鎌使いの文章倉庫

□ スポンサー広告 □

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


* 「スポンサー広告」目次へ戻る
*    *    *

Information

□ 小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】 □

俺は世界を……【カイルと三つ子の勇者・その9】

「どうしたの?切り札を手にしたら、すぐさま敵を倒すのが貴方のスタイルでしょう?」
銀髪の勇者の神経をさかなでる様にイレーヌが見下したような口調で挑発する。
 やれるものならやってみろ、イレーヌ女史の言葉の端々からそんな心の声が読み取れた。
 今だかつてここまで好戦的な彼女を見たことはない。
 俺が知っているイレーヌ女史はもっと冷静で、常に感情が揺さぶられる事のない女性だ。
 それとも、これは銀髪の勇者に対する心理的な駆け引きの一環なのだろうか?
「なめるなああああああ!!俺様は勇者ユダ様だぞおおおおお!!」
銀髪の勇者は己をユダと名乗ると、ヒステリックに叫びながら剣を振り上げた。
 その動作に引き寄せられるように周囲の森から彼の周囲に白い新たなモヤが集まってくる。
 奴が剣を振り下ろせば、先ほどと同じく死霊たちが一斉に我々に襲い掛かってくる。
「それだけの死霊を使役するために、数え切れない命を手にかけたのね。……万死に値するわ」
「くたばれやぁあああああああ!!」
ユダが剣を振り下ろし、堰を切ったように死霊たちが我々に襲い掛かってくる。
 イレーヌ女史はその大群を前にしても、その冷たい笑みを絶やす事はなかった。
 何があっても絶対に止められるという確信があるのだろう。
「何度やっても無駄よ」
死霊達が目の前に迫ると、イレーヌ女史は再び右手をかざした。
 その手に押しとどめられるかのように、再び死霊たちはその動きを止める。
 どうやらイレーヌ女史は完全にユダの攻撃のコントロールを手中に収める事に成功したようだった。
「チーコちゃん、お願い」
「ニャン♪」
イレーヌ女史に呼ばれ、チーコが前に飛び出す。
 その手にしたハンマーからは黄色い光を放つ粒子が漏れ出している。
「ニャンニャンニャフーン、月光祭ニャ」
チーコが踊りながら死霊たちの周囲に黄色い粒子を撒き散らす。
 その粒子は地面に降り注ぎ、瞬く間に地面を柔らかい黄色い光で埋め尽くしていく。
 この明るさは……まるで満月の時の月の光。
「ニャン♪ニャン♪ニャン♪ニャン♪ニャーン♪」
チーコが踊りを終えた瞬間、地面に敷き詰められた黄色い粒子が一気に輝きを増し、まるで癒しの光のように死霊達を包み込んでいく。
 所々から声にならない声が聞こえてくるが、それらはさっきまでの苦しみに満ちた呻き声ではなかった。
 何かから解放された喜びの声、安堵の声……そして歓喜の声。
 死霊達は口々に何かを口にしながら黄色い光の中に消えていった。
「くそ、ふざけやがって!!俺様は勇者だ、勇者ユダなんだぞ!!」
「ムダよ」
イレーヌ女子の言うとおり、ユダが剣を振り上げても今までのように死霊達が周囲に集まってくる事はなかった。
 未だに地面を覆いつくしている黄色い粒子が関係あるのだろうか。
「悪いニャが、ここら辺の地相を月のマナ一色にさせてもらったニャ。今んとこ、月の魔法以外使えないニャ」
「そのせいで俺の武器の力が阻害されて……クソッ!!」
毒づくユダを見てチーコがニヤリとほくそえんだ。
「貴方、私達の目の前で手の内を見せすぎなのよ。あれだけ見る時間があったら、いくらでも対抗策の準備ができるわ」
「死霊を封じたからって調子に乗ってんじゃねーぞ、コラァ!!」
「別に調子に乗ってはいないわよ。ただ……死霊を封じられたってことは、貴方、うちの前衛と戦わなくちゃいけないってことなのよね」
「なっ!?」
「うちのエース君、スピードもパワーも桁違いだからボヤボヤしてると……一瞬で狩られるわよ?」
ほんの一瞬だった。
 一瞬風が動いたかと思った瞬間、まるで空間を跳躍したかのようにカッツがユダの右側に現れ、その強烈な蹴りをユダの顔面に叩き込んでいた。
 さっきまで俺の傍らにいたはずなのに、俺にはカッツが動いた事すらわからなかった。
 ……なんてスピードだ。
 蹴りをまともに喰らったユダは地面を激しく転がり、辛うじて受身を取る。
「がっ!!」
「遅ぇよ」
しかし、そこに追撃を仕掛けたカッツの蹴りが炸裂しユダは再び地面を転がった。
「でかい事言ってた割には弱いな」
「なっ!?」
「お前、勇者の癖に武器がなきゃ何もできねぇのかよ?」
引きつった表情を見せるユダをカッツはせせら笑いながら見下ろしていた。
 近接戦、殊に体術を駆使した戦いではカッツに分があるのは誰から見ても明らかだ。
 ユダもそのことを一瞬で察したらしく、彼の周囲の空気にはさっきまでの余裕は微塵も感じられなかった。
スポンサーサイト


* 「小説本編その7【カイルと三つ子の勇者】」目次へ戻る
*    *    *

Information


+
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。