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鎌使いの文章倉庫

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□ 小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】 □

俺は世界を……【カイルと三つ子の勇者・その8】

「んじゃ、今日の勝利投手は俺様ってことでさぁ!!」
銀髪の勇者が手にした刀を天に掲げる。
 それを合図に霧状の人の顔が一斉に渦を成して周囲の物を全て飲み込んでいく。
 間もなく眼帯の男や赤い髪の勇者も白い霧の中に飲み込まれていく。
 剣を握る右手が微かに震える。
「んじゃ、次はテメェらだ!!」
イレーヌ女史の言葉どおり、奴は俺達に向かって剣を向けた。
 剣の支配下にある死霊たちは濁流となった川のように俺達に迫ってくる!!
 本当に……防げるのか?俺の中で反芻される彼女の言葉がひどく頼りなく聞こえた。
「や、やっぱきやがった!!」
「チィ!!」
腰を抜かしてその場に尻餅をつくトウマと、舌打ちをして背中の斧に手をかけるカッツ。
 死霊の濁流はすぐ目の前にまで迫ってきている!!
 形あるものならカッツでもどうにかなるかも知れないが、相手は霧のような存在だ。
 物理攻撃が通じるとは到底考えにくい。
 このままでは俺達もすぐに眼帯の男達と同じ運命を辿る事になってしまう!!
 焼け石に水でも盾を構えたい気分だったが、イレーヌ女史の言葉がギリギリのところで俺を押しとどめた。
「もう、おやめなさい」
子供を諭すようにイレーヌ女史が白い霧に語りかける。
 彼女がその言葉を発した途端、全てを飲み込まんかの勢いで迫ってきた白い霧がピタリと動きを止めた。
 動きを止めた死霊たちは何かをするでもなく、ただ空中で漂っているだけである。
「悲しいでしょうけど、貴方達の時間はもう止まってしまったの。生きている人たちの命を奪っても貴方達の時間は戻らないわ」
彼女の言葉に白い霧がブルブルと震え始めた。
「だから……貴方達が捕らえている人たちを返してもらえないかしら。こんな事をしても苦しみが増すだけよ?」
イレーヌ女史が優しく語りがけるごとに、白い霧たちがザワザワと騒ぎ出す。
 聞いていて心地のいい声ではないのは確かで、動揺しているようにも、泣いているようにも聞こえる声だった。
「貴方達を捕らえている鎖は今から解いてあげる。だから……解放してあげてくれないかしら?」
まるで小さな子供に語りかけるかのように説得を続けるイレーヌ女史。
 さっきまで猛威を振るっていた白い死霊たちは大人しく彼女の言葉に耳を傾けているようだった。
 ズリュッ
 何かが滑り落ちる音がして、白い霧の中から赤い髪の少年が吐き出された。
 地面に放り出されそうになった赤い髪の勇者を俺は慌てて抱きとめた。
 少し間を置いて、青い髪と緑の髪の勇者の頭がモヤの中から出てくるのが見えた。
 このままでは頭から地面に落下してしまう。
 俺は赤い髪の勇者を肩に担ぐと、残り二人の勇者を受け止めた。
 流石に3人ともなると重い。一瞬バランスを崩しそうになったが、俺は辛うじてその場で踏みとどまった。
「おい、大丈夫か!?」
「げほっ!!」
俺が肩に担いでいた赤髪の勇者が大きく咳き込んだ。
「ゲホッゲホッ!!」
「ガハッ!!」
それをきっかけにして俺が両腕で抱えている二人の勇者も咽るように咳き込む。
 咳き込むことができるということは、ちゃんと呼吸ができると言う事の確たる証拠だ。
 幸いな事に三人とも無事のようだ。
 この三人を安全な場所に移さなければ、俺は後方にいるトウマの方を向いた。
「トウマ、この3人を頼む!!」
「あいよ!!……あ」
トウマが最後に間の抜けた声を上げ、俺の背後を指差す。
「え?」
俺が前を向いた瞬間、最後に排出された眼帯の男が地面に顔面からダイブする瞬間が目に飛び込んできた。
 受け止めようとしたが、俺の両腕と右肩は勇者達を支えるので手一杯だった。
 成すすべなく地面に顔面から突っ込む眼帯の男。
 ゴスッという音と共に土煙が濛々と上がる。
「ぐおおおおおおお……」
俺の足元で眼帯の男が鼻を押さえてのた打ち回っている。
 こちらの方も健在のようだ。
 俺は駆けつけたトウマに3人の勇者を託すと、鞘から剣を抜いた。
「さあ、ここからは俺達が相手だ!!」
「クソ、何が起きて……」
死霊のモヤの動きを止められ、中に取り込んでいた4人を解放され、銀髪の勇者は明らかに冷静さを失っていた。
 その定まらない視線の先にいたのは他ならない、イレーヌ女史だった。
「カイル君、仕掛けるわよ。あの子の魔法の主導権は私が乗っ取ったわ」
「あ、ああ」
「ボウヤ、知ってた?無意味に暴走する闇の魔法ほど乗っ取りやすい術はないのよ」
そう銀髪の勇者に言うと、イレーヌ女史は味方の俺ですらゾッとするような冷たい笑みを浮かべた。
「貴方のように闇の魔法は暴走させるものだと思ってる輩がいるせいで、闇の魔法が正しく理解されないのよ。さあ、いらっしゃい。静寂と漆黒の魔法の真髄、教えてあげるわ」
イレーヌ女史の宣戦布告とも取れる言葉に、銀髪の勇者は返す言葉すら持てないでいるようであった。
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