鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その6【雷の平野で】 □

俺は世界を……【雷の平野でその11】

地面に片膝をつき、大きく息をしながらこちらを睨みつけているガオウ。
 一見大きなダメージを彼に与えているかのように見えてはいた。
「やったか!?」
興奮気味に叫ぶカイルの言葉に、ベガはゆっくりと首を横に振った。
「現状の火力で敵目標に有効な打撃を与えるのは困難と推定。敵殲滅には相当数の時間がかかる模様」
ベガの報告どおり、しばらくするとガオウは何事もなく立ち上がってきた。
 彼の肩のケガは小さく焼け焦げた後だけであった。
 確かにベガが突き刺した瞬間も、光の刃が彼の肩を貫いた形跡はなかった。
 あれだけのタイミングで会心の一撃を受けてもあの程度のケガで済む相手と自分達は戦うというのか。
「くそ、化け物か!!」
 カイルは尚も健在なガオウに憎々しげに言葉を吐きかけた。
 ガオウは試すように右肩をまわすと、闘志の宿った瞳をベガに向けた。
 ベガはそんなガオウにまったく恐れる様子もなく彼を見下ろす。
 ダメージは小さかったものの、ガオウの攻撃にカウンターを入れられることに変わりはない。
 時間はかかるだろうが彼女と連携して戦えば勝機はある、レツは心の中でそう考えていた。
「さすがにこんだけの数相手にするのは骨が折れるぜ……」
ガオウはそう独り言をもらすと、レツたちを見回した。
 ベガにイレーヌにチーコ。非力ながら自分やタイガもいる。
 ガオウもそれを知って、手を出せずにいるのだろう。
 だが、それにしてはガオウに焦りの色が見られないのが気がかりだった。
 そんなことをレツが考えていると、突如ガオウがその右手を大きく天に掲げた。
「出番だ、ブブリィ!!」
ガオウが何者かの名を呼ぶ。
 次の瞬間、ガオウの背後の地面が砕け数mはあろうかという豚の魔物が地中から這い出してきた。
 ガオウにも劣らない威圧感と殺気。おそらくはこいつも13魔将。
 レツはとっさに後ろにいたタイガを抱き寄せた。タイガも少しおびえた様子で寄り添ってくる。
「ガオウ、よんだがー?」
訛りのある言葉でガオウに答えるブブリィと呼ばれた魔物。
 その巨体に比べると、人間の少年ほどの大きさしかないガオウはまさに豆粒に思えるほどだった。
「彼我の戦力差の再計算完了。戦力比逆転。32対68で我々の不利と判明」
「この国に殴りこむんだからな、さすがに一人ってわけじゃねーんだよ」
勝ち誇ったように叫ぶガオウ。
「ずりーぞ、お前!!」
トウマの抗議にガオウは悪びれた様子もなく犬のような鼻をツンと天に向かって突き上げた。
「8人で一人をよってたかっていたぶろうとしてた奴が何言ってやがる」
「う……」
正論で切り返され、返す言葉もなく悔しげに引き下がるトウマ。
 増援を得て、勝利を確信した表情でガオウはレツ達を睨み付けた。
 その威圧感に、隣にいたカイルが一歩引き下がる。
「ブブリィ、お前はベガを抑えろ。俺は勇者を半殺しにして、仲間を皆殺しにする」
ガオウはそう言って、ブブリィより一歩前に出た。
 遺跡でのガオウとの戦いがフラッシュバックして、レツは額からいやな汗がにじんでいるのに気がつく。
 だが、負けるわけにいかないとレツは戦いの構えを取った。
 タイガやカッツを傷つけられても負け、自分や仲間が負け。
 たとえ不利でもやるしかなかった。
 そうやって覚悟を決めたレツの前に、遮る様にベガが降り立ってきた。
この不利な状況の中でもベガは恐れるそぶりひとつ見せずにガオウに立ち向かっていた。
「レツ様達は至急この場から離脱してください」
突然のベガの言葉にレツも、隣にいたタイガも驚きを隠せずにいた。
「ここは雷の国です。この国にいる人を守るのがステラ様の使命。そしてそれは私の使命でもあります」
「俺達も戦う!!」
「いけません。ここは雷の国、あなた達勇者が戦う道理はありません」
戦おうと前に出ようとするタイガをベガが強い口調で諌める。
 レツ達側からは背中しか見えないが、その語気は今までの彼女からは想像もつかないほど強いものだった。
「プログラムで動くお人形さんか。哀れだぜ」
「これはプログラムではありません。私の意志です」
ガオウの嘲りの言葉を、ベガは凛とした態度で否定した。
 あまりにもきっぱりと否定され、ガオウは少し戸惑いの表情すら見え隠れしている。
「ステラ様はご自分の身をこの国の平和のために尽くすことを覚悟なされました。ステラ様に仕える私にできることは、そんなステラ様をお守りすることと、ステラ様がお守りになられるこの国を守ること。これはステラ様の意思であると同時に、私の意思でもあるのです」
強く、はっきりと答えるベガ。
 彼女の覚悟の言葉を真正面から受けたガオウは、唖然として数秒間の間身動きをすることすら忘れているようだった。
「だ、だったらまずはその大層な考えをもったままスクラップにしてやるぜ!!」
ようやく動くことを思い出したガオウが地上に降り立ったベガを指差した。
 そのガオウの動きにあわせてブブリィもゆっくりと巨体を動かし始める。
 二人を迎え撃つように盾を構えるベガ。
 彼女と共に戦おうと前に出ようと駆け出すレツ。
 だが、その傍らに二つの影がついてきていることに気付いていなかった。
「ベガ、俺も手伝わせてもらうぜ!!」
「俺も!!」
レツは自分の隣から自分の声が聞こえて、慌てて振り向いた。
 彼の隣にいたのはタイガとカッツの姿だった。二人とも勇者の武器を構えて、ガオウとブブリィを迎え撃つつもりのようだ。
「いけません、貴方達勇者は……」
「勇者とか、そんなんじゃない。俺は皆を守りたいから戦うんだ」
「ですが……」
「これは俺がここで決めたことなんだ」
タイガはそういって胸に親指を当ててニカッっと笑った。
 カッツは無言で斧を構えている。その目にはガオウとブブリィしか映っていないようだ。
 ベガは二人の決意が簡単には揺るがないと察したのか、ベガは再び二体の魔物と対峙した。
「わかりました。ですが戦力差が大きいため、サポートが回らない恐れがあります。くれぐれも無理をしないように」
「おう!!」
ベガの注意にタイガが元気よく答えた。
「ったく、世話がやけんなぁ」
悪態をつきながら前に出てきたのはトウマだった。
 その傍らには盾を構えたカイルもいる。
「タイガやお前にだけいい格好させるさせる訳にもいかないだろう」
盾の隙間から覗くカイルの表情は何故か笑っていた。
 そんな彼の背後にはイレーヌとチーコも立っていた。
「まったく、無茶しかしない子なんだから」
「これに関しては時間外手当をつけてもらうニャ」
イレーヌもチーコもあまり乗り気ではないが、戦うつもりであることに違いはないようだ。
 その場にいる全員の戦う意思が固まったのを見届けたガオウは、満足げに右手の爪を伸ばした。
 歓喜と闘志が入り混じったガオウの表情がレツの鼓動を一層激しくさせる。
「さぁ、おしゃべりはおわったようだな。なら、いかせて貰うぜ!!」
ブブリィを踏み台にして、ガオウが大きく跳躍する。
 頭上から襲い掛かるガオウに迎撃の体勢を取るレツ達。
 だが、そんなものお構い無しに降下してくるガオウ。ついに激突が始まる、レツがそう思った瞬間だった。
「おわあああああ!?」
突如ガオウが大声を上げて空中で体勢を崩す。
 その原因は突如ガオウの周囲全方向を取り囲んだ灰色の突起から放たれた緑色の光線だった。
 光線はガオウの全方位から襲い掛かり、それを咄嗟に回避したガオウは空中で無理な身体のひねりをすることになったのだ。
 そして、空中で身動きを取れないガオウを狙って、彼の顔面に何者かが強烈な跳び蹴りを炸裂させていた。
 激しくキリモミ回転をしながら地面に墜落するガオウ。
 ガオウに蹴りを入れた張本人は背中のランドセルのようなものの下部から青い粒子を吐きながらゆっくりとレツ達の前に降り立った。
「ステラ様!!」
見覚えのある栗色の髪の女性に、ベガが驚きと喚起の声を上げる。
 ベガの声に、ステラは一瞬だけ振り向いて柔らかな笑顔を見せると再びガオウとブブリィの方を向いた。
「これで戦力差は67対33。戦力差逆転よ」
地面に這い蹲ったガオウにステラが冷たく言い放つと、彼を取り囲んでいた突起が彼女の背中の装備へと戻り、装着された。
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