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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】 □

俺は世界を……【カイルと三つ子の勇者・その2】

 俺が必死に走ってる先をカッツとトウマが先行していく。
 自分も必死に走ってはいるが、鎧を着ている自分に追いつけるわけもなかった。
 焦る気持ちとは裏腹に、二人との距離は容赦なく広がっていく。
「ビジネスは早さが命ニャ。お先ニャ」
チーコが前足を地面につけたかと思うと、四足で駆け抜けていく。
 忘れていたが、月猫とはいっても猫なんだから四足で走れて当然なのだ。
 こう簡単に連続で抜かれると、自分が情けなく思えてくる。
 わかっている。
 自分が『情け』で武器の管理者に選ばれたこと、自分が今のメンツの中で頭一つ劣っている事も。
 そう、俺は……。
「カイル君、頑張って!!」
イレーヌ女史が振り向きに俺に声をかけると同時に杖の先端が光り、何か魔法を発動させる。
 それと同時に俺の脚に小さな竜巻が起こり、身体が格段に軽くなるのを感じた。
 これは機動力強化の風の術法。
 一歩前に足を出すだけで、風に背中を押され、ウサギのように身体が跳ねる。
 これならこれ以上カッツ達に遅れを取る事はなさそうだ。
 しばらく走っていると、俺の耳にも金属と金属がぶつかり合う音が聞こえてきた。
 カッツの発言が正しいのならば、何としても止めなければならない。
 勇者は教団のため、いやこの世界のために魔物と戦う、我々にとって希望と呼ぶに相応しい存在なのだ。
 そんな彼らをくだらない小競り合いで消耗させるなどということは断固として阻止しなければならないのだ。
 木々が少し開けた場所に近づくと、カッツ達が足を止めているのが目に入った。
 よかった、ようやく合流できた。
 俺がその場所にたどり着くと、そこでは3人の勇者らしき少年達と、二人の剣士が、一人の銀髪の勇者と交戦をしているところだった。
 3人の勇者は背格好も、顔つきすら同じだった。俗に言う三つ子というものだろう。
 敢えて違いを見つけるというのなら、髪の毛の色と手にしている武器の違いだろう。
 赤毛の勇者が一対のブレードを、青い髪の毛の勇者は両端に刃のついた短めの槍を、そして緑色の髪の毛の勇者は三日月状のブーメランを所持していた。
 もう一方の銀髪の少年はククリ刀と呼ばれるマチェットのような剣を所持している。
 どちらの武器も我々の勇者同様に白銀に輝く金属でできており、本物の勇者だという事を証明している。
「この裏切り者が!!今度こそ覚悟しやがれ!!」
「覚悟しやがれー」
「しやがれー」
三つ子の勇者は武器を手にして銀髪の勇者に切りかかるが、銀髪の方は攻撃をさして苦戦する様子もなく防いでいる様子だ。
 その表情にはどことなく余裕が伺える。
「バカ野郎!!そんな攻撃で倒せるわけねーだろ!!」
眼帯をつけた180cm程の剣士風の男が三つ子に怒声を浴びせた。
 恐らくは三つ子の勇者の従者だろう。
 眼帯の男の傍らには武器の管理人らしきスキンヘッドの男が腕を組んで立っていた。
 それに対して銀髪の勇者の方には従者や管理人といったものがいる気配はない。
 一体どこにいるのだろうか。勇者の管理放棄は立派な罰則事項だというのに。
「双方の勇者及び従者に告げる!!私は勇者の武器の管理人でカイル・クレイトーと言う者だ。貴殿たちが行っている事は規則13条5則にある勇者同士の私的闘争の禁止に抵触する!!よって速やかに戦闘行為を停止されよ!!」
「はぁ!?バカ言ってんじゃねーよ!!俺達はその教団からそこの勇者討伐の命を受けてんだよ!!賞金がかかってんだ、手ぇ出すなよ!!」
教団から勇者討伐!?
 俺は本気で耳を疑った。
 勇者同士が戦っていること自体がイレギュラーなのに、教団から勇者討伐命令が出ている!?
 これでは迂闊に戦いに介入する事ができないではないか。
 詳しい事情を聞きたいところだが、そんな状況じゃないらしい。
「くらえー!!」
緑色の髪の勇者が自分の武器を投げつける。
 三日月状のその武器はブーメランのごとく高速で回転しながら銀髪の勇者に襲い掛かる。
 だが、どことなく勢いが弱い。
 タイガやカッツが一撃を放つ時、自分なんかが受け止めたら盾ごと砕かれそうな凄まじさがある。
 でもその一撃にはそれが感じられなかった。
 そう、盾を構えて姿勢を低くしていれば防ぎきれそうな……そんな感じだ。
「トロい!!」
俺の直感は正しかったらしく、銀髪の勇者は器用にブーメランの歯の無い部分を握って攻撃を受け止めてしまった。
 銀髪の勇者は野球の投球でもするように大きく足を上げて、ブーメランを投げ返した。
 こいつ……遊んでいるのか?
 だが、その一撃にはタイガの一撃のような凄まじさが僅かだが感じられた。
「ギャン!!」
銀髪の勇者が放ったブーメランは元の持ち主の下へと戻り、その身体を大きく吹っ飛ばした。
 ブーメランと共に樹に激突し、緑髪の勇者はズルリと樹にもたれかかったような姿勢で項垂れたまま動かなくなった。
「おいおい、ちょっと弱すぎだろコレ……」
倒した張本人である銀髪の勇者が呆れた様子で呟く。
 確かに勇者にしては呆気なさ過ぎだが……。
「う、うあああああああああああ!!」
次はツインランサーを構えて、掛け声と共に青い髪の勇者が飛び込む。
 だが、銀髪の勇者は退屈そうな様子で剣を構える素振りさえ見せない。
 そうしているうちにランサーの先端が勇者に迫る!!
「こいつは単純すぎる……」
銀髪の勇者はそう呟くと、ヒラリとランサーの突撃の直線状から逃れる。
 それに反応が遅れた青い髪の勇者は誰もいない虚空に突撃を続ける。
 だが、その足元には彼の足を引っ掛けるように銀髪の勇者の足が出されていた。
「がっ!!」
銀髪の勇者の足に引っかかり、泥の水溜りの中に顔面からダイブする青髪の勇者。
 泥水が跳ね上がり、勇者を土色に染める。
 打ち所が悪かったのか、中々起き上がろうとしない。
「せめて時間差で攻撃しろよ……」
 俺の隣でカッツが軽く溜息をして、そう言うのが聞こえた。
「お前、よくも!!」
今度は赤い髪の勇者が双剣を手に銀髪の勇者に切りかかる。
 元々双剣はスピードを武器にして連続攻撃を売りにした武器だ。
 そのセオリーどおり、赤髪の勇者は素早い連続攻撃で襲い掛かる。
 だが、銀髪の勇者はそれを掠る事すらなく余裕で回避していく。
「くそ、なんで……!!」
「こいつは早いだけで非力っ!!」
一瞬の攻撃の合間を突いて、銀髪の勇者が赤い髪の勇者の顎を蹴り上げた。
 人間の弱点を突いた的確な一撃だ。
 勇者も例外ではないらしく、脳を揺らされた勇者は頭をふらつかせながらガックリと膝を突いた。
「なんか後続部隊も来ちまったし、とりあえず一人目殺っとくか」
銀髪の勇者は夕飯の献立でも決めるような自然な口調でそう言うと、ククリ刀を振り上げた。
 この銀髪の勇者……同じ勇者を殺す事に全く躊躇していないようだ。
 赤髪の方はダメージが抜けておらず、武器を持つどころか立ち上がることすらままならないようだ。
 このままでは確実にやられる。
 そう思った瞬間、俺の身体は銀髪の勇者に向かって動き出していた。
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