」
珍しく微笑みながら手馴れた様子で旗を振って炎を消すベガ。
 ここが死者の国なら、さながら人形のような彼女は死者の国の水先案内人のようである。
 バスガイドの格好が全て全てをぶち壊しにしているが。
「ここで2時間ほど自由時間といたします。基本的に自由行動ですが、あまり遠くに行かれるのは自粛くださる様お願いいたします」
「えー」
タイガが不満の声を上げると、ベガは申し訳ありませんと深々と頭を下げて謝罪した。
「べ、別にいいから頭あげてって!!」
「まだゴミ掃除が完了しておりませんので、タイガ様達が危険な目にあわれないようにという配慮です」
「ご、ごみそうじ?」
「はい、ゴミの掃除です」
なれない謝罪のされ方をされて慌てるタイガに、ベガは言われたとおり頭をあげて意味深な笑顔を見せた。
 初めて見せた人間らしい深みのある表情に、レツは少しだけ驚きを感じていた。
「ま、ここら辺でも十分すげーじゃん。ここら辺3人で歩こうぜ」
レツはタイガとカッツの肩に手を回すと、少々強引に歩き出した。
 タイガはすぐにこちらに歩調を歩き出したが、カッツの方はなかなか歩調をあわせず引きずられるように進んでいく。
 だが、やがて観念したのかカッツも一緒に歩き出す。
「おい、待てって!!管理人を置いていくな!!」
3人で勝手に歩いてく様子を見て、カイルが慌ててついてくる。
 勇者と従者と武器の管理人は常に一緒に行動すべし、そんな規約があったのを思い出した。
 タイガとカッツを引きつれ、後ろからは仏頂面のカイルに監視されながらレツは黄泉の草原を歩き始めた。
 後ろではトウマが必死にベガからいろいろと話を聞きだしているようだし、チーコとイレーヌは木の下に腰掛けて濡れない場所で風景を楽しんでいるようだ。
「カイルも今日くらいは安いんだ方がいいぜ」
「十字騎士に休息の時などない」
レツの言葉に、カイルは不機嫌な口調で答えた。


 そんな彼らから数百m離れた岩場に、二つの影が身を潜ませていた。
 一つは獣人の少年、もう一つはそれ自体が岩のカモフラージュになりそうなブタの化け物。
 ガオウとブブリィだった。
 二人は岩場の影からじっとレツ達の動きを監視しているようだった。
「ついてねーな、俺も」
ガオウは数百m先の点ほどのレツ達をみて軽く舌打ちをした。
 その瞳が捉えていたのはベガの姿だった。最も、人間の目ではただの点でしかないが。
「どーする、勇者二匹もいるど?」
逸るブブリィを静止すると、ガオウは更に身を低くしてレツ達の様子を伺った。
「この国に入った以上、ある程度の警護がつくことは予想してたがな……まさかあの『ベガ』だとはな」
「ガオウ、どーずる?このまま突っ込むか?」
「ま、どーせあの女に気付かれてるだろうしな。正攻法しかねぇ」
ガオウはブブリィの問いかけにそう答えると、ペロリと自分の右手の爪を舐めた。
「こーなりゃ数で勝負だ。やっぱお前を連れてきて正解だったぜ、ブブリィ」
「お、おで、部下いっぱい連れてきた。勇者ごとこの国潰すど!!」
「期待してるぜ」
ガオウがそう言ってニヤリと笑うと、ブブリィはレツ達に気づかれぬよう小さく跳ねた。
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