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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】 □

俺は世界を……【カイルと三つ子の勇者・その1】

 足音と金属同士が重なる不快な音が耳に触る。
 それは俺が一歩足を前に出すたびに否応なしに耳に飛び込んできた。
 理由は明快かつ単純だった。
 俺の鎧が擦れて出る音だからである。
 我々十字騎士団は軽くて丈夫、しかも魔法攻撃にも耐性があるミスリル製の鎧を支給されている。
 だがミスリルは他の金属に比べて恐ろしく高価で、ミスリル製の鎧を身に纏っているのは我々の他にはごく一部の限られた騎士のみに与えられているに過ぎない。
 要するに、ミスリル製の鎧を身に纏うと言うことは選ばれた者の証なのだ。
 だが、俺はこの鎧が好きではなかった。
 理由は二つある。
 一つは高い強度で軽くて薄いのは鎧として好ましいことなのだが、歩くたびにブリキのような軽い金属音が響くのだ。
 そのせいで、他の騎士団の連中からブリキの兵隊と揶揄されることが少なくなかった。
 二つ目は自分自身にこの鎧を着る資格があるのか、未だに自信がもてないからだ。
 筆記もトップの成績でクリアした、実技も上位の成績を収めた。
 形式的には資格はあるのだろう。
 だが、自分が時どきこう思うのだ。
 『この剣と盾で自分は本当に何かを守り通すことができるのか?』と。
 そう考えると、軽いはずのミスリルの鎧が青銅の鎧のようにズシリと肩に食い込むのだった。
 だが、今俺が気分を害しているのは、そんな感傷的なものではなかった。
 もっと直接的な問題が我々の前に立ちふさがってきたのだ。
「タイガとレツは何をやってるんだ!!」
俺は3分前に口にしたセリフを再び口走ると、チリチリとした焦りを感じながら周囲を見回した。
 そもそもの原因は先行して森に入ったレツとタイガが突然姿を消したことだった。
 俺はすぐに二人の捜索を提案した。
 魔将との戦いに勝利したとはいえ、我々の命を狙う魔物はこの周囲にも数多く潜んでいるはずだ。
 その状況を加味するのならば、ここで戦力を割くのが得策ではないことは誰の目から見ても明らかなはずだ。
 だが、それを聞いたあの連中の態度は俺の想像の斜め上をいくものだった。
「ここの道って、入り組んでるように見えて一本道なのよ。このまま進めばいずれ合流できるわよ」
と、根拠のない楽観論を振り回すのはイレーヌ女史だ。
 学者らしからぬ思慮のないアドバイスに俺は言葉を失った。
 だが、これはまだマシなほうだった。
「あの二人はカイルさんよか旅に慣れてるんだし大丈夫じゃないんスか?」
と自分を小ばかにする勇者。
 言葉の端々に嫌味がにじみ出ているが、事実なので返す言葉がなかった。
「えー、めんどくさー」
と明らかに自分の職務を放棄しているトウマ。
 挙句が……。
「捜索隊出すなら手配するニャ」
とこの非常事態にすら金儲けに走る守銭奴猫。
 危機感も、仲間を心配する心も持ち合わせていない仲間達を目の当たりにして俺は絶句した。
 だが、哀しいかな民主主義の定めにより、多数決の結果我々は森の出口に存在するサルディニアにて二人を待つことになったのである。
 数の暴力この上ない仕打ちだったが、俺は煮え湯を飲まされる思いでそれを受け入れるほかなかったのだ。 
「あんまカリカリしてると、血管に悪いッスよ?」
「うるさい!!」
勇者の人を小馬鹿にしたような冷やかしに、俺は思わず感情的に答えてしまった。
 確かに勇者に比べれば俺の力など微々たる物、いや存在しないに等しいものなのかもしれない。
 しかし、それと他人を見下すような態度を取るのとは全く別次元の問題である。
 グレンギリーとラフロイズ氏がどんな教育をしてきたか知らないが、この人を馬鹿にした態度だけは早急に改善せねばならないだろう。
 必要ならば教団本部に送り返すことも考えなければならないかもしれない。
 そんなことを考えながら歩いていると、背後から聞こえていた足音が急に止んだ。
「なんだ、この期に及んで今後は休憩か!?」
俺は不満たっぷりに後ろにいる連中に声をかけた。
 だが、俺の予想に反して4人は険しい表情で道の先を見ていたのだ。
 さっきまでのピクニック気分の軽い雰囲気は欠片もない。
 な、何だ?俺が言ったことがそんなに気に喰わなかったのか!?
「ど、どうしたんだ!?」
突然の豹変っぷりに、戸惑いながら4人に語りかける。
 だが、イレーヌ女史は人差し指を唇にあてる。
 恐らくは静かにしてくれ、とジェスチャーしているのだろう。
「血の臭いがするニャ。この先で戦闘が起きてるニャ」
黒く湿った鼻を細かくヒクつかせながらチーコが森の道の先を指差す。
 血の臭いと言われても、俺の鼻にはそんな臭いは全く引っかからない。
 月猫族は人間に比べて嗅覚や聴覚が優れていると聞くから、我々が嗅ぎ取れない何かを嗅ぎ取ったのだろう。
「ああ、それも勇者同士がな」
カッツはそう言葉を漏らすと、背中に担いだ斧を手に持った。
 戦闘?勇者同士?状況が把握できていない俺をよそに、4人は勝手に準備を進めていく。
 自分以外の勇者が戦っていることを彼は察知したというのか。
 もしかして勇者同士には感応能力のようなものが備わっているというのだろうか?
「急げ手遅れになるぞ!!」
トウマはガラにも無く深刻な表情で叫ぶと、勇者と共に先陣を切って駆け出した。
 その後をイレーヌとチーコがついていく。
「お、おい!?」
 状況を飲み込みきれていない俺は、置いていかれない為にもその4人の後を慌ててついていくしかなかった。
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