鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その6【雷の平野で】 □

俺は世界を……【雷の平野でその13】

 レツ達の目の前に4メートル近いブタの化け物が立ちはだかる。
 威圧感こそガオウほどではないが、それでも並みの魔物とは比較にならないプレッシャーを放っている。
 13魔将の名前は伊達ではないということだろう。
「づぶでろー」
戦いの火蓋を切るようにブブリィがハンマーのような右手を振り上げ、レツとベガが立っている位置に振り下ろした。
 咄嗟に飛びのき攻撃をかわす二人。
 さっきまでいた地面がブブリィの拳によって粉砕され、土砂が空中に噴き上げられる。
 あの直撃を受けたら自分もあの地面のように粉々になっていただろう。
 攻撃の回避は容易いが、万が一攻撃を受ければ即死は免れない。
 ガオウとは全くの正反対のタイプである。
 攻撃を開始したベガが空中に舞い上がり、銃の光線をブブリィに発射するが岩の表皮に弾かれ、かすり傷すら与えられていない。
「現状の火力で目標撃破は困難。後衛と連携し、3分間は消耗戦をしかけます」
地上に降り立ったベガがレツ達に指示を下す。
 再びハンマーのように振り下ろされたブブリィの拳をレツは危なげなく回避した。
「攻撃は単調だけど、あんな腕を振り回されてたら詠唱どころじゃないわね」
ブブリィと距離を取りながらイレーヌが苦々しく呟く。
 イレーヌとチーコはブブリィの攻撃のために呪文が詠唱できないでいるようだった。
 ブブリィの腕は人間の背丈の倍近くある。そんなものを振り回していたら、精神集中して呪文詠唱などやっている暇などないのだ。
 とはいえ、攻撃は回避できても自分達ではダメージを与えることはできない。
 大木のようなブブリィの腕を受け止めることも無理である。
「づぶれろー」
今度はその両腕をなぎ払うように左右に振った。
 今度の標的はカイルやトウマを含めた後衛陣だった。
 単調で遅い攻撃のためにチーコやイレーヌは危なげなく回避する。
 だが、扇状に抉れた地面から岩や土砂が吹き飛ばされイレーヌたちに襲い掛かってきた。
「下がっていろ!!」 
咄嗟に盾を構えたカイルがチーコたちの間に割って入る。
 白銀の盾で土砂やら岩を防ぐカイル。全てを防ぎきったのを確認して、チーコ達と共にジリジリと後退する。
 いくら攻撃が単調で遅くても、あのリーチではいつどこから攻撃が来るのかわからない。
「あと2分ちょいでどうにかなるといっても、マグレあたりでもしたら即死だぞ!?」
ブブリィの攻撃を警戒しながら、カイルが弱気な声を上げる。
「お前に言われんでもわかってる!!」
ブブリィの攻撃に少しビビリ気味のカイルに、レツが叱咤の怒鳴り声をかける。
 ああゆう硬い敵には魔法での攻撃がよく効く。それも内面から破壊できる闇属性や月属性が効果的である。
 つまり、イレーヌやチーコの魔法はブブリィに勝つための必須条件なのである。
 3分間フルパワーで暴れられるのを防ぐ上でも、魔法でのダメージは与えておきたかった。
 だが、現状ではイレーヌもチーコもブブリィの攻撃を警戒するので手一杯である。
 カイルが弱音を上げるのもわからないでもなかった。
「いくどー」
間の抜けた声と共に、散々見切った振り下ろし攻撃がカッツとタイガに襲い掛かる。
 二人もブブリィの攻撃になれたのか、危なげなく余裕の様子で回避する。
 それどころか、二人は反撃の動きすら見せていた。
「動きがワンパターンなんだよ!!」
カッツが斧を振り上げ、地面に刺さった拳に叩きつける。
 カッツの斧ですらブブリィの皮膚を砕くことは叶わなかったが、その拳が地面に深々とめり込んだのがレツからでもよくわかった。
 杭のように刺さってしまった腕を抜こうとブブリィは必死だが、相当深く入ったらしくなかなか抜けそうにない。
 腕を抜こうと悪戦苦闘しているブブリィの手の甲にタイガがちょこんと乗った。
「いっくぞー!!」
地面に叩きつけられたブブリィの腕をタイガが駆け上がる。
 動きが鈍いブブリィはそのタイガの動きに反応しきれずただ眺めているだけである。
 タイガは肩の辺りまで登ると、勇者の爪を構えブブリィの咽元めがけ跳ぶ。
 そしてその爪をブブリィの咽仏めがけて勢いよく突き刺した。
「いでぇぇぇぇぇ」
勇者の武器はブブリィの咽に突き刺さり、その傷口から鮮血があふれ出した。
 ベガの攻撃でさえ受け付けなかったブブリィの肌に、タイガの爪が深々と突き刺さっている。
 ブブリィの身体に対して武器のサイズが小さすぎて、致命傷には至ってないようだが
 レツには攻撃が通った理由が勇者の武器のおかげだけではないことにすぐに気付いていた。
 全身が硬かったら身動きが取れない。つまり身動きが取れるということは……。
「よくやった、タイガ!!降りて来い!!」
レツがタイガにブブリィから下りるように指示するが、タイガは武器の爪が抜けないようで必死にもがいている。
 どうやら刺さった武器が抜けなくなったようだった。
「抜けないー!!」
パニック気味に叫びながらジタバタと暴れるタイガ。
 その様子にやっと気がついたのか、ブブリィがその巨大な掌でタイガを捉えてしまった。
 タイガがすっぽりと納まってしまうほどの巨大な掌だった。
 このまま握り締められたら、タイガは次の瞬間には血と肉の塊と化してしまう。
 レツはタイガを助けるために飛び出した。
 手にはありったけの気を、だがその気は普段のように放出するわけではなく小さなゴルフボール程度の大きさに練りこまれていた。
 毎度のことだが、ブブリィはレツの急な動きに対応できていない。
「タイガぁ!!」
レツはその気の塊をブブリィの膝の部分に押し込むように叩き込んだ。
 衝撃も、閃光も起こらず、自分の息とブブリィの息遣い、それとタイガの微かなうめき声だけが響く。
 何もおこらない、そう判断したのかブブリィがタイガを握りつぶそうとした瞬間だった。
「うぐぉぉぉぉぉ」
突如ブブリィの右膝に巨大な瘤ができ、その方向に向かってブブリィの体が傾きだした。
 気功はただ放出して攻撃するだけではない。相手の体内に打ち込んで内部から破壊することも可能なのである。
 相手の身体が硬ければ硬いほど内部の構造は存外に脆かったりする。
 それを利用した攻撃なのである。
「近づかなきゃ使えないのが難点だけど、こういうときは発勁様々ってね!!」
想像以上にうまくいったため、思わずレツは叫び声をあげていた。
「ったく世話のかかる……!!」
 その一瞬を逃さず、カッツがブブリィの手首めがけて飛び上がる。
 そしてその斧をブブリィの手首の関節めがけて一気に振り下ろした。
「いでえええええ!!」
カッツの斧が手首に食い込み、赤い血が吹き上がる。
 ブブリィの手が開き、タイガが宙に放り出される。
 レツはブブリィの身体を踏み台にして跳躍すると、タイガの身体を空中でキャッチした。
「大丈夫か、タイガ!?」
「ちょ、ちょっとダメかと思った……」
額に汗を浮かべながら安堵の笑顔を見せるタイガ。
 そんな自分達にカッツに傷を付けられていないブブリィの左手が襲い掛かってきた。
 空中で、しかもタイガを抱きかかえた状態でブブリィの攻撃をかわせるはずがない。
 レツはタイガを庇うように強く抱きしめた。
「敵関節部、他所よりも強度が35%も低いことが判明。近接戦闘で有効な打撃が与えられると判断」
そんな二人の下にベガが背中から青い粒子を放出しながら飛来してくる。
 彼女はバレルロールを描きながらブブリィの左手首に近づくと、すれ違いざまにブブリィの手首を切り裂く。
 そしてそのままスライドターンで方向を180度転換すると、自らが傷をつけた傷口にライフルで光線を数発撃ち込んだ。
 その衝撃で左手は大きく空中に投げ出される。高速でその場から離脱するベガ。
 ブブリィは地響きを立てながら仰向けに地面に崩れ落ちていく。
「サンキュー、ベガ!!」
レツが声をかけると、空中で微かに微笑むのが見えた。
 無事地上に着地したレツは、タイガを地面に降ろしブブリィから離れた。
 自分の経験からくる勘が来るっていなければ、この後アレがくるはずだ。
「にゃんにゃんにゃんの、ふ~にゃふにゃふ~、ごろごろごろの、なおなおな~」
「暗闇に住まいし闇の精霊よ、今こそ汝らの安らかな眠りを妨げる愚者に制裁の鉄槌を下せ。我が眼前の敵に集え、漆黒の刃よ!!」
予想通り、イレーヌとチーコの詠唱が聞こえてくる。
 タイガと自分達が作り出したこのチャンスを二人は見逃していなかったのだ。
 流石は自分が見込んだ二人だ。
「いくニャ、月光槍ニャ!!」
「覚悟なさい、ダークブリンガー!!」
チーコとイレーヌの詠唱が同時に終了する。
 次の瞬間、ブブリィの上空に無数の漆黒の剣と、淡く輝く槍が現れた。
 イレーヌとチーコがそれぞれに杖とピコピコハンマーを振り下ろした瞬間それらは一斉にブブリィに襲い掛かった。
 地面に倒れたブブリィの腹部に無数の刃物が突き刺さる。
 悲鳴すら上がらぬその攻撃に、レツは軽い恐怖すら覚えていた。
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