鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その6【雷の平野で】 □

俺は世界を……【雷の平野でその12】

ガオウは血の混じった唾を地面に吐くと、体についた土を手で払ってゆっくりと立ち上がった。
 その目は血走り、闘志は消え、純粋な殺意だけがみなぎっている。
 だが、ステラはそんなガオウを冷たい視線で見下ろしているだけだった。
 ガオウはさっきの突起の攻撃を恐れてか、距離を取ったまま近づこうとはしてこない。
「この国に来て正解だったぜ。いろんな奴と戦える」
「……それだけしか知らない貴方が」
挑発的なガオウの態度に、侮蔑の感情を込めてステラが呟く。
 自分やガオウのように感情を表に出すタイプではないが、明らかに彼女は怒りの感情を見せていた。
 そう、まさに氷のような冷たさの怒りを。
「先ほど、エレクトロメリア市街にガルムタイプ、ミノタウロスタイプの魔物が現れたわ」
「なっ!?」
「おおよそは街を混乱に陥れて増援を遅らせるのが目的なんでしょうけど」
恐らくはそれがステラの怒りの原因なのだろう。
 まさか自分たちだけでなく、この国の町にも被害が及んでいたとは。
 驚くレツとは対照的に、ステラやベガはいたって冷静に振舞っていた。
「町のほうは大丈夫なのか!?」
「現在セイファート、スピキュール、プレアディスの各部隊が市民の避難誘導を完了して迎撃用に戦列を組みなおして対応しているわ」
レツの質問に、当然といった口調で答えるステラ。
 セイファート、スピキュール、プレアディスとは機動兵器の機種の名前です、とベガが耳元で囁いた。
 トラシアのときのように罪もない人々が魔物の餌食になることなく、レツは胸を撫で下ろした。
 勇者無しで国を守ってきたということは伊達ではないということか。
「そのせいで私たちだけで切り抜けなければいけないのだけれど、意味を返せば相手もこれ以上の増援は望めなということよ」
「要するに、ガオウ達を倒すチャンスってことだな」
「私にも手伝わせてもらうわ。くだらない理由で街を混乱に陥れた落とし前だけはつけないと」
ステラは栗色の髪の毛を掻き揚げると、首の後ろで纏め上げ、金属製のヘアバンドで留めた。
 どうやら本気でガオウと一戦を構えるつもりなのであろう。
「ガオウの相手は私がするわ。貴方達はベガと連携してブブリィと呼ばれる魔物の殲滅をお願い」
「気をつけろ、あのガオウって奴……」
「問題ないわ。戦闘データはベガから転送されているし、何より今の武装はガオウのようなタイプに最適化された武装なのよ」
レツの懸念に、ステラは確信に満ちた口調で答えるとガオウに視線を向けた。
 彼女が念じたのか、再び背中のバックパックから無数の突起が射出されガオウを包囲した。
 そして再び全方向から光線を発射する。
「何度も引っかかるかよ!!」
だが、空中で体制を崩していたときと違ってガオウは突起からの攻撃を小刻みなジャンプでかわしていく。
 そして攻撃の止んだ一瞬を付いてステラの喉もとめがけて飛び掛ってくる。
 いやと言うほど見せられたガオウのスピード。それそのものがすでに武器のようなものである。
 だが、ステラは冷静に背中から長い砲身の金属製の銃を取り出すとその銃口をガオウに向けた。
 再び突起から一斉攻撃が放たれる。その隙間を縫って宙に舞うガオウ。
 ステラはその瞬間を見逃さず、空中のガオウに照準を合わせ引き金を引いた。
「げっ!!」
体制を変えることのできないガオウに緑色の光線が容赦なく襲い掛かる。
 ガオウはとっさに両腕でその光線を受け止めたが、激しい光の粒子に押されて体制を崩しあえなく地上に落下していった。
 二度も土ぼこりをあげて頭から落下するガオウ。
「最適化しているという言葉の意味が理解できていなかったようね」
「……その妙なモンとてめぇの挟撃か。確かに動き回る俺みたいなのには鬼門だな」
埃まみれになったガオウがめげずに立ち上がってくる。
 ベガの時同様大きなダメージは与えられていないようだが、ガオウの動きは完全に封じられていた。
 そのことは顔に焦りの表情が見え隠れしているガオウからもよく伝わってきた。
「ベガ、アルタイルシルエットを3分後に射出するわ。貴方はそれを使って、勇者達と連携してブブリィを殲滅。できるわね?」
「かしこまりました」
ベガの即答を確認すると、ステラは背中のバックパックから光の粒子を噴出しながら宙に舞い上がった。
 敵対心をむき出しにしてガオウがステラを見上げる。
 どうやらガオウは完全にステラを標的に定めたようだった。
 レツ達から離れるように飛び去っていくステラの後を、ガオウが獣のように四本足で追いかけていく。
「さっさとミンチにしてやらぁ!!」
「不用意に背中を向けると容赦なく頭を打ち抜くわよ」
感情的に怒鳴るガオウの言葉を、ステラが冷たくあしらう。
 その二人の姿はまさに炎と氷の対決だった。
 いたるところで雷が雲の中を走る平原の彼方に二人は消えていった。
 残されたのは、ボリボリと腹を掻いてレツ達を見下ろすブブリィだった。
「ガ、ガオウいねぇげど、お、おで、ガオウの代わりにおめーらをごろずど」
涎を垂らしながら下卑た笑いを浮かべるガオウとレツ達は向かい合った。
 
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