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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その6【雷の平野で】 □

俺は世界を……【雷の平野でその17】

 イレーヌの杖が全ての光という光を吸い込み、世界が全て暗転する。
 彼女はそれを大きく振り回すと、ブブリィに向かって放った。
 まるで夜空に輝く全ての星がブブリィの周囲に集まったかのように、光の渦がブブリィを飲み込んでいく。
 天の川に溺れるかのごとく、ジタバタと手足を動かすブブリィ。
 だが、星の川の中でそんなことをしていても意味はない。
 光子の濁流の中で、ブブリィはただただ翻弄されるだけであった。
 少し間をおいて、光の川を突き破って周囲の風景を歪めながら見えない衝撃波らしきものがブブリィに向かって直進していく。
 衝撃波はブブリィに直撃し、ブブリィの表皮を粉々に砕き、左腕をありえない方向に捻じ曲げた。
 ブブリィは悲鳴を上げる気力も無く、虚ろな表情で魔法にされるがままとなっていた。
「レツさん、私に続いてください」
ベガはそういうと、全ての武装の矛先をブブリィの腹部へと向けた。
 彼女の瞳孔が開き、かわりに照準のような青い丸がブブリィの腹部を定める。
「ファイア!!」
彼女の火器が一斉に火を噴き、閃光の刃がブブリィの身体に突き刺さる。
 彼の岩のような肌はすでにその攻撃を防ぐだけの力は残っておらず、赤い華となって宙に舞った。
 血の臭いと共に、生々しい肉がレツの目の前にさらけ出される。
 これがとどめだ、レツはありったけの気を掌に込めた。
「やらせるかぁ!!」
攻撃を阻止すべくガオウがレツに飛び掛ってくる。
 だが、すぐにステラの全方位攻撃によって体勢を崩され、跳び蹴りによって地面に叩き落された。
「ブブリィ、逃げろ、ブブリィー!!」
地面に倒れ、泥だらけになりながらもガオウは必死に叫ぶ。
 だが彼の声は届かず、ブブリィは光の渦に身を絡め取られ身動きが取れないでいた。
「うおおおおおおおお!!」
レツは全てを搾り出した一撃をブブリィの腹部に叩き込んだ。
 もうレツの攻撃を防ぐものは何もなく、レツの気の柱はブブリィの身体を易々と貫いた。
 2m近い風穴を腹に開けられ、ブブリィの動きが止まった。
「ガ……オウ……おで……ともだ……」
そこまで言ったところろで、ブブリィの目から光が消える。
 ちからなくその場に倒れこむブブリィ。その身体からは鮮血が赤い絨毯のように広がった。
 その血の末端がガオウの指先に触れる。
「あ…あ…」
赤く染まった自分の手をみてガオウは絶句しているようだった。
 だが、間もなく彼の顔は今まで以上の憎しみと殺意に満ちていった。
「てめぇら、よくも、よくも俺の友達をおおおおお!!」
ガオウは立ち上がると、地面を蹴りレツに襲い掛かった。
 あの傷だらけの身体のどこにそんな力が残されていたのか、そう思わされるほどに鋭く、激しい動きだった。
 反応が一瞬遅れたレツの咽元にガオウの牙が迫る。
 だが、すかさずベガがレツとガオウの間に割って入った。
「市街地に侵入した魔物の殲滅を確認しました。もうおやめなさい、貴方達の負けです」
盾でガオウの攻撃を受け止めると、肉薄した距離でベガはガオウに命ずる。
 だが仲間を殺された怒りでガオウに言葉が通じる状態ではなかった。
 まさに獣のごとく、爪で盾を引っかき続けるガオウ。
 傷一つつかぬ盾を引っかき続けるガオウの目に涙が浮かぶ。
 その姿は敵であるレツ達からみても哀れみを誘う姿であった。
「くそ、くそ、くそ、くそ、くそおおおおお!!」
「これ以上攻撃を続けるのなら反撃をします。死にたいのですか!!」
ベガは厳しい口調でガオウを叱り付けると、盾でガオウの爪の一撃を弾き飛ばす。
 右手を振り払われ無防備になったガオウの頬にベガが盾でなぎ払いを入れ、ガオウの体勢が崩れた。
 背中を見せたガオウにベガが銃を向けた瞬間黒い影がガオウの前に立ち、その腹部に強烈な斬撃を叩き込んだ。
 再び大きく吹き飛ばされるガオウ。
 その一撃を打ち込んだのはカッツだった。
「……ざけんな。てめぇだって、グレンギリーや他の連中の命を奪ってんだろうが。一人だけ被害者面するな!!」
怒気のこもったカッツの声に、ガオウの身体が一瞬ビクッと震えた。
 カッツがここまで感情をむき出しにして叫んだのを聞いたのはこれが初めてだった。
 その肩は震え、必死に何かを堪えているようにも見えた。
 カッツの怒りに圧倒され、這いずるように引き下がるガオウ。
「命を奪い、奪われ、その命を奪い返し……その結果が……これよ」
二人のやり取りを見守っていたステラがブブリィの亡骸を見つめながら、哀しげに呟いた。
 その語りかけはとても敵に対してかけているものとは思えない、悲しく厳しい言葉であった。
「ちくしょお、ちくしょおおおおお!!」
ガオウは居たたまれない様な声で怒鳴ると、血だらけの右手を挙げた。
 彼の呼びかけに答えて、紫色の魔方陣がガオウを包み彼の姿をいずこかへと運び去っていった。
 再び雷の舞う平野に静寂が訪れる。
「終わった……のか?」
レツが思わず漏らした言葉に、ベガが小さく頷いた。
「周囲に熱源なし。撤退したと思われます」
「そうか……」
レツはそう答えると、晴れない気分で空を見上げた。
 まるで泣いているかのように空から雨がポツポツを降り出してくる。
 13魔将を倒した。本来なら泣いて喜ぶべき快挙なのに、何故かレツの気持ちは複雑だった。
 ブブリィの最期の言葉、ガオウの言葉、彼の涙。
 そればかりがレツの頭を駆け巡る。
 魔物はいきとし生けるものの敵、倒すべき存在。
 そして弟の仇。
 矛盾した考えがレツの頭を駆け巡り、レツは不愉快さのあまり拳を握り締めた。
「なんでだろう……勝ったのに全然嬉しくない」
ブブリィの亡骸を眺めながらタイガがポツリと呟く。
 その目には戸惑いが色濃く映し出されていた。
「誰かと戦って勝つということは、自分や大切な人の明日のために誰かの明日を奪うこと。決して気分のいいものではないわ」
諭すように語り掛けると、ステラはタイガの肩に手を置いた。
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