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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】 □

俺は世界を……【カイルと三つ子の勇者・その6】

「やべ、つい本気でやっちまったぜ」
いたずらをした直後の子供のように銀髪の勇者がベロをだして自分の頭を小突く。
 そして、穴という穴から血を出し尽くしたスキンヘッドの男の頭を手荒く蹴り飛ばした。
 ゴロリと遺体が転がり、白目をむいた男の顔ががこちらを向いた。
「さぁ、次は誰だ?」
これが強者の余裕と言うものだろうか。
 奴は近くの岩に腰を落ち着けると、近くに漂っていた赤い髪の勇者の頬に剣の先端をペシペシとぶつけた。
 あの銀髪の勇者には得体の知れない強さがある。
 攻撃を受け止め、勇者を捕らえ、そして人の命を一瞬に奪ったあの剣の力。
 我々が保有している勇者とは明らかに毛色が違う強さだ。
 眼帯の男がやられれば、次の矛先は恐らく我々だろう。
 そうなる前に戦いに介入するか?
 俺が判断を下そうとした時、モヤの中で何かが動いた。
「……このっ!!」
動いたのは青い髪の勇者だった。
 彼は辛うじて自由の利く両手で弓を引いて放ったのだ!!
「おわっ!?」
狙いが甘かったのだろう、その一撃は銀髪の勇者の足元を掠めて地面に当たった。 
 だが、予想外の一撃に銀髪の勇者は岩から転げ落ちていた。
 奴の集中力が弱まったのか、モヤの中に濃淡のムラが生まれていた。
「今だっ!!」
眼帯の男は桐箱を開き中身を掴み取ると、それを投げナイフの要領で銀髪の勇者に投げつけた。
 それは細い針のようなものだった。
 表面は赤黒く、まるで錆びているかのようだ。
 その針はモヤの薄くなっているところを的確に突きぬけ、銀髪の勇者に向かって一直線に向かっていく!!
「おいおいおいおいおい!!」
銀髪の勇者は白いモヤの中に手を突っ込み、何かを自身の近くに引き寄せた。
 最初に小さな手が見えて、次に肩、そして最後に赤い髪の毛が俺の眼に飛び込んできた。
 間違いない、彼は先ほど銀髪の勇者の白いモヤに捕らえられた赤髪の勇者だ。
 銀髪の勇者は彼を盾代わりにして身を屈める。
「ぐぁぁ!!」
予想通り、針は赤髪の勇者の方に突き刺さった。
 モヤに包まれ、ぐったりしていたはずの勇者が悲痛なうめきを上げる。
「ざぁーんねーんでーしたぁ!!」
「さぁ、本当に残念かどうかてめぇで考えな」
攻撃を防がれたというのに、眼帯の男は口元に笑みを浮かべたまま余裕な態度を崩さないでいる。
 さっきの攻撃は相手に刺す事が目的じゃないのか?
 苦し紛れで眼帯の男が手持ちの道具を投げつけただけだと思っていたが、ちがうようだ。
「さぁ、その銀髪の勇者の動きを押さえろ、勇者さんよぉ!!」
眼帯の男は自信たっぷりに命じているが、赤い髪の勇者は意識を失っていて、命令を聞くどころか、声が聞こえているかどうかすら怪しい。
 追い詰められて正常な判断がつかなくなっているのか?
 だが、俺のそのような考えは全て邪推でしかなかった。
 眼帯の男の声に反応するように、まるでカラクリ仕掛けの人形のように赤い髪の勇者は何の前触れもなく目を開いた。
 それも自分の意思で開いたというよりも、何らかの力によって無理やり起こされた、そんな感じだった。
「う、うああああ……うわあああああああ!!」
赤い髪の勇者は突然叫び声を上げたとおもうと、いきなり銀髪の勇者にしがみ付いた。
 銀髪の勇者は彼を引き離そうと必死に顔面を殴り続けるが、何か操られたかのように勇者は銀髪の勇者を組み伏せたまま動こうとしない。
 赤い髪の勇者の表情は苦痛に大きく歪み、ほんの数秒で全身に珠の様な脂汗がビッシリと吹き出していた。
 何か強大な力で自分の意に反して無理やりに身体を動かさせられている、そう見受けられた。
 先ほど放った錆びた杭が何か関係があるのだろうか。
「放せ、放しやがれ!!」
銀髪の勇者は辛うじて自由の利く右手に握った剣で赤い髪の勇者の背中をメチャクチャに斬りつけた。
 不安定な体勢からの斬撃は勇者に致命傷を与えられるはずもなく、赤い髪の勇者の背中に細かい切り傷を作るだけだった。
 それでも赤い髪の勇者の背中はその髪と同じ赤い色に染まっていく。
 赤い髪の勇者は痛みに顔を歪めながらも銀髪の勇者を放そうとはしなかった。
「無駄だ、ソイツは死ぬまでテメェを放さねぇよ」
「てめぇ、コイツに何しやがった!?」
「さぁな、その針をテメェに差し込めばわかるだろーよ」
針を差し込めばわかる……まさか、あの針にある力とは……。
 眼帯の男が銀髪の勇者にあの杭を投げつけた理由、そして奴の代わりに針が刺さった勇者の今の状況。
 総合的に考えれば導き出される結論は一つしかない。
 そんな非人道的なものが存在するのか?いや、存在していいものなのか?
 勝利を確信し、眼帯の男が剣を肩に担いでゆっくりと銀髪の勇者に歩み寄る。
 その足音と共に俺の動悸が早く、大きくなっていくのが俺自身よくわかっていた。
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