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□ 小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】 □

俺は世界を……【カイルと三つ子の勇者・その5】

「あー、何か同じ勇者として情けねーわ」
銀髪の勇者は白いモヤに捕らえられた二人を前にして深い溜息をついた。
 確かに銀髪の勇者と3人兄弟の実力の差はかなり絶望的だ。
 敵対しているとはいえ、ここまで情けないと溜息の一つでも漏らしたくなるのだろう。
「チッ、一太刀入れることもできねーのか、グズ共が!!」
青い髪の勇者を足蹴にすると、眼帯の男は憎々しげにその身体に唾を吐きつけた。 
「さー、どーするよ?眼帯のニーサンよ?」
「さぁて、どーするかなぁ」
「とりあえずさぁ、俺がこの三人始末しとくからよぉ、任務失敗ってことで後続の連中連れて帰ってくれねーかな?」
「あ!?」
銀髪の勇者の意外な申し出に、眼帯の男は驚いた様子だった。
 無論俺達もひどく驚いている。
「任務途中で勇者が死亡した為一時撤退。それでも十分に報奨金は出る。3人いたって、こんな使えねー勇者じゃ命がいくつあっても足りねーだろ?」
「そうさなぁ」
眼帯の男は銀髪の勇者に同意するように答えると、顎に生えた無精ひげを手で摩った。
「オニーサンは使えない勇者とおさらばして悠々自適な生活。俺は晴れて自由の身。両方ともハッピーになれるぜ」
「確かにちげぇねぇ。でもよ……」
眼帯の男がそう答えた瞬間、銀髪の勇者の背後に巨大な影が現れた。
「てめぇを捕まえて、この3人が相打ちで死ぬってのが俺にとっては一番ハッピーなんだよなぁ」
勇者の背後に現れた影、それは眼帯の男と共にいたスキンヘッドの男だった。
 そうか、姿が見えないと思ったら勇者の攻撃にまぎれて銀髪の勇者の背後を取っていたのか。
 勇者の実力差を考えると、一番妥当な作戦かもしれない。
「勇者は殉職、任務は成功、報奨金は一気に倍だ!!」
そういって、突然スキンヘッドの男が前に出たと思うと剣を抜き銀髪の勇者に切りかかった。
 スキンヘッドの剣が振り下ろされ、ユダの剣と鍔迫り合いになる。
 不意を着いてもそれだけではダメということか!!
 男は腰に下げられた袋から15cmほどの大きさの桐箱を取り出す。
「オラ、何を寝ている!!とっとと起きて奴の足を撃ち抜け!!」
眼帯の男が足元で蹲っている少年の肩を強く蹴りつける。
 青い髪の勇者は文字通り跳ね上がると、弓をランサーに変え姿勢を低くすると、そのまま一気に突っ込んでいく!!
「バカ野郎!?突っ込むんじゃなくて、奴を弓で撃つんだよ!!」
「うおおおおお!!」
眼帯の男の指示を無視して青い髪の少年は槍を構えて突っ込む。
 スキンヘッドの男に注意が向いている今なら、モヤをすり抜けて弓矢で狙撃することだってできたであろうに。
 何故指示を無視して突撃したのだ……?
「あの位置で弓を撃ったら、兄弟に当たる……そう思って直接攻撃にしたのね」
隣にいたイレーヌ女史が疑問を解決してくれた。
 完全にモヤに捕らえられた二人は空中に吊り上げられ、宙を漂っている。
 動きが不規則なため、発射直後に斜線上に流れ込んでくることだって十分考えられるのだ。
 あの三兄弟、本当にお互いのことを大切に思っているのだろう。
「オニーサンの言うとおりだぜ。テメーの兄弟ごと俺をブチ抜いてりゃ勝てたのによ」
銀髪の勇者はそう言うと、スキンヘッドと剣を交えながら不敵な笑みを浮かべた。
 こいつ、こんな状況でも笑っていられるのか?
「これで3匹目だ」
「うわぁ!?」
声がしたときには、青い髪の勇者は既に白いモヤの手中にあり、他の兄弟同様に宙に持ち上げられていた。
 先に捕まった二人は顔以外は完全にモヤに覆われ、ぐったりと項垂れていた。
 肌も雪のように白くなっている。
「あーもー、うぜぇ!!」
銀髪の勇者が突然声を荒げる。
 今度の標的はスキンヘッドの男だった。
 白いモヤはスキンヘッドの男を一斉に取り囲むと、口や鼻の穴という穴という穴から体内に流れ込んでいった。
 男は剣を投げ捨て、手で口と鼻を押さえて流入を阻止しようとするが白いモヤは僅かな隙間をぬって男の中に流れ込んでいく。
「ひ……ひぎゃあ……」
男が突然不気味な声を上げたと思った瞬間、あんぐりと開いた口から白いモヤに導かれるように何か白いものが引きずり出された。
 次の瞬間、俺は己の目を疑った。
 それを合図にするように、に男は目や口、鼻から滝のように血を噴出し始めたのだ。
 プルプルと身体を痙攣させ、スキンヘッドの男は白目をむき、体中の穴から血液を垂れ流している。
 男の腰布が真っ赤に染まり、血が滴り落ちてくる。
「ごぱぁ」
スキンヘッドの男は声というよりは、空気を吐き出し、そのまま地面に倒れ動かなくなった。
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