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□ 小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】 □

俺は世界を……【カイルと三つ子の勇者・その7】

 眼帯の男は銀髪の勇者の眼前まで迫ると、その顔に唾を吐きつけた。
 唾は勇者の頬に当たり、涙のようにその頬を伝った。
「5人だ。テメェのくだらねぇワガママのせいで俺の仲間が5人も死んだ」
「くだらねぇ……ワガママだと?」
「ああ。勇者は黙って魔物と戦ってりゃいいんだよ。それから逃げるのはワガママ以外のなんだってんだ?あ?」
眼帯の男は銀髪の勇者の顔を激しく踏みにじった。
「俺は、俺を馬鹿にしてた従者どもに復讐しただけだ!!それの何がわりーんだよ!!」
「あ?従者に勇者が逆らっていいと思ってんのか?おい、もっと締め付けろ」
眼帯の男が命ずると、赤い髪の勇者は銀髪の勇者を締め付けている手足の力をさらに強めた。
 ギリギリと筋肉と骨が悲鳴を上げる音がこちらにまで聞こえてくる。
 命じられた赤い勇者も苦痛に目に涙を浮かべている。
 間違いない、あの杭には……。
「ぐああああああああ!!」
「教団からはてめぇを生かしてつれて来いとしか言われてねーんだ。つまり、両手両足をへし折ったっていいってことだ」
眼帯の男は苦痛に悲鳴を上げる二人の勇者を薄ら笑みを浮かべながら見下ろしていた。
 アイツ、本当に自分の勇者を使い捨ての駒程度にしか考えていないのか!?
 あのままじゃ、自分の勇者も靭帯が切れてたって不思議ではない状況なのだ。
「もういいだろう!!あとは銀髪の勇者に針を差し替えれば済む話だろう!!」
「流石は騎士様、この杭の仕組みに気づきましたか。でもよぉ、俺はコイツに仲間を5人も殺されたんでさぁ。もう少し痛めつけないと気がすまないもんで」
「このままではお前の勇者もタダでは済まないだろうが!!」
「ああ、3人もいるんで1人くらい欠けたってまだ二人残ってるんでお構いなく。それに、どうせこいつら大して役に立たないんで」
「……外道が!!」
「外道とは手厳しい。じゃあ、騎士様は何者なんですかい?そこの勇者様に死ぬまで戦わせてるアンタだって十分外道だろう?」
眼帯の男はそういうと、カッツを指差した。
 悔しいが俺に返す言葉はなかった。
 そうだ、我々も眼帯の男と同じく勇者を戦いの道具として利用しているのだ。
「クッ!!」
「わかってるなら、大人しくそこでみてるこったな」
眼帯の男は俺を口で言い負かすと、銀髪の勇者の顔を何度も何度も踏みつけた。
 銀髪の勇者の鼻から鼻血が流れてきても、眼帯の男は足を休める事はなかった。
 もしレツがこの場にいたら、教団の命令など無視して眼帯の男に殴りかかっているだろう。
 てめぇ、勇者をなんだと思ってやがる、とでも言いながら。
 やはりあの男の言うとおり、俺の方が……外道なのだろう。
「オッサン、あの騎士様の言うとおりだぜぇ」
眼帯の男に何度も蹴りを入れられ、鼻の曲がった銀髪の勇者がか細い声でそう言ってニヤリと笑った。
 別に命乞いをしている様子でもない、何か……嫌な予感がする。
 そう感じた瞬間、勇者に締め付けられほとんど動かせない銀髪の勇者の左手の人差し指がクイッと曲がるのが見えた。
「私情に流されてさっさと俺にトドメを刺さなかった、それがテメェの敗因だ」
「何を強がり言ってやがる!!」
「強がりかどうか……てめぇの目で確かめな!!」
銀髪の勇者が声を上げるのと同時だった。
 全身から血をふきだし、息絶えたはずのスキンヘッドの男が突然立ち上がったかと思うと、赤い髪の勇者の向かって頭からダイブしたのだ!!
 その目は白目を向き、血の涙を流しており、到底息を吹き返したとは判断できない状態だった。
 男は勇者の肩に手をかけると肩にささっている針を握るとそれを引き抜いた!!
「ぐ……あ……」
赤い髪の勇者は息を吐き出すのと同時に弱々しい声を発すると、地面にゴロリと倒れこんだ。
 銀髪の勇者はそんな彼を蹴り飛ばすと、バネのように跳ね上がった。
 何が起こったか把握できていない眼帯の男を前にして、銀髪の勇者は狂気に満ちた笑みを浮かべながらゴキッという音を立てて折れた鼻を自分の手で矯正した。
 目的を終えたのか、スキンヘッドの男は糸の切れた人形のようにグシャリと地面に崩れ落ち再び動かなくなった。
「切り札を使った後は速やかにトドメを刺す、これ戦いの基本だぜ?」
「……クソッタレは俺だったか」
「そういうこと。ま、俺は速やかにトドメを刺すタイプなんでヨロシク」
さっきまでの余裕たっぷりの様子で剣を突きつける勇者。
 その剣からは勇者が力を解放する時と同じ、禍々しいまでに白い光が溢れ始めていた。
「カイル君、合図したら剣を抜いて皆に攻撃指令を」
「え?」
突然イレーヌ女史が俺に耳打ちをした。
「次の攻撃、確実にこっちにも来るわ」
「どうしてそんな事が……」
「あの白いモヤ、闇の術法の中に似たものがあるのよ。闇のマナの流れがこっちに向いている。死霊を嗾ける前兆よ」
「死霊を……だって?」
「厳密に言えば人の残留思念だけどね。あの子の攻撃は私とチーコちゃんに任せて、貴方はカッツ君を連れてあの勇者を取り押さえて」
「あ、ああ。わかった」
俺は小声で答えると、銀髪の勇者に気づかれないようにそっと剣の柄に手をかけた。
「さて、闇の魔法を間違って認識している輩にお灸を据えなくちゃね」
そうイレーヌ女史が呟く。
 その口調は穏やかだったが、その奥に冷たい怒りが満ちていることにこの時俺は気づかなかった。
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