鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その6【雷の平野で】 □

俺は世界を……【雷の平野で・その10】

 いたるところで青白い炎が音を立てて揺らめく中、レツ達はベガの目が届く範囲でいろいろなところを散策していた。
 先が尖っているところならどこでも火がつくようで、自分が見定めた場所に火がつくのを待っているだけでも十分楽しめそうだった。
 もっとも、常に体を動かしていないと落ち着かないレツには耐えられない楽しみ方だが。
「カッツ、カッツ、背中背中」
突然タイガがカッツの背中を指差して面白そうに声を上げる。
 タイガがなぜ喜んでいるのかいまいちわからないカッツは首をかしげながら後ろを振り向く。
 すると、その無表情だった顔が一瞬にして焦りに染まっていった。
 カッツが背負っている斧の柄にセントエルモの火が青々と灯っていたのだ。
 カッツはあわてて斧を引き抜くと、手でその火を握りつぶす。
 普段感情をほとんど表さないカッツの意外な行動だった。
「へぇ、カッツも慌てることあるんだ」
決定的瞬間を捉えたタイガがニタニタ笑みを浮かべて、カッツの肩に手を回し耳元で囁く。
 カッツも見られたくないものを見られたといった感じで、恥ずかしそうに視線をタイガから逸らしていた。
 タイガの方はカッツの人間っぽいところが見られて嬉しかったのか、未だにニタニタしている。
「俺だって人間だ……慌てることぐらいある」
「俺なんか年中慌てっぱなしだぞ!!」
恥ずかしそうに言葉を吐き出したカッツの背中に、タイガが勢いよく抱きつく。
 不思議とタイガが相手だと、カッツは威圧的なオーラを発しない。
 出してもどうせ寄ってくると半ば諦めているのか、それともタイガには僅かでも心を許しているのか。
 そのどちらなのかはレツには計り知る術はなかったが、カッツがタイガが自分の傍にいることを許していることだけは事実だった。
「ああやって見ていると、本当にただの14歳の子供だな」
レツの背後でタイガとカッツの様子を見守っていたカイルが複雑な表情で呟いた。
「あいつらはいつだって14歳の子供だよ」
レツがそう答えると、カイルはああと答えて俯いた。
「なあ、このままあの二人この国に置いていかねぇか?」
「はぁ!?」
カイルが裏返った声で聞き返す。
 彼の心境はよくわかっていた。普段の自分だって同じことを言われたら同じ反応をするに違いない。
 だが、こうやって普通に遊んでいる二人を目にしているとそういう言葉が不思議と口をついて出てきてしまっていた。
「わりぃ、今のは聞き流してくれ」
「お前なぁ、思いつきで言っていいことと悪いことが……」
気まずそうにあぐらをかいて地面に腰掛けるレツに、カイルが必要に噛み付いてくる。
 流石に今の発言は冗談の類では済まされないのはよくわかっている。
「少なくともこの国ではあいつらは普通の子供だ」
「そりゃ、そうだが……」
「この国を出れば、あいつらはまた勇者として戦って、そして……」
レツはその先の言葉を言うことができなかった。
 口にしたらその先の事実を認めることになりそうだったからである。
 カイルも同様で、黙り込んだままタイガとカッツを見つめていた。
「……あの時決めたんだろ、俺達。魔物を根絶やしにするって。その為に俺達はここにいるんだろう?」
「そう……だけどよ。俺達の復讐のためにあの二人に死ぬまで戦えなんて俺には……」
カイルの問いにそう答えるレツの語気には、普段の覇気は見られなかった。
 勇者の従者に選ばれたとき、勇者と共に魔物を皆殺しにするという決意があったのは事実だ。
 たとえ勇者を利用する結果になってとしてもだ。
 だが、タイガと出会って、まるで兄のように慕う彼を見て、過酷という言葉では生ぬるすぎるタイガの運命を知って決心が揺らいだのも事実だった。
 タイガを犠牲にしてまで魔物と戦うことに意味があるのか。
 自分の復讐のためにタイガを利用することは許されることなのか、と。
「じゃあ、どうするんだ。まさか本当にこの国に置いていくわけじゃあるまい」
「アイツらがそんなこと許さねーだろうよ」
「じゃあ、どっちなんだ」
意地悪くカイルが尋ねる。
 まるで答えは一つだろうと言いたげに。
「戦うしかないだろ。あいつらの分まで、俺達が」
自分に言い聞かせるように答えると、レツは軽業師のようにあぐらの状態から飛び上がり地面に立った。
「ま、あの二人がムチャしないように俺達で守ってやりましょう」
「お前にしてはまともな回答だな」
レツの言葉に、カイルが珍しく笑顔を見せる。
 二人は少し離れた場所でじゃれあっているタイガとカッツの元に歩いていこうとする。
 だが、そこで二人は異変に気がついた。
 さっきまで無邪気に(正確にはタイガにカッツが振り回されて)遊んでいた二人が、武器を手にして周囲を警戒し始めたのだ。
 まさか敵、レツとカイルは足早に二人の下へ駆け寄る。
 二人に近づいていくうちにレツはタイガとカッツが警戒している理由を肌で感じることとなった。
「このむき出しの殺気……あの野郎か!!」
覚えのあるナイフの先端のような気配に、レツは叫んだ。
 タイガとカッツの元にたどり着いた二人は、タイガ達を守るように周囲に注意を張り巡らす。
 姿こそ見えないが、この近くにいることだけは確実だった。
 恐らくは自分達を刈り取るチャンスを伺っているのだろう。
 自分が狼に狙われて怯えている山羊のように思えて、レツは胸クソが悪かった。
「レツ兄ちゃん!!」
レツが来たことに気がついたタイガが、自分の傍に駆け寄ってくる。
 その気配の主に気付いているのだろう、珍しくレツの後ろに隠れるように位置取りをしている。
 カッツも時折首筋の傷に指を当てては落ち着きのない様子で普段よりも身長に周囲の様子を伺っている。
 二人とも気配の正体に気がついているようだ。
「レツ様!!」
異変を察したのか、ベガとイレーヌたちもレツ達の元へと走り寄ってくるのが見える。
 味方が着てくれるのは嬉しいが、相手が相手だけに安心はできなかった。
「索敵レベルをフェイズ2へ移行、全天候レーダー機動を確認。索敵、敵発見されず。索敵レベルをフェイズ3に……」
ベガが何かをブツブツ呟きながら、周囲を見回す。
 そして、近くに岩場を見定めると突然スカートの裾から大型の銃を取り出した。
 金持ちの傭兵が半分アクセサリーとして所持しているのを見たことはあるが、ベガが持っているような型は初めてだった。
 彼女が照準を定め、引き金を引くと銃口から緑色の光の矢が放たれた。
 その光はまっすぐと岩場を捉え、易々と貫いてしまった。
 爆発し、粉々に抱ける岩。その中から獣のような影が飛び出すのをレツは見逃さなかった。
「完全に姿を隠せたと思っていたのですか?」
ベガが強い口調で煙の中の影に問いかける。
 その影は観念したのか、ゆっくりと煙の中からこちらに向かって歩いてくるのが見える。
 影を覆っていた煙が引いたとき、その予想通りの人物の登場にレツは自然と鼓動が跳ね上がるのを感じていた。
「流石はベガ様ってところか?」
全身を覆う毛、鋭い爪、そして獣のような顔の少年。ガオウが再び自分達の前に姿を現したのだ。
 タイガも咄嗟に構えをとるが、その顔には僅かに怯えの色が見え隠れしていた。
 カイルやカッツも武器を手にとって構える。
「警告します。本国は法律に則った手続きを経ない入国を許可しておりません。即時退去を命じます。それに従わない場合」
「どうするんだ?」
挑発的なガオウの言葉に、ベガは表情一つ変えずに答えた。
「実力排除も辞しません」
「おもしれぇ、やってもらおうじゃねぇか!!」
ガオウが両手の爪を伸ばし、ベガに襲い掛かる。
 だがベガは一歩も臆さないどころか、突然地面を蹴って宙に跳んだ。
「安全装置の解除を確認。戦闘シークエンスへ移行、ジェットストライカーシルエットの射出を確認、エンゲージ!!」
彼女が跳んだ場所に図ったように、いろいろなものがごっちゃにくっついた物体が青い炎を吹きながらベガに接近する。
 それはベガの真後ろまで来た時、いくつかのパーツに分解し一部分は盾に、別の一部分は背中に装着された。
 全ての装着が完了したときには、すでにガオウが目前に迫っていた。
「スクラップになりやがれ!!」
ガオウの右手の爪が振り上げられ、ベガに襲い掛かる。
 その場にいたほぼ全員がベガがガオウの餌食になる瞬間を想像していた。
「攻撃軌道の計算完了、反撃可能と判断」
この期に及んでのベガの無感情なセリフ。
 だが、彼女が冷静な理由をレツ達はその目で見ることとなった。
 ベガは盾でガオウの爪を冷静に受け止める。ガオウの爪は盾を貫くことなく、盾の上を滑る。
 彼女はその一瞬を逃さず、盾に銃をしまうと、左手で盾に付属していた剣の柄のようなものを手に取った。
 それを握った瞬間柄の先端から光の刃が現れる。
 彼女は攻撃を防がれて体勢が崩れたガオウの右肩にその刃を突き刺した。
「うぎゃあああ!!」
獣のようなガオウの悲鳴が空に響く。
 ガオウは咄嗟に左手で盾を突き飛ばし、ベガとの距離を取った。
 この機を逃さず、剣から銃に持ち替えガオウに追撃を加えるベガ。
 倒れこむように着地したガオウはバネのように地面を跳ね回って光の矢をかわし、辛うじてベガとの距離を取った。
 左手で右肩の傷口を押さえ、大きく背中で息をするガオウ。
「このポンコツ人形が……!!」
「再度繰り返します。本国は法律に則った手続きを経ない入国を許可しておりません。即時退去を命じます」
一層殺気を放つガオウに対して、ベガはあくまで事務的な口調で同じセリフを繰り返した。
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