鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その6【雷の平野で】 □

俺は世界を……【雷の平野でその14】

ブブリィは光と闇の刃に貫かれ、地面に貼り付けられた形になっていた。
 その巨体は起き上がることもできぬまま、まるで岩のようにその場に横たわっている。
「やったのか!?」
「いえ、あの程度で倒せるのなら……苦労はしないわ」
思わずレツの口をついた出た言葉に、イレーヌは深刻な表情でその言葉を否定した。
 彼女の表情は、戦いはこれからといいたげな様子だ。
 そんなイレーヌの様子どおりに、ブブリィに突き刺さっていた魔法の刃が一斉に粉々に砕けた。
 楔から解かれたブブリィは腹を擦りながら、ゆっくりとその身体を起こした。
 その身体には傷一つついていなかった。
「ダークブリンガーも月光槍も身体の内部に直接ダメージを与える魔法ニャ。傷はつかないニャ」
レツの言葉を先読みしてチーコが予防線を張る。
 あれだけ身体の固い相手ではそういう類の魔法の方が効果があるのはレツにもわかっていた。
 期待していた魔法でもあの程度のダメージしかあたえられない。
 レツは改めて13魔将の恐ろしさを思い知った。
 ブブリィはさっきまでとは全く違う、怒りと殺意に満ちた目でレツ達を見下ろしていた。
「でめぇら、ごろずー!!」
ブブリィはイレーヌとチーコから受けた魔法のダメージなど殆どないといった様子で、山が震えんばかりの轟を挙げた。
 その声の圧力に、レツは一瞬吹き飛ばされそうになっていた。
 グリフィス、ガオウ、そしてこのブブリィも13魔将の名に違わぬ力の持ち主だというのか。
 ブブリィは急に息を腹がカエルのようになるまで吸い込むと、レツ達のほうに身体を向けた。
「皆さん、個別に回避を!!」
突如ベガが叫び声を挙げる。
 それと同時に、ブブリィが極太の赤い光線を口から発射していた。
 太さだけで人間の背丈ほどある紅蓮の熱線だった。
 レツは反射的にタイガとチーコの首根っこを掴んで、ブブリィが地面を抉ってできた塹壕に身を隠した。
 その刹那の後に、赤い光がレツ達の頭上を掠めて通り過ぎる。
 咄嗟に二人の上に覆いかぶさるレツ。2m以上上を通り過ぎているのに、背中が焼け焦げそうなくらいに熱い。
 しばらくして光が止み、レツは恐る恐る塹壕の中から外を覗いた。
 そこにいたのは、再び息を吸い熱線の準備をしているブブリィと、決死の形相でこちらに駆け込んでくるイレーヌの姿だった。
「イレーヌ!?」
「そこをどいて!!」
そういうや否や、イレーヌはレツ達のいる塹壕に飛び込んできた。
 その勢いでレツの顔面にドロップキックをかまし、倒れこむレツと同時に飛び込むように塹壕の中に入ってきた。
 イレーヌはレツの安否を確かめる余裕もない様子で塹壕の入り口に杖の先端を向けた。
「我らを苛みし悪しき光を遠ざけよ、レジストマジック・ブレイズ!!」
彼女が呪文を詠唱すると同時に赤い膜が塹壕の入り口を覆う。
 次の瞬間再び赤い熱戦が穴の上を通過する。だが、赤い膜のおかげか最初のような熱さは感じなかった。
 レツは噴出した鼻血を手で押さえながら、起き上がった。
「あら、ごめんなさい」
レツに気付いたイレーヌが申し訳なさそうに笑って強打した鼻と背中に癒しの光を当ててくれる。
 ヒールと笑顔に誤魔化された気もしないわけではないが、今はそんなことに構っていられる状況ではなかった。
「外にいる皆は!?」
「カッツ君とカイル君は熱線を回避するので手一杯のようね。ベガは攻撃を掻い潜って反撃しているけど……」
イレーヌの口ぶりからして、あまり芳しくない戦況のようだ。
「……トウマは?」
「ブブリィ向けの忍具があるとかいって、荷物置き場にいったっきりよ」
「この熱線の中戻ってきたらヤバいな……」
レツは思い立ったように穴から飛び出すと、ブブリィを向かい合った。
 レツの予想通り、タイガも後からついてくる。止めても無駄だろうから、あえて止めなかった。
 レツが外に出ると、ブブリィが空中を飛び回るベガに対して熱線を連続で吹きかけていた。
 だが、空中を高速で飛行するベガに対してブブリィはなかなか攻撃を当てることができず、熱線をはずすたびに光線の手痛い反撃を受けているようだった。
 このままベガが時間を稼ぐのか、そう思った矢先だった。
 でたらめに発射されたブブリィの熱線が、偶然ベガの進行方向を先読みして放った形になったのである。
 ブブリィの性格からして狙ったというよりは、まぐれ当たりだろう。
 どちらにせよ、その一撃は確実にベガを狙って直進していった。
「ベガさん!!」
タイガが叫ぶのと同時に、ベガは盾を構えた。
 熱線が盾にぶち当たり、赤い閃光が周囲に飛び散る。
 だがまもなく盾は熱線によって歪み、変形し始め、限界が近いのは火を見るより明らかだった。
 熱線をかろうじて防ぎきったと思った途端、盾は激しく爆発しベガは空中で体制を崩した。
 地表近くで体勢をとりなおすベガ。
 そこにブブリィが狙いすましたように熱線を放つ。
 だが、そんな攻撃からベガを守るものが颯爽と現れた。
 カイルである。
「カイル!!」
 目の前の光景を見て、レツは思わずカイルの名を叫んでいた。
 すでにレツの目の前ではブブリィの熱線をカイルが盾で受け止めていた。
 カイルの白銀の盾に遮られて、赤い熱線が激しく飛び散る。
 十字騎士の持つ盾は、魔力に強いミスリルの合金でできた特注品だ。
 よってブブリィの熱線のような攻撃には耐性があるのだが、その盾といえども一撃耐えるのがやっとといった感じだった。
 辛うじて全てを受け止めたカイルはがっくりと地面に膝をついた。
 彼の前に赤く熱された盾が転がる。対するブブリィは疲れを知らないのか、再び息を吸い始めた。
「まずいぞ!!」
レツはカイルの危機を察して全力で駆け出した。
 次の攻撃を受けたらカイルは文字通り蒸発してしまう。それまでにブブリィの攻撃を止めなければ。
 だが、その前にブブリィに駆け寄り膝に一撃を入れた者がいた。
 白銀の斧をもったカッツである。
 カッツはレツが攻撃を入れた箇所に的確に斧の一撃を入れた。
 その衝撃でブブリィの身体が大きく傾く。
「ナイス!!」
タイガが思わず喜びの声を上げた。
 だが、カッツの一撃を受けてもなおブブリィは攻撃をやめようとしない。
 ブブリィはありったけの息を吸い込むと、身動きの取れないカッツに向かって熱線を吐き出した。
 熱線を吐き出しながら地面に倒れこむブブリィ。
「カイル、逃げろぉ!!」
レツはそう叫んだが、カイルは熱線を睨みつけるだけで一歩も動こうとしない。
 いや、ここでよけたらベガに当たるおそれがあるので動けないのだろう。赤いマントで防ぐ体制はとってはいるが焼け石に水なのはその場にいた全員がわかりきっていることだった。
 ダメだ、やられる、そう思った瞬間、ベガがカイルの後ろから駆け出し、彼と熱線の間に割って入った。
「ベガ!!」
今度はベガの名を叫ぶレツ。
 ベガがカイルを守るように両手を広げて、熱線に立ちはだかったのである。
「AM装甲フェイズリフレクションに移行。負荷は全てジェットストライカーに、攻撃反射と自機の保護を最優先」
熱線がベガを包み込むかと思った瞬間、ベガの身体が金色に輝く。
 そして赤い熱線をその身体に全て取り込んだかと思うと、ブブリィに向かってその熱線を跳ね返したのだ。
 起き上がろうとしたブブリィにその熱線が直撃し、ブブリィは再び地面に崩れた。
「放熱間に合わず、ジェットストライカーシルエット、パージ」
ベガはそういうと、背中のバックパックを切り離した。
 流石にあの攻撃を跳ね返すのは無理があったのか、切り離されたそれは火花を散らしながら激しく炎上し始めた。
 ベガをもってしても、あの攻撃を耐えるのは一回が限界だったようである。
 ただ、ベガが無事そうに見えるのが救いだった。
 レツはカイルの元に駆けつけると、カイルに肩を貸して立ち上がらせた。
 その反対側ではタイガがカイルの身体を支えている。
「ガラにもなく……カッコつけるもんじゃないな」
肩でゼイゼイと息を切らしながら、カイルが弱弱しく笑って見せた。
 ブブリィの一撃は耐え切ったものの、傷は決して浅くないに違いない。
 レツは再び起き上がろうとするブブリィを苦々しく睨んだ。
 カイルは見てのとおり身動きが取れない、ベガは空を飛ぶ術を失った。
 今度ブブリィの攻勢が再開すれば、誰かが命を落とすのは避けられないだろう。
「ふはははははは、待たせたな諸君!!」
急にトウマの声が、雷雲轟く空にこだまする。
「あそこだ!!」
タイガがそういって指差す先には、人の頭ほどの玉を抱えたトウマが不敵な表情を浮かべながら岩の上に腕を組んで立っていた。
 もしかして、あの玉がイレーヌが言っていたブブリィ向けの道具なのだろうか。
「覚悟しろよ、このオレサマの切り札見せてやるぜ!!」
トウマは格好をつけたポーズでブブリィに対してビシリと指を指した。
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