鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その6【雷の平野で】 □

俺は世界を……【雷の平野でその15】

 あまりにもド派手な登場の仕方に、レツ達だけ出なくブブリィの注目すら一身に浴びてしまったトウマ。
 当然ブブリィは一気に息を吸い込み、その矛先をトウマに向けた。
 それを木の上から見下ろすトウマ。
 まさか、トウマはあの熱線のことを知らず、あの位置にいれば安全だと勘違いしているのでは……。
 ブブリィから20mも離れていないあの位置では発射を見てから逃げていては間に合わない。
「トウマ!!ブブリィは口から赤い熱線を吐く!!早くそこから離れろ!!」
レツが叫んでもトウマは木の上から降りようとしない。
 その間にもブブリィの口の中に赤い光が蓄積され、今にもトウマを貫かんとしている。
「この、トウマ・シングウジ様赤字覚悟の秘密兵器、たっぷりとくらいな!!」
トウマはそういうと、小脇に抱えていた人間の頭ほどの玉をブブリィに投げつけた。
 砲丸投げの要領でぶん投げられたその玉は、放物線を描いてブブリィの額に直撃した。
 激しい閃光を伴いながら玉が破裂すると、中から銀色の紙のようなものが舞い上がりブブリィの身体の周囲を覆った。
 そんなものにお構いなく熱線を発射するブブリィ。
 だが、熱線は直進することなく無数に拡散し、銀色の紙吹雪の中を縦横無尽に乱反射していく。
 その熱線の一部がブブリィの身体を焦がした。
「あぢぃー!!」
己の熱線を身に受けて身体をよじるブブリィ。
 再び熱線を吐き出すが、その攻撃は同じ末路をたどってブブリィに跳ね返っていく。
 トウマはその様子を確認すると、一目散にブブリィに駆け出していく。
 手には柄に紙で何かを巻きつけているクナイが。
「あんちゃん達はそこにいて!!あの中で戦うにはコツがいるから!!」
レツ達の横をすり抜ける際にそういい残すと、トウマはその紙吹雪の中に飛び込んでいった。
 宙を舞う紙切れは鏡のようにトウマを映し、さながらトウマが分身をしているかのようだった。
 どれが本物かわかっていないのか、ブブリィは見当違いの方向をひたすら攻撃している。
 その間にトウマはブブリィの懐に飛び込んでいた。
「てめぇの弱点は把握済みだ!!」
トウマは右膝の関節の部分にクナイを投げつけると、ブブリィの全力で紙吹雪の中から飛び出してくる。
 次の瞬間ブブリィの右ひざで爆発が起こり、ブブリィの悲鳴が周囲に響き渡る。
 遠くからなのではっきりとはわからないが、ブブリィの右肘の皮膚が抉れ赤い肉が露出していた。
「なんかトウマかっこいいかも……」
隣にいたタイガがそう言葉を漏らして、憧れの眼差しでトウマの獅子奮迅の戦いを見守っている。
 言葉は悪いが、確かに今トウマがやっている戦いはタイガの戦いとは対極にある頭脳戦ともいえるトリッキーな戦い方である。
 そんな戦い方に自分だけでなくタイガも見初めてしまっているのだろう。
「次は膝!!」
トウマはそう叫ぶと、ブブリィの左膝にクナイを投げる。
 それが突き刺さり、先ほどと同じ要領で爆発を起こす。
 今度は表皮を吹き飛ばすには至らなかったが、相当のダメージらしくブブリィは片膝をついたまま身動きが取れなくなっていた。
「ご、ごろ……ふがっ!!」
懲りずに熱線を吐こうとするブブリィだが、鼻の穴に銀紙が詰まって思うように息が吸えないでいる。
 手でその紙を払えばいいものを、ブブリィは必死に銀紙ごと息を吸おうとするものだから益々鼻が詰まっていく。
 呼吸ができずジタバタ苦しむブブリィをトウマは勝ち誇った表情で見上げていた。
「随分静かになったわね……」
イレーヌがそう呟きながら、チーコを肩車しながら塹壕から這い出てくる。
 そして二人ともブブリィの周囲を舞う銀の紙を見て一様に何かを納得したように顎に手をやっている。
「この国に来てからコソコソ何かを集めてると思ったら、アレを集めてたのかニャ」
イレーヌの頭の上でチーコが思わせぶりな口ぶりで言った。
「アレって?」
「AM合金ニャ」
チーコの口から出た未知の言葉にタイガとレツの頭に?マークが上がった。
 わかりきった展開にチーコはしまったと言わんばかりに手で顔を覆うと、イレーヌの肩から華麗に飛び降りた。
 イレーヌはそのまま傷ついたカイルの治療へと向かった。
「雷の国が開発した魔法を無力化する合金ニャ。おまけに電圧で形状をある程度変化できるもんだから、物理攻撃の衝撃を受け流すこともできるもんで、どこぞの剣と魔法の国にとっては最強最悪の素材なんだニャ」
「は、はぁ……」
チーコの説明はレツの頭では半分もわかっていなかったが、とにかく凄いものということだけはよくわかった。
「でも、あの金属はスクラップといえどそう簡単に手に入るものじゃないニャ。どこで手に入れたかあとで聞けば、一儲けできそうニャ」
ヒゲに手をやりながら、チーコがニヤリとほくそえんだ。
 そんな間にもトウマの一方的な攻勢は続く。このままトウマが削り勝つかと思われた瞬間だった。
 ブブリィが突如片足立ちで突如立ち上がったかと思うと、両腕を肩の高さまで上げ、まるで案山子のような体勢になった。
 そしてそのまま駒の様に高速回転を始める。
「……まずいスね」
まるでこれから起きることを知っているかのような口ぶりで語るカッツ。
 レツにもブブリィに次の行動が読めていた。
 あの巨体で今の状況を打開するにはああするしかない、今までの経験からはじき出された答えだった。
 レツやカッツの予想通り、ブブリィは己の身体を駒にして高速で回転し始めた。
 その巨体が生み出す風は竜巻となり、銀色の紙片を天高く舞い上げてしまう。
 竜巻は更に勢いを増し、トウマの身体を飲み込もうとしている。
 トウマも逃げようとはしているのだが、周囲の風があまりに強く身動きが取れないようだ。
「トウマ!!」
レツが思わず叫ぶ。
 先ほどまでトウマが乗っていた枯れ木が根元から折れ、竜巻に吸い込まれていく。
 竜巻に触れた途端、その木は粉々に砕け上空に舞い上げられていく。
 トウマも竜巻に触れれば同じ運命を辿る事は免れないだろう。
「行きますか」
いつの間にかカッツが斧を構えている。
「レツにーちゃんはそういうひとだからね」
誰かの受け売りなのか、多分言葉の意味もわかってないまま使っているのだろう。
 竜巻に巻き込まれる恐れが高いが、かといってこのままトウマを見捨てるわけにはいかない。
 治療が完了していないカイル、彼を治療しているイレーヌ、そして他人事のように手を振っているチーコ。
 彼らに見送られて竜巻に突っ込もうとした時、残りの一人、ベガがレツ達の一歩前に出た。
「その必要はありません」
空を見上げながらベガは言った。
 その必要はない、トウマを助ける必要はないということなのか。
「トウマを見殺しにしろっていうのかよ!!」
タイガの苛立ちを隠そうとしない口調にも、ベガは表情一つ変えず空を見上げている。
「貴方方が行く必要はないといったまでです。私が行きます」
「え?」
ベガは空の遥か彼方を見据えて目を細めた。
「アルタイルが着ました」
待ちわびた恋人がきたかのような口調でベガはそう言った。
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